インドの夫婦間レイプの深刻さが「悲劇的な重要度」に達した

夫婦間レイプが合法的であるインド。3分の1のインド人男性が、妻に対して無理に性的行為を行った事があると認めた。
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婦間レイプが合法なインド。インド人男性の3分の1が、妻に対して無理に性的行為を行った事があると認めた。

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レイプされた未成年の少女の家の近くで、インド人の抗議グループがスローガンを叫んだ。2015年10月17日、ニューデリーで(CHANDAN KHANNA/GETTY IMAGES)

それは、彼女を毎晩苦しめた日常の恐怖で、悪夢のような儀式だった。夫によって繰り返されたレイプをそう語るのは、27歳のインド人の女性だ。

「部屋に入る前は、緊張したものです。何が私を待っているかを考えると、とても怖くなりました」と彼女は、非営利団体のウーマンズ・メディア・センターにより発行された5月号の記事で、ジャーナリストのプリヤリ・サーに語った。

「私たちの寝室で起こった事は、通常の夫婦間では起こらない事でした。私は売春婦になった気分でした。私は性奴隷や性の玩具のように扱われました。彼は私に物を挿入したり、平手打ちをしたり、噛み付いたりしたのです。彼は動物のようでした。生理中でも、行為を続けました」。

昨年の、彼女の夫の誕生日だった2月14日、夫は彼女を複数回平手打ちした後で、懐中電灯を彼女の膣に無理やり入れてレイプした、と彼女は言った。

「私は出血し始めましたが、夫は私を病院に連れて行く代わりに、義理の両親の家に連れて行き、私を閉じ込めました」と彼女は言った。

「出血が止まらないので、義理の両親は私を病院に連れて行きました。私はほぼ意識不明の状態でした。足や体全体がむくんでいたのです。出血多量でした。その後も60日間、出血が止まりませんでした」。

彼女の夫は彼女への暴行について起訴される事はなかった。

インドでは、男性が妻をレイプする事は違法ではない

その女性は、2月にインドの最高裁判所で、夫婦間レイプを刑事犯罪と宣言する為の嘆願の申し立てを行った。裁判所は、一人だけの為に法律を変える事はできないとして、申し立てを却下した。

「私は法律を理解しません。私は門外漢です」と彼女は裁判所の決定後にサーに話した。「私はただ、知りたいのです。結婚した女性が法的システムに申し入れできる権利は何も無いのでしょうか? ただ苦しんで、自殺するか死ぬしかないのでしょうか」?
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2014年12月16日、ニューデリーのインド人女性達はろうそくを灯し、祈りの集会に参加した。移動中のバスで男性グループに集団レイプされ、殺害された学生を追悼する集会だった。(ASSOCIATED PRESS)

2012年12月には、ニューデリーで、帰宅途中の移動中のバスで、23歳の学生が、6人の男性に集団レイプされた

彼女は13日後に、暴行によって受けた傷がもとで死亡した。

彼女の殺害は、インドで前例の無い反応を引き起こした。憤慨した何千人もの人々が道に集まり、正義と変化を要求したのだ。国際的な反応も瞬く間に広がった、と人権と商業訴訟の専門家で、最高裁判所の著名な弁護士であるカルナ・ナンディーは言う。

「老若男女の本当に沢山の人たちがいました」とナンディーはハフポストに語った。「デリーはその運動の中心地でしたが、ほかにも各地で運動が起きていました。人々は、『もうたくさんだ、これは社会として、私たちにとって許容できる事ではない』と叫びました。信じられないほど感動的でした」。

ここから、カルナ・ナンディーの仕事に関するインタビューと、学生を暴行した犯人グループの裁判の記録を読む事ができる。

学生の死亡を受け、数カ月間怒りが収まらない状態が続いたため、インド国内で性的暴行やレイプに関するより厳しい法律を求める声が上がった。2013年までに、性犯罪の罰則を強化した新しい法律が通過した。ストーカー行為や盗撮などの侵害行為が刑法に追加され、警察官は、性犯罪を記録しなかった場合、刑事責任を課される事になった。

昨年には、ナレンドラ・モディ首相の率いる政府が、女性に対する暴力について「いかなる違反も許さない」("zero tolerance")事を公約とし、それらの犯罪を厳重に取り締まる為の刑事司法制度を強化する事を明言した。

それらの約束にもかかわらず、他人による性的暴行に関連する法律が実際に強化されている一方で、夫が妻をレイプする事を許可する古くからの法律はまだ存在している。

「男性が自分の妻と性交や性的行為を行う場合、妻の年齢が15歳未満で無ければレイプではない」と、1860年のインド刑法に対する2013年の修正条項が明言している。

そのような法律が施行されているため、インドで夫に対する性的暴行ケースを記録する事は、不可能では無いが非常に難しい事になるのである。

「これにより、『悲劇的な重要度』の夫婦間レイプの実態が生じた」と女性の人権の専門家であり、デリーを拠点に活動する弁護士のミヒラ・ソードを含む活動家グループは指摘する。夫は処罰を受けずに妻を暴行し、妻は沈黙に包まれながら虐待を耐え忍んでいるのだ。

「夫婦間レイプはとても広く蔓延する問題です」とハフポストにソードは話した。「これは、犯罪であると認識されていない現実により助長されています。法律的な問題であると同時に、結婚の避けられない部分であると考える社会の大部分による問題でもあります」。

夫婦間レイプは犯罪ではない為、正確な統計を入手する事は難しい。しかし、入手できる限られたデータからでも、この問題の巨大さの恐ろしい光景を垣間見ることができる。

昨年、国連人口基金と国際女性研究センターが、インドの7つの州にわたり、9,200人以上の男性に調査を行った。3分の1の男性は、妻に対して性的行為を強要した事があることを認め、60%の男性は、妻を支配する為に何らかの形で暴力を用いたと述べた。

2014年の他の報告書では、ライス研究所の研究者のアシッシ・グプタが、女性は他人よりも夫により性的暴行を受ける確率が40倍高い事を報告している。グプタは夫婦間の性的暴行の1%未満しか警察への届出が行われていないと結論付けた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの南アジアディレクターであるメナクシ・ガングリーは、夫婦間レイプが、実態と報告数が最も乖離した犯罪の1つであるとハフポストに話し、「なぜなら女性はこれを、嫌ではあるが、夫婦間の義務の一部であると見るためだ」と述べた。

ガングリーはまた、報告を行おうとするときに障害になるものには、広く浸透した社会的不名誉や、国家的な支援構造の欠如、夫婦間の性的暴行事例を取り扱う訓練を受けていない警察官等が挙げられる、と指摘した。

5月に、あるインド女性がジャーナリストのナミタ・バンデールに話した事によると、彼女が夫によって複数回レイプされ、殴られた後で警察の助けを求めた所、警察は彼女の背を叩いて送り返したという。

「警察はとても同情し、私にお茶を出してくれましたが、家に帰って『慣れろ』と言ったのです」と彼女は回想した。
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2013年にニューデリーのバスで発生した若い女性に対する集団レイプによる死亡事件以降、インドでは抗議者が増えている。(ASSOCIATED PRESS)

この惨劇はインドだけの問題ではない。「夫婦間レイプはほとんどの社会で存在しています」とヒューマン・ライツ・ウォッチのガングリーは述べる。

夫婦間レイプは、アジア、アフリカや中東の複数の国で合法的なままであり、その中にはシンガポール、中国、エジプト、レバノンやモロッコが含まれる。夫婦間レイプが厳密には犯罪である国でさえも、強力な法制や適切な刑罰が大きく欠如している事はよくあることなのだ。

オハイオ州、オクラホマ州やコネティカット州を含むアメリカのいくつかの州では、夫婦間レイプは「ある程度合法的」であると、デイリー・ビースト誌の6月報告書は伝えている。夫婦間の性的暴行はアメリカでもまた「まれにしか告訴されない」犯罪なのだ。

この大変な課題がインドだけの問題ではないとしても、インドの人権活動家は夫婦間の性的暴行と戦う事は非常に早急な懸念事項である事を認めている。

ハイデラバードにあるナルサール法科大学副学長のファイザン・ムスタファは、この状況が「悲劇的な重要性」を帯びてきたと述べた。

しかし、夫婦間レイプを犯罪にしようとする案に対しては、インド社会の全てのセクターから徹底的な反対が起こっている。

2013年に、立法者委員会は議会に対し、この運動が「結婚制度を破壊する可能性を持つ」と述べた。自治大臣であるハリブハイ・チャウドハリーは4月に、「国際的に理解されている夫婦間レイプの概念は、いろいろな要因により、インドの文脈に適切に当てはめる事はできない」と述べ、それには無学な事や貧困、社会的慣習、宗教や広く浸透している「結婚は極めて神聖なもの」という認識も含まれると言った。

国連の勧告にもかかわらず、インド政府は夫婦間レイプに関する法律に如何なる修正も行わないだろうと彼は述べた。

人権運動家は明らかな皮肉に激怒した。結婚は神聖である。そして妻をレイプしても良い。

「レイプを悪いと認める為に、読み書きの能力や、お金は必要ありません」と、ガングリーは10月にハフポストに述べた。「そしてこの問題は貧しい地域に限った問題ではありません。実際には、レイプを許容している社会的慣習や宗教的信念などは無いのです」。

レイプを悪いと認めるのに、読み書きの能力や、お金は必要ありません。レイプを許容している社会的慣習や宗教的信念などは無いのです。

--メナクシ・ガングリー

「その国で深く定着している家父長制というシステムを廃止する事が、夫婦間レイプと戦う女性の人権活動家が直面する大きな課題である」と国際女性研究センターのディレクターであるプリヤ・ナンダは述べる。

「父親の為に宿題を止めてお茶を用意しなければならない少女から、結婚の為に学校を退学したり、遺産に対して公平なアクセスを与えられない少女、さらに男性の持つ権威制度まで、男性の特権はどこにでもみる事ができます」とナンダはニューデリーの彼女のオフィスからスカイプで話した。

「あらゆるレベルで家父長制の強さに出くわします。それは男性や女性によって深く内在化しているので、異議を申し立てるのは非常に難しいのです」。

このイデオロギーは、多くのインド人男性や女性が親しいパートナーにつながりを持つ過程で、徹底的な影響を及ぼしているのだ。

ナルサール法科大学のムスタファ副学長が言うように、「今日まで根強く残り続ける1つの古風な考え方として、女性が単なる所有物であると考えられる一方で、その所有主である夫は、唯一疑う余地のない権利を持ち、夫がしたいと思う事は何でも行う事ができ、彼女の性的自主性を奪う事さえもできる、というものがあるのです」。

国連人口基金/国際女性研究センターの2014年報告書によると、3人のうち2人のインド人男性は、妻が常にセックスに同意する事を期待する一方で、半数以上は「夫の許可無しに避妊具を妻が使用する事は想定しない」事を明らかにした。

それらの問題に関して、女性の大部分も同様の見解を示したと報告書は伝える。約65%の女性回答者は、「女性が殴られても仕方ない場合がある」事に同意した一方で、10人のうち9人の女性回答者は、妻は夫に「従う」べきであると回答した。

「長い間、ドメスティック・バイオレンスという言葉が何を意味するのかすら分かりませんでした。私はただ怒りや、怒鳴り声や殴られるのを黙って受け入れるだけでした」と39歳の夫婦間レイプ被害者であるバグワティは、2013年に地元ニュース放送局のテヘルカに伝えた。「結婚前に、セックスは夫の為に行う必要がある義務だと私たちは教えられたのです」。
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ニューデリーの抗議グループは2012年12月、沈黙して行進し、バスで集団レイプされた23歳の学生の死を追悼した。(HINDUSTAN TIMES/GETTY)

インドはヒンズー教が多数派を占める国であり、結婚への見方が非常に保守的であることが、セックスや同意に関する会話を歪曲していると最高裁判所の弁護士であるソードを含めた活動家グループは述べた。

「社会の大部分の人々にとって、結婚は選択肢によって結ばれたロマンチックで平等主義的な結び付きではありません。2つの家が、経済や社会保障を女性に約束し、その代わりに性的利用可能性や貞節、家事や子供を生み育てる事を提供するという暗黙の了解なのです」とソードは述べた。

「相手の意に反するセックスの問題が、明らかな問題と考えられる事すらない事が頻繁にありますが、それは結婚が人生に対する?