現地15日に行われた、メジャーリーグの第85回オールスターゲーム。日本人選手ではダルビッシュ有(レンジャーズ)、上原浩治(レッドソックス)が出場し、共に好投でファンを湧かせた。
この日の主役は何といっても、今季限りで引退する球界のレジェンド、デレク・ジーター(ヤンキース)。今回が自身14度目のオールスターとなった"ニューヨークの貴公子"は、ア・リーグの1番ショートで先発出場。代名詞ともいえる華麗な長し打ちで2安打を放った。
球界に多大な貢献をもらたしてきたジーターの功績を、周囲も粋な演出で称えた。ジーターが初回の打席に入ると、場内には2010年に他界したヤンキースの名アナウンサー、ボブ・シェパード氏のアナウンスが流れ、相手先発のアダム・ウェインライトもグラブをマウンドに置いて観客と共に拍手。
4回、一度はショートの守備についたが、場内に突然フランク・シナトラの『ニューヨーク・ニューヨーク』が流れ、やはり大きな拍手と歓声に包まれながら最後の夢舞台を終えた。そのジーターは試合前、クラブハウスでア・リーグの選手たちを前にスピーチを行った。
「オールスターが初めての選手たちは楽しんでくれ。何度もある経験じゃない。友人や家族と分かち合ってほしい。時が過ぎるのは本当に早いから」。1日限りのチームメイトたちは、ジーターの話を噛み締めるようにして聞いていたという。メジャーの未来を担う若い選手たちにとって、チームの垣根を超えて球界の大先輩と交流できることも、オールスターの大きな魅力なのだ。
ところで、数年前まで毎年のオールスターで、ジーターと同じようにクラブハウスでスピーチを行っていた選手がいる。ジーターの現チームメイトであり、かつて10年連続でオールスターに出場していたイチローだ。2007年にはオールスター史上初のランニングホームランを放ち、MVPも獲得したイチローはいつからか、オールスターで毎年スピーチを行うようになったことで知られている。
ア・リーグは1997年から2009年まで、引き分けを挟み破竹のオールスター12連勝を飾ったが、レッドソックスのデビッド・オルティスはかつて「イチローのスピーチがあるから、俺たち(ア・リーグ)は負けないんだ」とまで話していた。
イチローが具体的にどんな話をしていたのか気になるところだが、その内容は明らかになっていない。というのも、そのスピーチは決して上品とはいえないスラングや下ネタ、放送禁止用語のオンパレード!だったそうなのである。模範解答のようなジーターのスピーチとは対照的に、毎回チームメイトたちを爆笑させていたそうだ。
ア・リーグが毎年勝ち続けていたこともあり、イチローのスピーチは「やめるにやめられない」儀式となったという。その面白さは、イチローとオールスターを共にする幸運を掴んだ選手たちだけが知っているのだ。
スポカルラボ
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(2014年7月19日「MLBコラム」より転載)