【池袋暴走事故で禁錮5年の判決】遺族は語る。飯塚被告は控訴するかどうか「もう一度自分自身に問いかけて欲しい」

東京地裁で被告人に禁錮5年の判決。妻と娘を失った松永拓也さんら遺族が司法記者クラブで会見を開きました。
|
Open Image Modal
司法記者クラブで会見を開いた遺族の松永拓也さん(右)と上原義教さん(9月2日撮影)
安藤健二

2019年に東京・池袋で車を暴走させて母子2人を死亡させ、他9人に重軽傷を負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(90)に対し、東京地裁は9月2日、禁錮5年(求刑・禁錮7年)の判決を言い渡した。 

この事故で妻と娘を失った遺族の松永拓也さんらが、東京・霞が関の司法記者クラブで同日、記者会見を開いた。飯塚被告が控訴するべきか否かを「もう一度自分自身に問いかけて欲しい」と思いを述べた。 

 

■池袋暴走事故とは?遺族は10回の公判全てに参加してきた

2019年4月19日、飯塚被告が運転する乗用車が暴走した状態で交差点に進入。松永さんの妻・真菜さんと娘の莉子ちゃんの命が失われ、9人が重軽傷を負った。飯塚被告側は、車の電気系統の不具合でブレーキが利かなかったと訴え、無罪を主張していた。

2020年10月の初公判から11カ月。亡くなった松永真菜さんの夫・拓也さんと父・上原義教さんら遺族は、被害者参加制度を利用して、9回に及ぶこれまでの公判全てに参加してきた。公判後は一度も欠かさず記者会見を開いて、繰り返し思いを語ってきた

 

■遺族から飯塚被告への思い。控訴するかどうか「もう一度自分自身に問いかけて欲しい」

2日の会見で、松永さんは下津裁判長が述べた判決の中で「松永真菜と松永莉子の尊い命が失われ、その2人が感じた恐怖心など想像しがたい。遺された遺族の心情は察するに余りある」という配慮の言葉を聞いたとき、涙が出てきたと明かした。

また判決言い渡しの最後に、下津裁判長が飯塚被告に対し「裁判所の認定に納得できたのであれば、被害者や遺族に自らの過失と責任を認めた上で、真摯に謝っていただきたい」と諭し、「裁判の結果に納得できないなら2週間の間に控訴の権利がありますよ」と言ったことにも触れた。

松永さんは「まず判決として(過失が)認められたことは被告も受け止めて欲しい。控訴という権利はあるが、もう一度自分自身に問いかけて欲しい。裁判官はそういう思いでおっしゃってたと思うんですけど、私もそう思います」と述べた。

記者団からの質問で「飯塚被告に控訴してほしくないか」と問われると、悩みながらも「大前提として被告が無罪を主張する権利も控訴する権利もある」と述べた。その上で、「心情的には、してほしくない。人と争い続ける私は、(亡くなった)2人が愛してくれた私ではないから。本心を言えば、して欲しくないと思ってしまうんです」と打ち明けた。

松永さんの妻・真菜さんの父である上原さんも会見に出席。飯塚被告に控訴を断念して欲しいとして、以下のように訴えた。

「飯塚さんも今まで謝るチャンスがなかったかもしれない。でも今日の判決を聞いて、自分は誤った考えをしてたと受け止めていただいて、心からの謝罪をして欲しい」とした上で、「私たちの心をもっともっと惨めにし、苦しめる控訴だけはして欲しくないと思います」と訴えた。