いま流行りの「腸活」。よく耳にする言葉ではありますが、その効果や、やり方は一体何なのでしょうか。腸活にまつわるワードとして「腸内細菌」や「食物繊維」と言った単語が一人歩きしている感が否めませんが、その関係性をご存知でしょうか? 腸活を深く理解するためのキーワードとその効果、やり方について解説します。
腸活のメリットはその“効率の良さ”
腸を整えることにどのような医学的効果があるのかまとめました。腸を整えるだけで、ダイエット、肌の状態、メンタルヘルス、免疫力など様々な機能が改善することが報告されています。
1. 肥満・生活習慣病を防ぐ
食物繊維が食べ物に含まれる油や糖分を吸着してカラダの外に排泄するため、血中脂質(コレステロールや中性脂肪)正常化作用、糖尿病予防、血圧低下作用をもたらします(※1)。
2. 免疫力向上・アレルギー抑制
カラダを守る免疫細胞の70%が腸に集中しています。腸内細菌は血液やリンパ液を介して免疫組織を刺激し免疫力を高めることがわかっています。また、免疫異常ともいえるアトピー性皮膚炎 や花粉症改善の改善に乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌が有効だという報告が増えつつあります(※1)。
3. メンタルヘルスを整える
腸は「第二の脳」と呼ばれ、腸には神経繊維が張り巡らされており、その神経を通して腸の動きが脳に伝わります。これを「内臓感覚」と呼び、腸の内臓感覚によって気分や情動が変わるということがわかってきました(※2)。腸を整えることは、精神的健康にも深い関わりがあるのです。
4. 肌機能改善
まだまだ研究段階ではありますが、ヨーグルトの摂取を続けることで、皮膚の弾力性、乾燥の程度、肌のキメ密度が改善されたという報告があります(※3)。
では、どうすれば腸活ができるのでしょうか?
答えは簡単で「腸を動かす」ことです。
それでは、腸を動かすためにはどうすればいいのでしょうか?
その方法は3つありますが、この3つはどれが欠けてもうまくいきません。その基礎となるのは「運動」、そして「食物繊維(プレバイオティクス+腸運動の活性化)」を多く摂って「腸内細菌を整える(プレバイオティクス+プロバイオティクス)」のです。
それでは順に説明していきましょう。
まず、「運動すること」。カラダを動かすと腸の動きが活性化されます。
例えば、お腹の手術を受けた人は経験されたことがあると思いますが、病院では手術を受けた次の日から歩かされます。傷口が痛むのに歩かされるのは、手術で止まってしまった腸の動きを取り戻すためなのです。これと同じように、便秘解消や腸活をするには、食べ物に気をつけるだけでは不十分なのです。カラダを動かしてカラダの外側からも腸に刺激を与え、腸を活発に動かすことが腸内環境を整えることの第一歩となります。
以下2点の「腸内細菌を整えること」と「食物繊維を食べること」は相互依存的な関係です。
まず、腸内細菌を整えるためには腸内細菌を外から摂る(プロバイオティクス)ことと、腸内細菌を育てる(プレバイオティクス)、の2つの方法があります。
プロバイオティクスには、乳酸菌サプリを摂取したりヨーグルトやキムチなどの発酵食品を食べることが該当します。しかし、その多くはカラダに定着せず数時間でカラダの外に出て行ってしまうため継続して摂取することが肝心です。
一方、プレバイオティクスには腸内細菌のエサ、つまり「食物繊維」を食べることで腸内細菌を養うことができます。また、一部の食物繊維には腸の動きを活性化させる働きがあり、腸活の真髄である「腸を動かすこと」に直結します。
食物繊維のイロハ
食物繊維は「ヒトの消化酵素で消化されない食品の難消化性成分の総体」として定義されています(※4)。そのため、食物繊維はヒトが生きていく上で意義の低い栄養素と考えられていましたが、上記のような効果が知られるようになり、ヒトの健康維持に重要な役割を果たす物質と考えられるようになりました。
食物繊維は炭水化物に分類されますが、デンプンなどの「糖分」との違いはその構造です。ヒトは糖分子に含まれる「α結合」を分解することができますが、食物繊維を構成する「β結合」を分解する能力がありません。
しかし、消化されない食物繊維の一部が腸内細菌によって発酵分解されて「短鎖脂肪酸」と呼ばれる物質が作られます。この脂肪酸が、腸運動を活発化させて便通改善効果を高めるとともに、ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌の増殖を促進して腸内細菌の改善に働きます。また、短鎖脂肪酸はがん細胞の増殖を抑えることも明らかとなっています(※5)。
食物繊維は2つに分類される
食物繊維は「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」に分けられます。
これまでは食物繊維の“総量”が大切とされていましたが、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維ではカラダに対する影響が異なることから、栄養指導の観点から、これらを分けて考えることが重要と言われるようになりました。
アメリカの食事ガイドラインを参考にすると、食物繊維の総量は1000kcalごとに食物繊維14g、不溶性と水溶性の割合は2:1が理想的と言われています。日本人の食物繊維の平均摂取量が15gと考えると、まだまだ食物繊維が足りておらず、現代人の腸が弱っていることが推測されます(※6)。
腸活のオススメ食品は、朝の「玄米」と「メカブ」
●不溶性食物繊維
不溶性食物繊維を多く含む玄米などの全粒穀類摂取効果が注目を集めています。特に、朝食に全粒穀物を食べることによって糖尿病や心臓病のリスクが低下するという研究結果が報告されており、海外の食事ガイドラインでは“朝”に全粒穀物や穀物繊維に富む食事を推奨しています。
また、その量も問題で、1 日 16 g の全粒穀物摂取で全死亡リスクが 7%、1 日 48 gの摂取で 20%低下することが示されています(※7)。
その他、不溶性食物繊維はグリンピース、パセリ、モロヘイヤ、ブロッコリー、ごぼう、だいこんなどに多く含まれます。
●水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、胃の中でゲル状になる性質があります。ゲル状になることで、コレステロールや胆汁酸を吸着して排泄するので、血中脂質を低下させる作用があります。
また、糖質の吸収も抑制するので、糖尿病や肥満を予防することができます。つまり、これらの作用からダイエット効果やデトックス効果を得ることができるのです。水溶性食物繊維を多く含む食べ物は「メカブ」。メカブには「アルギン酸」や「フコダイン」などの水溶性食物繊維が多く含まれ、毎日手軽に食べることができオススメです。
その他、わかめなどの海藻類や納豆、オクラ、アボガドに多く含まれます。
以上、腸活の中心的役割を担う「食物繊維」や「腸内細菌」といったキーワード、腸活の効果・やり方について解説しました。何と言っても「腸を整える」だけで生活習慣病の予防からメンタルヘルスの安定化、免疫力向上など様々な効果が得られるその“効率の良さ”が腸活のいいところです。
腸活を深く理解し、効率よく「健康」を手に入れてください。
【参考文献】
1.日内会誌 2015: 104; 86-92
2.Jpn J Psychom Med 2011: 51; 45−52
3.腸内細菌学雑誌 2008: 22; 1-5
4.日本食品標準成分表2010
5.農化誌 2000: 74: 990-3
6.厚生労働省
7.Circulation 2006: 14; 2370-80
この記事は2019年2月5日サライ掲載記事「『腸活』の基本は『運動する』『腸内細菌を整える』『食物繊維を食べる』の3つ|オススメ食品は『玄米』と『メカブ』」より転載したものを元に加筆・修正したものです。