来年のキーワードは「Internet of Me (IoM)」になるんだと思う。

2015年、私が日々実感することは、モバイルデバイスによって、24時間365日、常に「Online状態」でいることが、あまりにも日常化してしまったことだ。
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あっという間に過ぎてしまった2015年、私がビジネスおよびプライベートで、日々実感することは、Smart phone & Tabletといったモバイルデバイスによって、24時間365日、常に「Online状態(=インターネット世界)」でいることが、あまりにも日常化してしまったこと。また、それによって「Instant Gratification(瞬間的な満足・報酬)」の欲求が高まり、主としては情報だが、人とのコミュニケーション、モノやサービスの購買など、「今すぐそれが欲しい、そうじゃないとイライラする」といった、「時間への耐性」の弱体化である

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実際、昔は12月29日の「仕事納め」とは、誰もが「仕事から完全に分断される」ことを意味したが、現在は「雑務から逃れられるので、正月休みに調査やプロジェクトのレポートを読みたい、出来次第いつでも送って欲しい」という声を聞くぐらい、ビジネス形態に大きな変化をもたらしている。

Adobe Digital Trendsの最新調査では、2015年末までに週末のウェブブラウジングは50%以上がモバイルトラフィックになると予測し、2016年には平日もデスクトップを抜いてモバイルアクセスが半数以上になると推測している。

この調査は2015年7月から11月のソーシャルメディアにおける2000万以上のmentions、page likes、followersなどを集計したものである。モバイルデバイスの普及は、我々の生活から「On & Off」の境目をなくし、常に「online」状態で生活するという、逃げ場のない「待ったなし」のライフスタイルを作り上げた。実際常に「On」でいることのアドバンテージは本当にあるのか?と、最近つくづく考えてしまう。Smartphoneのnotificationをoffにしていても、ちょっとでも間が空くとすぐに何かをチェックしたくなり、運転中でもこの欲望を抑えるのに苦労する。

はっきり言えば、世界中の「Smartphone保有者(=うつむき族)」は、この「Addiction」から逃れられない中毒患者で、その症状は悪化している。また多くの人たちが(大人も子供も含めて世代を超えて)常にうつむくことに慣れてしまい、社会がそれを日常的な行動として受け入れてしまったことも、この症状を加速化させているように思う。ファンシーなレストランでお洒落なカップルが、相手がレストルームに立った瞬間にSmartphoneを手にしてうつむく姿を見ると、ああ世界はこうなったんだと思う。

自分の仕事上のことに戻れば、eMarketerによる最新調査では、英国は2016年デジタル広告がトラディショナルな広告を追い越して、媒体広告費の51.9%を占めると予測しており、それに続くのが中国、デンマーク、オーストラリア、ノルウエイで、日本は2019年になってもデジタル広告は30%に届かないという。

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これは自分自身の米国での生活をちょっと振り返ればすぐに分かる。企業がトラディショナルな広告を使って、その企業あるいはブランドのターゲットオーディエンスにエンゲージしようとするのはかなりの荒業で、ギャンブルに近いような感覚を覚える。理由はトラディショナルな広告にターゲットオーディエンスが触れる機会が非常に低下しているという点である。

我が家はまだケーブル会社に毎月多額の金額を払って「TV」を視聴している。しかし観ていない、本当に驚くほどTVをきちんと観ておらず、夕食とその後の1時間の夫婦の会話のために、バックグランド的に使っているだけである。私の義理の娘も息子(独身のアメリカ人たち)ももちろんケーブルTVなどを彼らの家ではサブスクライブしておらず、彼らがTVを観たいと思うのはライブのスポーツイベントだけで、彼らはそうした場合はスポーツバーなどで観戦する。

ちなみにうちの子供たちのような「Cord Cutters(TV視聴にお金を払わないがモバイルデバイスあるいは自宅でインターネットにアクセスする人々)」は、最新の調査では米国世帯の10.6%を占めており、これがMillennials(=ジェネレーションY:18-34歳)世帯になると20%まで増加する(experian.com/consumer-insightsによる)。

こうしたリアリティが進行する中、ターゲットオーディエンスにReach outするには、当然のように「デジタル広告(ただしディスプレイ広告はユーザーがBlind状態で視覚の中に入っていても完全に意識を遮断しているので見ていない)」に移行するのは必定である。

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常にOnline状態の現代の一般消費者の心理を簡単に言えば、"I want what I want when, where, and how I want it"である。彼らは、すべてのデジタル経験の中心に自分がいることを望み、自分が望むようにパーソナライズされたインターネット経験「Internet of Me(IoM)」を求めている。

2014年にWiredはこうした現象を、"The Internet you experience, is as unique to you as your fingerprint." と表現して、インターネット経験は個人の指紋のようにユニークなものであるとした。この概念を理解せずに、「IoT (Internet of Things)」という「モノのインターネット」にフォーカスした製品やサービスを構築しようとしても失敗する可能性が高い。

過去何年間の間で作られた「IoT」関連のサービスや製品は、企業側の思惑や技術を優先した結果、エンドユーザーから見ると不必要にバラバラにつながっているものやアイディアが多く、ユーザーがそれによって得られると期待していた「Smarterな生活」をもたらしていない。ユーザーが、モノやサービスを高いあるいは購入するのではなかったと感じるのは、提供される「価値」がユーザーの期待値に適合しない場合である。

「IoM」すなわち「自分を中心とする非常にパーソナライズされた固有なインターネット経験」のマインドセットで生活している現代のユーザーは、自分が購入するモノやサービスが「IoT」であるかどうかを気にしていている訳ではなく、「パーソナライズされた経験を通じて、自分の欲求がその提供されたモノやサービスによって、すぐに叶えられて満足を与えてくれるかどうか?」だけをCare(重視する)している。

「Instant Gratification(瞬間的な満足)」に慣れてしまった消費者のデマンドは、企業が思いもよらないほど、日々拡大していることは、自分の気持ちも含めて実感している。実際のところ、米国でも多くの企業はこの「IoM」への対応はまだまだなされておらず、「インターネットで個客体験」を期待する消費者のデマンドに追いついていないのが現状である。2016年はこの課題に挑戦する年となるので、どこがどのように「IoM」を実現させるか、非常に興味深いところである。

多くの消費者は、意識しているかどうかは別にして、「インターネット経験の向上となるようなデータや情報」を、かなり多く企業に投げ出している。トライアンドエラーを恐れない企業は、ユーザーの個人情報を守りながらも、それらをどのように分析活用して、Demandingな消費者を納得させるのか? チャレンジングな試みであるが、多くの企業が直面しなければならない重要な課題である。

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