ICTを使って、もっと地域の課題と向きあおう(上)―木下斉

ICTによる真の地域活性化のため、「モノ」であるICTを使いこなす「ヒト」への投資を提言する「ネットと地域活性化を考える会」。連載第2弾は、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さんが、各地での取り組みを2回に分けてご紹介します。
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ICTによる真の地域活性化のため、「モノ」であるICTを使いこなす「ヒト」への投資を提言する「ネットと地域活性化を考える会」。連載第2弾は、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さんが、各地での取り組みを2回に分けてご紹介します。

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■ICTなしのまちづくりはもったいない

私は1998年に早稲田商店会に関わったのがキッカケとなり、現在、全国各地の都市中心部の再生プロジェクトに従事しています。コンサルというよりは、時に各地域で地元の方々が出資して設立するまち会社に我々も出資もします。また、その会社の事業開発をする時にも成果報酬型の契約で推進したりします。

このように全国各地でまちづくり事業を推進する上で、ICTは欠かすことができないものになっています。

もともと関わっていた早稲田商店会の活動は、参加者が会社員、行政マン、大学教授、大学生など多岐にわたり、さらに居住地域も全国に点在していました。そのため、会議などを行うのに時間が全く合いません。そのため、当時からプロジェクトに関する連絡のほとんどをインターネット上で行っていました。

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メーリングリストなどのインターネットを活用した会議を行うことで、気づいた時にいつでも議論できます。さらに議論の内容なども全てログが残り議事録作成の必要もなくなり、後から参加された方もすぐに過去の経過を追うことができました。結果的に、170人にも登る全国の参加者が集まり、各地域の問題解決などに多数の専門家や実践者がアドバイスを行うようになっていきました。ここから、様々な地域課題解決のアイデアや政策立案が行われました。

しかしながら、当時は常時接続もブロードバンドも普及していない時代。今みたいに皆がスマホを持つような環境でもありませんでした。そのため、テレビ会議なども簡単にはできず、文字でのコミュニケーションが基本で、もどかしい思いを沢山しました。

■物理的・コスト的制約が消え、全国横断での事業が可能に

それから15年。できることは飛躍的に増えました。

今、私たちは17都市ほどのまち会社と事業開発・運営を一緒にやっていますが、各地域とはスカイプやグーグルハングアウトでテレビ会議での打ち合わせが中心です。勿論、重要なシーンでは現地に出向いて、地元のまち会社のメンバーと打ち合わせ、地域関係者へのプレゼン、交渉をします。

しかし、ほぼ無償かつ簡単なテレビ会議サービスが活用できるようになり、異なる地域同士でもより密なコミュニケーションが可能になりました。また別途メール、Facebookのメッセージ機能、最近ではLINEなどでのやりとりもプラスされ、従来より互いの情報交換が円滑になるようになりました。これは大きな変化です。

コミュニケーション面でのメリットだけではありません。テレビ会議サービスの活用によって、地域での課題解決に必要な事業開発の段階で、多額の出張費をかけずに済むようになりました。これによって、以前より事業の黒字化を早めることができるようになりました。

コミュニケーション面、コスト面両面でプラスに働いているのです。

さらに、事業に必要なファイルやプロジェクト管理といったこともオンラインで共有できるようになりました。これにより、物理的に離れた地域のメンバー同時で事業開発に従事することが極めて容易になりました。昔であれば、同じオフィスで同じ紙の資料をにらめっこしなければできなかったことが、必要ではなくなったのです。

例えば、一昨年前に加盟した兵庫県豊岡市の城崎温泉のまち会社とは、事業開発前には一度も現地には訪問しませんでした。現地で事業開発に従事されているマネジャーの方やスタッフの方とのやりとりを通じて、複数旅館がばらばらに契約していたエレベータ管理の共通化・効率化を行い、その差益でまちづくり財源を生み出すという事業開発を行いました。元々私も役員を務める熊本市での取り組みをベースに、エリア・ファシリティ・マネジメントという事業プログラムを作り、それを城崎温泉でも実施したのです。この事業によって、今では年間数百万円の財源が現地に生まれています。

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また、愛知県春日井市・勝川商店街での遊休不動産を活用したシェア店舗「TANEYA」も、北九州や札幌などで実績のあるリノベーションまちづくりの方法を元にプログラム化し、ネットを通じて現地のメンバーの方とプロジェクトを推進したものです。小さな店舗兼住宅の遊休不動産活用でしたが、1階にカフェ、2階には4人の方が入居する拠点となりました。若く、かつ飲食や製造小売やサービス、システム開発といった今後の成長が期待できる業種を新たに商店街に組み込みました。当然ながら、彼らの事業規模で無理のない家賃設定をしつつ、その収入をもとにして内装投資は2年で回収可能な範囲で改装設計を実施し、完全民間による空き店舗再生を実現しました。補助金なくとも、民民事業で空き店舗対策も可能なのです。

このような事業開発もテレビ会議での様々な打ち合わせ、ドキュメント共有などによって推進しました。かつてのように毎度会議のたびに出張をしたり、会議に集まったりということではない方法によって、劇的に事業開発コストを引き下げ、ゼロから地域での課題解決につながる事業を立ち上げられるのです。

さらに、ネットを使うことでより密にプロジェクトが進捗でき、半年で事業がスタートするというスピードを実現しています。

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いずれも行政の支援はゼロでも、完全民間プロジェクトとして、地域の収支を改善したり、新規創業者を生み出すことができるのです。このような方法が複数地域で実施できるようになっているのも、ICTのお陰と言えます。(下に続く)