受け手の「主体的な思考」を引き出すために、最低限気をつけるべき伝え方

現実を切り取り事実を届ける事によって、決して受け身ではない、主体的に「考える」きっかけが生まれます。

これまでの私の記事をご覧になっている方は分かるかもしれませんが、大学生という身分にありながらも私は、人一倍プロ意識を持って、(良い面も悪い面も)途上国の現状を「伝える」活動に取り組んでいます。その根本的な動機や目的などはこちらの記事で綴っています。

今日はこの「伝える」、特に写真を利用したものに関して、そのHOWにあたる「デザイン」や「方法」の一論を、特に大学生の私たちが最低限気をつけたい点に絞り書きたいと思います。

ご存知、学生による国際協力 (or 国際交流)の活動がブーム(註:最近は学生団体ではなく、起業やインターンシップを通じてこの世界に身を投じる学生が増えてはいますが)になっている今日。学生団体によってしばしば行われる活動として、写真展やパンフレット作製などを通じた「伝える」活動があります。

しかしながらこれらの試み、デザインに拘り過ぎるとそこで印象操作が行われ、伝える側の主観を押し付けることに繋がりかねません。先日問題視した具体例としては、バングラデシュのストリートチルドレン(路上で生きる幼い子ども達)の写真を、背景や周りの様子を切り落として人型の写真に切り抜き、それをボードへ貼り付けた展示。ストリートチルドレンの周りにはお洒落な星や円型の色紙を貼付。

展示のコンセプトとしては"「テロ」や「過激派」などバングラデシュの負の側面ばかりが取り上げられるからこそ、「楽しい」「明るい」面を伝える"との事でしたが、それを伝える側の我々が、ある種デザインを利用することで「楽しい」「明るい」面を強調するのは、ちょっと違う。そして悲しい哉、活動に対してヤル気のある学生はデザインに凝りやすいため、その傾向がさらに強くなってしまう。

楽しそうな様子の写真、例えば笑っている子供たちの写真や、ふざけ合っている子供たちの写真を使う事自体は良いのだけれど、やはり大切にするべきは、それらを見る受け手の捉え方だと思うのです。なぜなら、現実を切り取り事実を届ける事によって、決して受け身ではない、主体的に「考える」きっかけが生まれるから

笑顔だって一つではない。心から笑っている顔もあれば、悔しさを心の奥底で噛み殺しながらの笑顔もある。どこか悲しみを隠したような笑顔もある。特に、ストリートチルドレンのような特殊な背景を抱えた小さな子供たちの表情は、私たちに多くの事を感じさせます。「なぜ君たちは、そんなに笑っていられるの?」と。

例えば、ゴミ山の上で笑っている子供たちの写真を見れば、「彼らはなぜゴミ山にいるのだろう」「彼らの笑顔は本物なのだろうか」などと、主体的に考えるきっかけが生まれる。

さらに、例えば「ゴミ山からお金に換えられそうなガラクタを集め、廃品業者に運ぶ仕事をする子供たち。学校には通っていない。」という事実をキャプションとして加えておけば、「なぜ学校にも通えない厳しい生活環境に置かれているのに、彼らは笑っているのだろうか」「本当の幸せとは何だろうか」などと考える事にも繋がる。

それが、先ほど例示したような展示だと、彼らがどんな状況に置かれている子供たちなのか考えることが難しくなり、そして周りの装飾によって「楽しい」「明るい」というイメージが固定化し得る。もっと言えば、人型の写真に切り抜いてしまえば、それはもう「バングラデシュの子供たち」で終わってしまうかもしれない。

楽しい面だろうが悲しい面だろうが、そこを考えるのは写真を見る人たち。その伝え方に演出は要らないはず。写真と事実が乖離すると、写真が独り歩きしてしまう。

その一方で、それ(現実を切り取り事実を突きつける写真)を見て何かを感じ取り、そして行動までも繋げられる日本の人々、特に若者はどれくらいいるのだろうか、という葛藤もあるので、「伝える」ためのHOWを考える事が難しいのは確かに事実。そしてまた、決して主観の押し付けにならず、主体的な思考を引き出すためとしての「デザイン」があるのも事実で、そこを追求する必要もある。

だからこそ、まずはその背景(内容の情報から被写体の周囲の様子まで)をちゃんと伝える事が大事。なぜなら、一面だけではなく、多面的にその対象を理解することによってまた、考えるきっかけが生まれるから。私たちが伝える対象(問題)は、知れば知るほど、理解すればするほど、私たちに「何か」を考えさせるから。

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駅で暮らすストリートチルドレンたち。荷物運びで1日100円の収入を稼ぐ。学校には通っていない(photo by Kanta Hara)

記事執筆者:原貫太

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(原貫太ブログ 「拝啓 美しくも不条理な世界へ」より転載)