9月20日、NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの3社がAppleの新型スマホ「iPhone 5s」と「iPhone 5c」の販売を開始した。トップシェアを誇るドコモがiPhoneの販売に参入したことで、大手携帯電話3社の競争は激化するとみられる。
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これまでのガラケーでは、iモードケータイのように、通信会社のサービス仕様に合わせて、メーカーが端末を開発し、通信会社に納入。着メロや待受画像、デコメなどの有料コンテンツの課金システムも通信会社が握り、ビジネスの中心に常に通信会社があった。
しかしスマートフォンは、AppleやSamsungなど世界的なシェアを握ったメーカーが、各国の通信会社に端末を卸すモデルで、課金体系もAppleやAndroidを開発するGoogleが提供。端末メーカー、プラットフォーマーが中止のビジネスモデルへと、大きく構造が変化している。
そういった背景の中、ドコモも、これまで出してきたスマートフォンには独自のサービスのアプリを搭載するなど、徹底して「ただインフラを提供する『土管屋』にはならない」という姿勢を取っていた。いわば、ビジネスの根幹を握られるiPhone/Appleは、できれば食べたくない「毒まんじゅう」だったわけだ。
しかし今回、顧客流出が止まらない背景もあり、ドコモはついにiPhone導入に踏み切った。
ドコモ、au、ソフトバンクという大手3社がまったく同じ端末で勝負することになったため、今後は「通信品質」が競争の焦点になる。
新しいiPhoneは新たに「プラチナバンド」を使った高速通信規格に対応した。プラチナバンドとは、屋内や郊外でも届きやすい電波のこと。この電波で、高速通信規格「LTE」が利用できるようになったのだ。各社はこの「プラチナバンドLTE」においてどれだけ広いエリアで、どれだけレスポンスよく通信ができるかを訴求している。
専門家が口を揃えて有利と推すのは、プラチナバンドLTEに先行投資していたauだ。LTEの人口カバー率で97%とドコモ、ソフトバンクを上回り、発売当日の量販店で号外広告を打ってまでアピールした。
一方、ドコモはもともとLTE以前から通信品質とエリアには定評があったが、さらにユーザーの多さゆえ混雑しやすい東名阪地域に従来のLTEより速い規格を展開する。面展開でauに出遅れたプラチナバンドも強化していくという。
ソフトバンクは当初、LTEの競争では劣勢が予想されていた。というのも、プラチナバンドLTEの展開予定が2014年からとなっていたからだ。しかし、発売直前にソフトバンクモバイルの宮川潤一専務がEngadgetのインタビューに答え、プラチナバンドでなくても十分に快適であるとして「ソフトバンク劣勢」に反論している。従来のiPhone 5でも使える規格で、現在の通信速度も、パケット接続率も他社に比べて優れているとしている。
どの通信会社を選ぶにしても、LTEが自分の行動範囲で使えるか、が大きなポイントになるだろう。
もうひとつ、通信会社を選ぶ大きな要因である料金は、auとソフトバンクが横並び。ドコモが多少、2年使う人に有利、1年で機種変更する人に不利に設定しているくらいで、支払総額の大きな差はなく、各社、他社からの乗り換えを優遇している点も変わらない。家族との通話を定額にしたい、といった動機がなければ、料金面では、通信会社を選ぶ決定的な要因にはなりづらい。
ドコモ、au、ソフトバンクの三つ巴の争いは、当面、通信品質が焦点になりそうだ。
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