日本政策学校では5月18日に、地方自治講座として、安井秀行氏の講義を開催しました。
以下、その講義サマリです。
これまで多くの自治体のウェブサイトに携わってきたが、使いにくいサイトは、メニューにたどり着けなかったり、
たどり着いても情報の過不足など問題点があるといえる。また、使いやすいサイトには、言語がわかりやすいなど、明確な理由がある。
そこでサイトを使いやすくするため、情報を段階的に分類する『ユニバーサルメニュー』の導入を考えた。
また、行政サービスに番号を附してわかりやすくする『行政サービスID』も、効果が期待されると考える。
◇使いにくいサイト
私はこれまで、多くの自治体のウェブサイトのコンサルティングをしてきた。利用者の声にこだわって、サイトの評価を行っていくうちに、さまざまな課題が見えてきた。
使いにくいサイトを分析してみると、次の2点に絞られる。
1 そもそも利用者の探しているメニューに、たどり着けない。
2 メニューにたどり着いた上でも、以下の問題点がある。
・情報の過不足
・一次情報のみで、読ませるものになっていない。
・リンクがないなど、ネットの機能を果たしていない。
・情報そのものがない。
◇使いやすい(わかりやすい)サイト
また、わかりやすいという観点より考えると、
1 言語がわかりやすいこと。
すなわち、言語情報とデザインは車の両輪であるが、このうち、人間の頭脳に入ってくる第一次情報は、
言語・文字による情報であり、色・デザインは二次的な情報である。
2 分類されていること。
3 施された順番が、ある程度の意味を持っていること。
4 情報が存在すること。
情報が存在しないサイトは多い。これは、自治体の場合には組織が縦割りであること、
企業の場合には担当者の移動が、主な原因である。
◇ユニバーサルメニューについて
そこで上記の要件の備わっている、わかりやすいサイトを作ろうと、ユニバーサルメニューの導入を考えた。
これは、検索して簡単にたどり着くトップページの情報を、より詳しく、具体的に段階的に分類していくものである。すなわち
・専門家しか扱えない情報を、誰もが扱えるものにする。
・自治体が情報を発信しやすい仕組みを作る。
・情報をさらに広い地域や、世界に拡大する仕組みを作る。
◇行政サービスIDについて
さらに、行政サービスには名前が長く、類似しているものも多いので、理解するうえで行政サービスIDが必要である。
行政サービスIDとは、各種の行政サービスに附された番号をいう。国民のひとりひとりにマイナンバーがあるように、国や自治体のサービスにも附番することである。
これによって以下の効果が期待できる。
1 国民にとって
・ひとりひとりのニーズにあったマイナポータルの実現。
・『行政サービスお知らせ便』の実現
2 国や自治体にとって
・国や自治体間を越えたBPRの実現(既存のものを見直して再設計する)
・行政評価、行財政改革への応用(INPUT中心よりOUTPUT、OUTCOME中心へ)
◇質疑応答より
・自治体サイトを作って、コンペで採用してもらう立場にいると、いいものを作っても不採用になってしまうこともある。 納得したものを作って、提供できる機会を得るには。
↓
必ずしも、自治体の採用に依存しなくてもよい。
民間(NPOなど)としてサイトを作って、自治体や企業に会員になってもらうなどのやり方もある。
・ホームページを変更したことによる反響は。
↓
まだわからない部分も多いが、SNSにのりやすくなってきた。
安井秀行氏のプロフィール
NPO団体アスコエ代表
慶応義塾大学理工学研究科計算機科学専攻修士課程修了
マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパン入社
米国ノースウエスタン大学 Institute of the Learning Science修士課程(MS)修了
シニア向けコンピューター開発事業SilCを立上げ、株式会社DBMG取締役を経て、現職。
WEB、マーケティング戦略関連の幅広いコンサルティングを行っている。
内閣官房「電子行政推進タスクフォース」委員
内閣官房「電子政府ガイドライン作成検討会」委員
総務省「ASP・SaaS普及促進協議会 社会サービス展開委員会」副主査
講義データ (2016年5月18日に開催された、政策議論講義「自治体情報発信の現状と課題」より)