優秀な外国人を日本に呼び込むために、政府は2012年から「高度人材ポイント制」という制度を採用しています。しかし、現在日本が受けている人材は、実は「高度」な専門家ではなく、「中間的な人材」ではないかとも見える調査結果が出て来ました。
■高度人材とは?
高度人材とは、どのような方を指すのでしょうか。政府広報オンラインでは、優秀な外国人材を下記のように表現しています。
グローバル化が進む中、日本国内でも様々な分野で働く外国人が増えています。日本経済を活性化し、国際競争力を高めていくためには、国内の人材を最大限に活用するだけでなく、多様な価値観や経験、ノウハウ、技術をもった海外の優秀な人材を積極的に受け入れ、新たなイノベーションを生み出していくことが重要です。
ハフポスト日本版では、竹中平蔵さんの「移民を受け入れればいいんですよ」という発言を紹介しながら「日本に移民政策は必要か」という記事を掲載したところ、「受け入れる移民について、高度人材と低賃金労働者に分けて考えるべき」とする意見が多数寄せられ、そのなかでも「高度人材」については、受け入れに寛容な意見が見られます。
本当に高い能力、技能をもっている人を積極的に受け入れて行くことは、労働力の確保ではなくて国際競争力の獲得、多様性の向上という意味で、妥当であると考えます。
■現在の「高度人材」は、日本国内でどのような仕事をしているのか
高度人材というと、外資系企業に務める経営幹部や研究者、というイメージを持つ方も多いかもしれないですが、意外に、身近な同僚かもしれません。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「企業における高度外国人材の受入れと活用に関する調査」によると、日本で働いている高度人材の方々は、勤め先が外資系企業の人は12.9%しかいないのに対し、外資系ではないという人が83.2%だったということです。更に調査では、中小企業に努め、役職はないとする方が多いという結果が見られます。
・勤め先企業の従業員規模
・現在の職位
・現在担当している主な仕事
■海外の高度人材の各国例
各国の高度人材に関する例はどうでしょうか。外国人材が必要と考えていても、優秀な人材の獲得競争は既に始まっており、日本はすでに遅れているのではないかと指摘する意見もあります。
ハフポストの記事に寄せられたコメントの中で、keine borderさんは、ドイツにおける高度技術者不足の例を次のように紹介しています。
ドイツでは深刻な問題として医師など高度技術者の不足問題があります。これは、特に旧東ドイツで顕著ですが、ドイツから、賃金の高いスイス・イギリスへ移住する医師が後をたちません。
そのため、ドイツは医師を海外から輸入しなければならなくなっています。そこで、もし、ドイツにいかれましたら、街の医師の看板を確認してください。最近、東欧系の医師の名前が非常に増えております。
シェンゲン協定が人口の移動を容易にして以降、医師に限らず、人材の流動は非常に激しくなっています。労働許可を受けるのも比較的容易なため、最近では、記載されておられましたギリシャのみでなく、失業率の高いスペイン、イタリアからの流入が激しく、現地のドイツ語学校などは空前の混雑具合ということです。
また、高度人材に限りましても、やはり高い収益をあげる会社が高い賃金を払えるという原則にたちますと、景気の良いドイツはEU内でのプレゼンスを上げており、人材も多く流入しているように感じます。
このコメントでは、自国籍を持つ高度人材が国内におらず、海外からの受け入れに頼るという状況もあるということがわかります。優秀な人材を自国に確保しておくという政策が必要であるとも考えられます。
■高度人材獲得のためには?
では、高度人材を獲得するためには何をすべきなのか。「魅力的な日本であるうちにはじめること」とする意見や、「海外留学生を受け入れる」などの案が出ています。
・優秀な人材が日本に来たくなる、日本で働きたくなる法・環境・条件を整備する。
・海外の優秀な学生が学びに来たくなる教育プログラムを各大学で整備し、寮・奨学金等環境整備をし、優秀な海外留学生を多数受け入れる。
⇒優秀な留学生がそのまま日本にとどまり、高度人材として活躍してもらえる環境整備も重要
現在の勤め先に就職するとき、どのような方法で就職したのかという調査結果では、「学校の就職部(キャリアセンター、キャリアオフィス)、指導教授の紹介」が 27.2%で最も多く、留学生への対策が大きく寄与しているのがわかります。
先にドイツの例をコメントしてくださったkeine borderさんは、海外諸国の留学生の状況について、下記のように書かれています。
学生の流動が最近は激しいと思います。イギリス、スイス、(ドイツ)など留学生の受入れに積極的で、世界的にも評価の高い大学は、外国人が非常に多く見受けられます。この学生が卒業後もそのまま、大学や研究機関に在籍、もしくは、多国籍企業に就職するなど、現地にとどまるケースも多く、まず、最初に日本が目指すのも、このケースなのかと個人的には感じております。
留学生については、エラスムスのようなヨーロッパ諸国間での交換留学生の制度が大きく影響しているのかと感じます。日本の大学でも最近になってアジアの大学間での連携に乗り出す大学が現れつつあるようですね。単位や資格の互換性など、これからの課題は多いと思いますが、そうした人材の交流や流動性という観点からも歓迎すべき変化ではないかと思っています。
■高度人材は日本に何を期待するのか?
では、当の外国人材はどのようなことを考えて日本企業に務めるのでしょうか。海外からの人材が日本企業で務めるにあたって重要視したことという調査結果では、次のようなデータが出ています。
・現在の勤め先に応募する際に重視したこと
また、現在の仕事が、海外と関連しない仕事であるという人も、4割近くいる状態のようです。
■国内企業は高度人材を必要としているのか?
海外の人材を受け入れている日本企業についても、「高度人材ポイント制」というシステム自体を知らない企業が9割に登っており、また、国内の日本人と同様な立場で国籍に関係なく外国人を採用していることがわかります。
「国籍に関係なく、優秀な人材を確保するため(人材のダイバーシティ戦略など)」が 52.1%で最も多く、以下、「仕事上、外国語や外国の状況を理解している人材が必要であったから」(45.9%)、「必要とする技能や能力を持った人材がたまたま外国人であったから」(37.6%)などとなっている
高度人材を受け入れる企業から見ても、20代〜30代で年収400〜700万円という、経営者クラスと言うよりは、若手でこれからの会社を支える人材を欲しているとも捉えることができそうです。
これらの調査を見ていると、高度人材というのは、団塊ジュニア世代から見ると、上司と言うよりも、同僚もしくは部下であり、ライバルと捉えることもできそうです。
■海外からの高度人材は必要か?
このような受け入れの現状をあなたは、どう考えますか。冒頭で紹介したYasushi Katayamaさんは、本当に高い能力の有る「高度人材」であれば受け入れるべきとしながらも、「中間的な人材」の受け入れは移民に対するネガティブ感情を生み出すことになるのではないかとも指摘しています。
最も現日本人と競合する「中間的な人材」に関しては、ある程度の能力があっても希望の職に就くことが難しい現状で、さらに同等の能力を持った人を増やしていくのですから、どちらの立場の人にとっても、希望の職に就けない人が増えることは明白です。差別無くフェアな競合の場を提供できるというのならば、これに反対する理由は無いと考えますが、おそらく「職を奪われた」と感じる人たちの移民に対するネガティブな感情は、避けられないでしょう。
mito cottentailさんは、「外国人高度人材」の規定をきちんとすべきとも指摘しています。
「人口減少時代」の政策としては、"外国人高度人材"はいかなるものかきちんと規定して「永住権」を与え日本で生活する外国人の方々を増やせばいい。
さて、あなたはどうでしょう。下記のクイックアンケートにお答えください。
また、是非、様々な国の高度人材政策に関する情報をお寄せください。なお、移民政策に関する考え方を、yamagooさんは次のように提案されていますので、紹介します。
yamagooさん
・なぜ受け入れたのか。
・どこ(の国)から受け入れたのか。
・どういう人を受け入れたのか、受け入れにあたって選別はしたのか。
・受け入れた移民はどういう職に就いたのか。
・受け入れた移民に対する教育・同化政策はどのようなものだったのか。
・現在起こっている「問題」とはどのようなものなのか。ネイティブ側の問題なのか、移民側の問題なのか。
こうした他国での先例を確認し、検証した上で
・それらの問題を起きないようにするにはどうしたら良いのか。
・問題を起こさずに、日本で移民を受け入れることは無理なのか。
という日本における移民政策の検討と移民の是非の判断を行うことが正しいアプローチだと思います。