“見た目が違う”人との結婚。カップル10組が教えてくれる、夫婦ってなに?

夫婦は他人。だからこそ……
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人通りの多い表参道駅で、女性が立ち止まりスマートフォンを掲げる。学校帰りの子供たちが、足を止めて友達と一緒に写真に見入る。

彼らの視線の先にあるのは、10組のカップルの写真。東京・表参道駅で開かれている「いい夫婦の日」写真展だ。

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Naotaka Miyamoto

この10組のカップルに共通しているのは、顔にあざがある、髪がないなど「見た目の悩み」を抱えながら生きていること。

「顔や身体に先天的や後天的な外見でわかる症状を持つ方と配偶者の方の写真を通して、結婚とは、夫婦とは、容姿とは、内面とは、差別とは。そんなことを見た人に考えて欲しい」という願いが、写真展には込められている。 

なぜ夫婦?

写真展を企画・実施したのは、フォトグラファーの宮本直孝さんだ。

宮本さんが表参道駅で写真展を開くのは、今回が4回目。これまでにも、ダウン症のある子とその母や、難民、パラリンピック選手の写真を展示してきた。費用は全て自費だ。

4回目となる今回の写真展では、見た目問題を抱える人たちの、葛藤と前向きに生きる気持ちの両方をカメラで捉えたかったという。

見た目問題を抱える本人だけでなく、「夫婦」という単位で撮影しようと思った理由を、宮本さんは次のように話す。

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Naotaka Miyamoto
口蓋裂のある金井真琴さん(右)

 「写真を見ても、すべての人が『見た目問題』を自分ごととして捉えられるわけではないと思います。どうすれば見た人の気持ちにより届くだろうと考えた時、カップルで撮るというアイディアが浮かんだんです」

見た目の悩みを抱える人とその人と一緒に生きることを選んだ配偶者を見た時、結婚している人であれば自分の配偶者を、結婚していなくてもパートナーがいる人であれば自分のパートナーに思いを馳せるかもしれない。

夫婦で撮ることで、見た目問題を身近に感じられる幅がもう少し広げられるかもしれないと考え、夫婦の写真展にした。 

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satoko yasuda
宮本直孝さん

夫婦って何?最後に行きついた答えは…

見た目問題を夫婦で撮る、と決めた宮本さん。しかし最後まで悩んだ問題があった。それは写真展全体のテーマ「夫婦とは?」という問いだ。

「見た目問題を夫婦で撮ろうと決めたものの、それを通して何を言おうかということがなかなか決められなくて。ずっとモヤモヤしていたんです」

答えが出たのは、写真展が数週間後に迫った11月初旬、10組目のカップルを撮影をした時だった。

「最後に撮影した女性は、生まれた時から動静脈奇形で見た目が他の人と違うことに悩んでいました」

「撮影前のやりとりで彼女から『何で夫がこんな私に優しくしてくれるのかが不思議なんです。それも知りたいから撮ってほしい』と言われていたんです」

撮影当日、リラックスしてもらおうと思った宮本さんは、固い表情をしていたふたりに『結婚してどれくらいになるんですか』と聞いた。

「そしたら、ちょっと考えてから『今日結婚記念日だ』って言うんです。だから『18年の思いを表情に出してみましょうか』って言ったら、奥さんが『こんな私で18年間ありがとう』って小さい声で言ったんです。そして、それを聞いた旦那さんの顔が和らいだんです」

その後ふたりは、カメラを見ながら小さな声で会話を続けた。途中で夫が、優しく肩を叩いた。写真はその時の顔だという。

「カメラを見ているんですけれど、これはふたりで向き合って話をしている表情なんですよ」 

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最後に撮影した、河除(かわよけ)静香さん(左)

このふたりを見て、宮本さんは「夫婦というのは感謝なんだな」と感じた。

「ダウン症の子と母を撮影した時は、親子はとても結びつきが強いと感じたのですが、夫婦はもともと他人です。親子に比べると結びつきが薄い」

「他人だからこそ、感謝できるのがいい夫婦なんだな、ということに最後の最後に気づいて、それを『いい夫婦の日』写真展のテーマにしました」

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写真展のモデルになった人たちは、トリーチャーコリンズ症候群や口蓋裂、アルビノ、脊髄性筋萎縮症など、さまざまな「見た目問題」と生きている。

10組の夫婦の撮影にはそれぞれのストーリーがあり、最初は乗り気でなかったパートナーが途中で気持ちが集中して、思いの込もった1枚が取れたカップルもいる。   

写真から、それぞれの夫婦の思いを感じてもらえたら、と宮本さんは話す。

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「いい夫婦の日」写真展

日時:2019年11月18日(月)〜11月24日(日)

場所:東京メトロ表参道駅コンコース B3出口前

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