参院選が目前に迫っている。インターネットでの選挙運動(ネット選挙)が解禁される初の国政選挙ということもあり、選挙のために、FacebookやTwitterなどを新たに立ち上げる候補者も多くいるようだ。各地の候補者の、ネット選挙状況について、朝日新聞デジタルでは下記のように報じている。
(岡山選挙区)自民の石井正弘氏(67)は2月中旬にフェイスブックを立ち上げた。解説本を読んで自ら始めたという。あいさつ回りなどの活動をほぼ毎日書き込み、家で飼っている手乗りのオカメインコの様子や日課のラジオ体操など個人的な話題についてもコメントする。
(朝日新聞デジタル「前哨戦、ネットで熱く 「未知数」冷めた見方も 岡山」より。 2013/06/06)
(宮崎選挙区)共産の来住一人氏(68)は、ブログとフェイスブックを春から活用しだした。県委員会は「選挙期間に入ると規制される活動が多いので、解禁は歓迎」という。
「本人はマウスも握ったことがない」(同)が、来住氏が下書きした原稿をスタッフが打ち込みサポート。集会で参加者から寄せられた意見などを載せ、有権者の声を聞いている姿をPRしていく方針だ。
(朝日新聞デジタル「ネット選挙へ試行錯誤 候補予定者、発信着々 宮崎」より。 2013/06/06)
しかし、不慣れな操作によるトラブルも起こっている。参議院選挙立候補者ではないが、東京都議選に立候補する元葛飾区議の男性は、Facebookで面識のない人たちにも友達申請をしてしまい、Facebook側によってアカウントが停止されてしまった。
Facebookアカウントが停止されてしまうトラブルは、複数の陣営で起こっていると朝日新聞デジタルは報じている。
ネット戦略を支援するガイアックス(東京都品川区)には、FBのアカウントが停止されたという相談が、複数の陣営から寄せられているという。担当者は「候補者側から友達申請する際は、実際に会ったことがある人に限るなど厳格に運営しないと、支持を広げるはずのFBが逆に有権者に不快感を与えかねない」と話す。
(朝日新聞デジタル「有権者に友達申請→アカウント停止 ネット選挙試行錯誤」2013/06/12 19:54)
既にネット選挙が盛んな米国では、どのようなことに気をつけてネット選挙を行なっているのだろうか。Newsweekに掲載された米国在住ジャーナリストの冷泉彰彦氏のコラムには、写真や動画の怖さについて下記のように書かれている。
問題は、写真や動画です。アメリカでは、色々な事例があります。例えば2006年の上院議員選挙で「当確」と思われていた当時現職のジョージ・アレン候補(共和)が、遊説中にポロッと失言をしてしまったのを動画サイトにアップされ、アッという間に拡散する中で支持率が下がって敗北するという事件がありました。
(Newsweek「初の「ネット選挙」、留意点はどこか?」2013/06/11 13:34)
ネット選挙解禁にあたり、デマや成りすましを懸念する声が上がっていた。一般社団法人日本選挙キャンペーン協会(東京)は、悪質なデマや成りすましに関する情報を掲載する「ネット選挙110番」というホームページを開設している。政党公認候補からの通報を基に掲載を行うホームページとのことだ。
しかし、「ネット選挙110番」では、炎上に関しては対応しないと時事通信は報じている。
候補者のブログが一斉に批判を浴びる「炎上」などは「候補者自身の不用意な発言が原因の場合もある」ため、通報があっても対応しない方向だ。
(時事通信「防げ、成り済まし=「ネット選挙110番」開設-大学教授ら、参院選前にHP」より。2013/06/04-05:40)
こうして見てくると、ネット選挙でのトラブルは、外部による工作と言うよりも、自分自身の行動が厄介事の種になるケースが多いようだ。オバマ大統領の選挙陣営のテクノロジー主任だったハーパー・リード氏は、朝日新聞デジタルのインタビューで「なりすまし」や「中傷」について下記のように語っている。
「大統領選でも中傷めいたテキストメッセージを送る組織はありました。困ったことですが、あまり心配しませんでした。だいたいは相手を見つけられますし、正当な候補が正当に発信したメッセージと、そうでない内容を見分けることは、それほど難しくないからです」
(朝日新聞デジタル「オバマはネット選挙で勝ったのか 陣営が明かす手の内」より。2013/06/06 22:24)
もちろん、候補者自身が火種とならないような警戒から、情報発信が疎かになっては困る。
ところが、インターネットでの選挙活動戦略を手がける「ジェイコス」は、政治家向けの講習会でFacebookの書き込み戦略について下記のように述べたと、西日本新聞が報じている。
「HPは見て3秒が勝負」「フェイスブック(FB)の書き込みは、政治の話題は2割に」。社長の高畑卓(36)が指南するネット活用のコツに、満席の議員秘書たちは聞き入っていた。
(西日本新聞「【手探りなう~ネット選挙解禁】(3) 落選恐れる心理突く」より。2013/06/03 16:24)
確かに、有権者に親しみを持ってもらうということは大切だろうが、2割というのは少なすぎるのではないだろうか。
果たしてこれが、本当にネット選挙といえるのか。