今、インディーズ候補が熱い⁈ 日本に「トランプ」や「サンダース」は生まれるか?

実は私が気になっているのはこうした政党に所属しない「無所属」の候補者たちです。

残暑もおちつき、秋晴れの気持ち良いワシントンD.C.です。既にちょっと寒いくらいです。ついこの間まで半袖の人が溢れていた街中は、いきなりダウンコートを着る人が出現し、ちょっと極端すぎるんじゃないかしら?とびっくりしています。

さて、今週末に迫った日本の衆議院議院選挙。アメリカに居ても、SNSで日本の状況が逐次入ってきています。

希望の党、立憲民主党と新たな政党が誕生した今回の選挙戦ですが、アメリカの政治状況に照らして、実は私が気になっているのはこうした政党に所属しない「無所属(あるいは諸派、以下既成政党に属しないという意味でまとめて無所属と表記させていただきます)」の候補者たちです。

◯無所属の「大物候補」と「インディーズ候補」

例えば、私が理事を務めるNPO法人パノラマの地元神奈川8区には4名の候補者が立候補していますが、うち2名は無所属です。候補者を見てみると、今回の選挙、無所属には大きく2タイプがあるようです。

1つは「大物候補」です。神奈川8区では、民進党代表代行・維新の会代表などを歴任し、この地に盤石の地盤を持つ江田憲司氏です。今回の選挙では江田氏のみならず野田佳彦氏、岡田克也氏など民進党の大物政治家たちが「無所属」で出馬していることも大きな出来事として伝えられています。

もう一つのタイプが、いわゆる「泡沫候補」と言われて来た候補者たちです。神奈川8区では、前出の江田氏、自民党の三谷英弘氏、共産党の加藤リカ氏に加え、無所属(諸派「フェア党」代表)の大西恒樹氏が立候補しています。

先日のAbemaTV『AbemaPrime』""泡沫"と揶揄も...公認候補との大きな"格差"と闘うインディーズ候補たちの訴え"ではでは、「泡沫候補」を「インディーズ候補」と位置づけ、何名かの候補者を紹介していましたが、この大西氏も紹介されています。

 元外資系ディーラーの大西氏は、財政金融の考え方を抜本的に見直す公約を掲げている。(中略)

 政治への思いを聞かれた大西氏は目を潤ませながら「本当にフェアな世界を作って、子どもがどの国・家庭に生まれても、ちゃんと自分がやりたいことをやれてそれぞれの人生を全うできるような社会・世界にしていかなければならない」と力説した。

◯インディーズ候補大西氏の素顔

実はこの大西氏、私たちパノラマが運営する高校生支援事業「ぴっかりカフェ」のレギュラーボランティアさんで、私はよく知っている方です。毎週かかさず手作りスイーツ・料理を持って長くボランティアに通ってくれています。(「ぴっかりカフェについては"高校内カフェって知ってますか?:"ぴっかりカフェ"にみる貧困の連鎖を予防する3つの機能"をご参照ください)

正直、フェア党という1人政党をやってる人がボランティアに来始めたと聞いた時には、怪しいし、大丈夫かと心配でした。変な人かもしれないし、学校で政治活動されたら、私たちが学校から出入り禁止になってしまうかもしれません。が、そんな心配は現場としては全く不要でした。生徒たちが「おじさん何してる人?」と聞いても、「近所のオヤジだよ!」と言って、フラットに子どもたちと、ただ向き合ってくれました。

世界で活躍した元金融マンとして、そしてその仕組みの不公平さをよく知る大人として、子どもたちのために世界のお金の仕組みを変えなければならない、という想いは子ども若者支援をしている私には、とても共感できましたし、極めて全う、良識的な人です。

なかなか見極めの難しい「インディーズ候補」ですが、あなたの選挙区のインディーズ候補も演説を聞いてみたり、勇気を出して直接話してみると、もしかしたら熱い想いで社会を変える信念を持つ、信頼できる人かもしれません。

◯「トランプ時代」は「インディーズ候補時代」?

さて、こちらアメリカでは、当初「泡沫候補扱い」だった政治経験のない共和党のドナルド・トランプ氏が昨年のアメリカ大統領選挙に勝利し、第45代大統領に就任しました。対する民主党は既に経験充分のヒラリー・クリントン氏が候補として戦いましたが、大統領候補を決める予備選では元々無所属の(そして大統領選後再び無所属に戻った)バーニー・サンダース氏がヒラリー・クリントン氏を最後まで苦しめました。

過激な発言を繰り返すトランプ氏の当選を支えたのは、不況にあえぐラストベルトの人々だとか、「白いゴミ」とまで蔑まれてきた白人の労働者階級が支持した「ヒルビリー(田舎者)の逆襲」だとか言われたりしています(*1)。バーニー・サンダース氏は、格差是正と公平な社会の実現を訴えて、若者の熱狂的な支持を集めました。二大政党制のアメリカにありながら、苦しい立場におかれた国民の心は「政党主流派候補」から、「インディーズ候補」に向かっていたと言えそうです。アメリカでは"Trump Era(トランプ時代)"という言葉をよく目にしますが、むしろ"インディーズ候補時代"が到来しているのかもしれません。こう考えると一人政党「フェア党」で世界の不平等の是正を訴える大西さんが、ひょっとして将来「日本のバーニー・サンダース」になったりして...なんて期待も膨らみ...ませんか??

さて、週末に迫った日本の衆議院議員選挙。日本でも"未来の「トランプ」や「サンダース」"は誕生するでしょうか?あまり視野に入っていなかったあなたの選挙区の「インディーズ候補」,今一度チェックしてみてはいかがでしょう?

*3 一方で、人々が政治そのものから離れている、という現状も指摘されています。ラストベルトを実際に歩いかかれたクーリエ・ジャポンの記事"Vol.14 ラストベルトの街々で見たトランプ旋風"本当の正体"|高城剛「ストリートの社会学」 "もお勧めです。