府中市が毎年行っている「平成27年度市政世論調査結果」内の【今回特別に調査した事項】に「若者の自立」が入った。
そもそも「自立」の定義は難しく、それは個々人においてもかなり異なるだろう。本調査では、男女/年代別にそれらを複数回答で集計しており、特に60代男性が考える若者の自立観が興味深い。
・自立していない若者が増えていると思うか
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性別/年代別にみると、「そう思う」は、「女性/60 歳代」(39.2%)、「女性/20 歳代」(36.8%)、「男性/60 歳代」(36.1%)、「男性/50 歳代」(32.4%)の順に高くなっている。また、70 歳以上で低くなっている。
意外にも20代の女性がここで回答しており、周囲の同世代または少し上の世代を見て何かを感じているのかもしれない。60代では男女とも高くなるものの、なぜか70代になると男性(21.6%)、女性(26.2%)と10ポイントほど下がる。
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・自立した若者の条件
いまの若い世代にとって経済的に自立した社会であるか、ということも聞かれているが、非常に興味深かったのが「自立した若者の条件」を聞く項目で、60代男性の自立観だ。
「自分の将来の目標があること」(33.3%)
「困難やトラブルに対して、自分で対処できること」(40.3%)
「働いていること」(54.2%)
将来の目標に関して言えば70代男性も41.2%と高い回答率になっている。自立と聞けば経済性が頭に浮かびやすく「働いていること」の項目に回答が集まりやすいと思われるが、男女ともに70代になるとこの項目への回答が一気に減ることも特徴的だ。定年退職や心身の健康面などで働くことが遠ざかるにあたり、自立と働いていることが必ずしもつながっていなければいけないわけではない、という心情になるのだろうか。
男女で別れるが、「困難やトラブルに対して、自分で対処できること」について男性は70代になると回答が27.5%まで下がる。一方、女性は60代も70代もさほど変わりがない。さまざまなひとに関わる社会課題において、当事者(および周縁者)になって初めて「こういうことか」と気がつくことがあると言う。
自立が働いていることや、自ら困難やトラブルに対処できること、が自立に近いものであるという考え方において人生経験の蓄積ある60代の男性にとっては、若い世代にそれを求めるのかもしれない。一方、70代になると、自らの責任や能力においてそれが難しい"当事者"になるのかもしれない。
そう考えると、少子高齢化社会において、若い世代の自立に理解のある70代が今後、ボリュームとして増えてくることを期待したくなる。どうしても世代間での語りが多くなるからだ。ぜひ、府中市には「市への要望」のところに、若い世代についての項目を来年度追加していただきたい。下のランクのどこらへんに入るのかが楽しみである。
(2016年2月2日 「若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog」より転載)