千葉県市川市で4月に開園を予定だった私立保育園が「子供の声でうるさくなる」などと近隣住民から反対され、運営主体の社会福祉法人が開園を断念していた。4月11日に毎日新聞などが伝えた。
この問題が報道されると、全国から抗議を中心にメールや電話が市川市に50件ほど寄せられたという。これを受けて、市川市は12日に記者会見を開き、経緯を説明。こども施設計画課の小西啓仁課長は「去年(開園が)決まった保育園の中でいちばん大きなものだったので、極めて残念」と話した。
厚生労働省によると、市川市の待機児童は2015年4月時点で373人と全国の市区町村でワースト9位。定員108人の保育園が新設されることを、市や関係者も期待していたという。
■近隣住民が保育園建設に反対、なぜ?
建設予定地の周辺は、一戸建てが中心の閑静な住宅街で、高齢世帯が多い場所。毎日新聞によると、2015年8月に開園を伝える看板を立てたところ、反対運動が始まったという。住民側は市や社会福祉法人に対し、計画撤回の要望書を提出した。
産経新聞によると、市川市などは2015年10月以降、住民説明会などを複数回実施して理解を求めたが、住民からは「騒がしくなる」という声のほか、予定地が幅約3メートルの道路に面していることから「予定地に面する道路が狭くて危ない」と交通事故の危険性を指摘する反対意見も相次いだ。「住民に相談なく保育園設置が決まっており、市の対応に不満がある」と事前説明の不足を指摘する声もあったという。
■市川市「防音壁を提案したが、聞き入れてもらえず」
弁護士ドットコムによると、市川市の小西課長は会見で「市川市はもともと道が狭い。その中では道路が見通しもよく、(幼稚園も安全性に)配慮された設計だったので、設置に特に問題があるとは思っていませんでした。言葉が不十分で誤解を招いた部分もあったかもしれません」と話した。
その上で「社会福祉法人は、防音壁を設置する予定でした。住民説明会で二重窓にするなどの提案もしていましたが、聞き入れてもらえませんでした」と、近隣住民の理解を得られなかったことを明かした。
■子供の声めぐるトラブル、各地で
子供の声をめぐるトラブルは、2014年には神戸市東灘区の保育園の近隣住民が「子どもたちの声がうるさい」として防音設備の設置や慰謝料100万円の支払いを求める裁判を神戸地裁に起こした。
東京都目黒区でも、2015年4月に開園予定だった保育園が、子供の声による騒音などを心配した住民からの反対運動を受けて、開園を延期したことが話題になった。
一方で「子供の声を抑制することは、心身の発達段階にある子供にとってストレスになる」という意見もある。東京都は2015年3月、子供の声を規制基準に適用しないよう都議会で条例を改正した。
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