日本が歩むべき道 日本外交を考える

日本は今まで経験した欧米とのジレンマから脱却し、自分の果たせる役割に自信を持つべきだ。
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日本は海に浮かぶ列島から成り立っている国である。

それゆえに周辺から孤立して、隣国と陸のつながりがない。地理的な位置は、日本人の心に、他の民族との間、ある種の精神的な隔たりを生み出しているように思われる。いわゆる島国根性である。特に交通手段が発達する以前、日本を囲む海を渡るのは容易なものではなかった。

日本に一番近い国は中国、朝鮮半島とロシアである。

日本の外交の歴史は、その隣国、特に中国と朝鮮半島との関係から始まった。

中国は古代においては偉大なる文明を持ったから、日本との関係は一方通行であった。中国から、直接あるいは朝鮮半島を通じ、文字の書き方(漢字)や宗教(仏教、儒教など)文明のあらゆる様子が輸入された。

しかし、その文化の受け入れは、日本側の意思で行われたものであり、決して日本に対して強制的な措置は講じられなかったはずだ。仏教にしても、日本の支配者の要請により、中国からわざわざ招聘された鑑真和上のもとで行われた。

日本と西洋の関係については、海に囲まれ世界の東の端に置かれた日本へはなかなかヨーロッパの文化が渡りづらかった。それゆえに、産業革命後に全世界に広まったヨーロッパの植民地政策から日本が免れたのかも知れない。

しかし、16世紀の半ばにポルトガルのイエズス会の会員フランシスコ・ザビエル司祭が宣教のために来日し、約2年間に数多くの日本人をキリスト教徒に改宗することになった。これが日本と西洋の関係に大きな影響を与えた出来事だと言える。

日本のキリスト教徒が増加したことによって、日本政府(豊臣秀吉)がバテレン追放令を発令され、キリスト教と南蛮貿易(スペインとポルトガルとの貿易)を禁止した。

これが日本外交のジレンマの始まりだと思う。

そのあと江戸幕府が発足して、キリスト教徒の完全撲滅に成功し、鎖国政策を実施し、ヨーロッパとの貿易はキリスト教の宣教をしなくても良いと約束したプロテスタント国であるオランダに限定した。この鎖国政策のおかげで日本は植民地化されなかったと思われる。

しかし、その一方で、日本がどんどん発展をしていく西洋に取り残され、技術の発展や文明の発達においては大きく遅れてしまった。

それが次の西洋の接近に新たな衝撃を与える原因とも言える。衝撃というのは、黒船来航の出来事である。

1853年にアメリカ海軍の艦隊がマシュー・ペリーに率いられ日本に来航し、幕府に開国を押しつけ、翌年に日米和親条約が終結された。その後、次々ヨーロッパの列強国が日本に同様の条約を押しつける。

この事件がきっかけとなり、明治維新が起こり、1868年に江戸幕府が終焉し、明治政府が発足した。そのあと、大日本帝国憲法が策定され、欧米にならって近代国家を成立された。

「富国強兵」というスローガンを掲げて、日本はどんどん力をつけてきて、外国との交渉はやがて、暴力つまり軍事力で決着するようになり、日清戦争、日露戦争を戦い、大勝利を収めるようになった。

第一次世界戦争においても日英同盟に基づき、参戦し同盟国として勝利を収め、終戦後、連合国5大国の一国となり、国際連盟の常任理事国となった。これで日本は世界の大国となり、ドイツが支配していた太平洋の南洋群島を統治領として譲り受けた。

しかし、そのあと、第二次世界戦争では日本は枢軸国となり、連合国を相手に戦った。最初は大きな戦争の成果をあげたが結果的に完敗し、ポツダム宣言を受諾し無条件で完全降伏した。

第二次世界戦争によって、二回の原爆投下と、全国に実施された大空襲で日本は焼野原となってしまった。

一世紀近くにわたり作られた近代国家や文明は全て台無しになり、挙句の果てに日本は史上はじめての外国軍の占領を味わった。

占領の元で日本は第二回目の憲法(日本国憲法)を策定し、1947年5月に施行された。平和憲法と称されるこの憲法では、戦争放棄や軍隊を持たないという箇条があり、世界に稀な平和主義を唱えるものである。

しかし、それによって日本の外交政策は一つの方向性に縛られて、アメリカの核の傘で自分を守る代わり、「ノーと言えない」日本になってしまう以外、道はなかった。

ところがこのアメリカの傘下で日本は目覚しい復興を成し遂げ、経済がどんどん、どんどん、成長して先進国を追いつき、追い抜き、アメリカに次ぐ世界の第二の経済力となった。

しかし日本の国際社会での外交力は経済力に及ばない。どうしてもアメリカに左右される傾向がある。それはこれまで述べてきた経緯を背景として、日本が外交に自信を失ってしまったからと思われる。

国際社会に大きな役割を果たしてほしいという日本に対する期待は全世界的に大きいと思う。

これだけ国際経済に大きな力を持つ日本がそれに見合った政治的な力を発揮し、冷戦後崩壊した世界のバランスを取り戻すようにしてほしい。しかし、そうと言っても日本は、核大国であるアメリカと中国の板ばさみになっている。

仮にアメリカと同盟を取りやめたら、それは中国と同盟を結ぶということを意味する。つまり、日本の外交は中国に左右されるということになり、ほとんど意味のないことだ。

日本は欧米、特にアメリカとの同盟によって、これだけ経済的に発展し、それだけではなく、65年間以上、国内外に平和を維持できた。それだけのメリットを放棄するまでもない。

しかし多くの国、特に途上国は、日本が憲法改正して、経済力と相当の軍事力を備えたら、アメリカに中国にもよらない、自分独自の外交政策を実施する力があると半ば夢を見ている。しかしそれは無理であるということが誰にもわかるはずだ。

しかし私は思う。

そうではなくて、日本は憲法改正しなくても、核兵器などの軍事力を備えなくても、充分国際社会において力を発揮できる。

日本は戦後以降、他国の戦争にかかわったことはなく、弾一つ発砲せず、戦死1人も出していない。19世紀の終わりまで平和に暮らしてきたし、今は全世界と仲良くしている。

特に中東に関しては全ての国は日本に対して好意を持っているし、同じ文化と伝統と思う人のほうが大半だ。

中東だけではない、アフリカや中南米、西南アジア、中央アジアの国々が日本に好意を持っているし、日本に大きな期待を抱いている。

日本は今まで経験した欧米との関係のジレンマから脱却し、自分の果たせる役割があると自信を持つべきだと思う。

日本は平和憲法の下で経済力や技術力を巧みに使い、ODAを通じ、世界の平和と安定にもっともっと貢献すべきだ。

日本はこれまで充分発展途上国と協力関係を強化してきた。それをもっと活用すべきだと思う。