今年の干支、イノシシにありがちな3つの誤解

「猪突猛進」とは言えないかも
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今年の干支のイノシシ
ウェザーニュース

今年の干支はイノシシですが、実はイノシシに対する誤解は少なくないようです。イノシシの正しい習性を知れば、見方が一変するかもしれません。

(1)猪突猛進という誤解

イノシシと言えば「猪突猛進」ですが、「それは誤解です」というのはイノシシを飼ったことがある江口祐輔さんです。

「子どものうちから飼っているイノシシは人なつっこく、ゆっくり歩くし、曲がるのも得意です。私が思うに『猪突猛進』を言い伝えたのは猟師でしょう。イノシシにしてみれば、自分たちを殺しに来た猟師から必死に逃げているだけなのです。猪突猛進というと、何かに向かって真っ直ぐに突進するイメージですが、実は鉄砲から必死に逃げているだけなのです」(江口さん)

江口さんは国立研究開発法人農研機構(西日本農業研究センター畜産・鳥獣害研究領域鳥獣害対策技術グループ)に勤務し、麻布大学獣医学部客員教授を務めるイノシシの専門家です。

(2)豪雪地帯にはいないという誤解

イノシシは積雪深30cm以上の日が70日以上続く地域に生息できないとされてきました。しかし、最近は豪雪地帯でもイノシシの発見が相次いでいます。

「江戸時代、青森県八戸市周辺でイノシシによる農作物被害で多くの人が餓死したという記録があります(八戸飢饉、1749年)。その後、東北地方のイノシシは豚コレラの流行や狩猟で絶滅したとされます。

冬眠しないイノシシは足が短いため、雪深い地域では越冬できないと言われますが、イノシシの親は雪をラッセル車のようにかき分けて突き進み、その後ろを子供達が通ります。餌さえあれば積雪地帯でも越冬できるのです」(江口さん)

北海道にイノシシはいませんが、江口さんは「氷河期に大陸から渡って来なかっただけで、北海道でも生息は可能」と言います。実際、ヨーロッパイノシシは北海道より緯度が高い積雪地帯に生息しています。

(3)イノシシを捕獲すれば獣害が減るという誤解

イノシシは一昨年、農作物被害を減らすために約53万頭が捕獲されました(2017年・環境省)。

「しかし、イノシシによる獣害はいっこうに減りません。それは捕獲されるイノシシは獣害に関して無罪だからです。捕獲されるのは"山のイノシシ"ですが、田畑を荒らすのは"里のイノシシ"なのです。

私はよく"山の10頭より里の1頭"と言っているのですが、農作物被害をもたらす里のイノシシを捕獲する必要があります。しかし、人家に近い里のイノシシには発砲できないので、ワナを仕掛けて捕獲するのが有効です」(江口さん)

江口さんはイノシシなどによる農業被害を防ぐ捕獲指導もしていますが、捕獲に頼らずに耕作放棄地や放任果樹などの環境管理と畑に柵を張ることが基本だと言います。

イノシシをよく知れば農業被害を減らすことができ、人間と共存共栄も可能なのです。

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