SNSで宣伝するからアイスクリームをタダにして、というお願いにうんざりしたアイスクリーム店経営者が「インフルエンサーは倍支払う」というルールを決めた。
インフルエンサー倍額ルールを作ったのは、アメリカ・ロサンゼルスでアイスクリームトラック「CVTソフトサーブ」を経営する、ジョー・ニッチさんだ。
ニッチさんはCVTソフトサーブのInstagramで、次のように説明する。
「インフルエンサーだろうが、どれだけフォロワーがいようが、我々は気にしません」
「ソーシャルメディアへの投稿と引き換えに、アイスクリームをタダで提供はしません。アイスクリームは文字通り4ドルです。しかし今後、インフルエンサーは8ドルにします」
デジタルメディア・VICEによると、ニッチさんは俳優業をするかたわら、副業としてCVTソフトサーブを2014年にスタートさせた。
フレーバーは、チョコレート、バニラ、ミックスの3つ。CVTは同年にロサンゼルスのベスト・フードトラックに選ばれ、行列ができる人気店だという。
1960年代のビンテージトラックをリメイクしたフードトラックも、インスタ映えに一役買っている。
ガーディアンによると、お店を始めた年は「SNSで宣伝するから、アイスを無料で食べさせて」というメールが、インフルエンサーから数通届く程度だった。
しかし、徐々にエスカレートしていき、最近はインフルエンサーと名乗る人たちが直接フードトラックに来て「無料にして」お願いするようになった。しかもそれが、少なくとも週に1回はあるという。
「『私のことをフォローしているかどうかわからないけれど、フォロワーが10万人いる。アイスをタダにしてくれませんか?そしたらストーリーに投稿するから』と言ってくるんです」
「これは4ドルのアイスクリームです。一体何を言ってるの、と思いますよ」ニッチさんはロサンゼルスタイムズに話す。
ニッチさんは6月28日、CVTソフトサーブのInstagramに「私たちは、あなたに何人フォロワーがいようが、気にしません。もしアイスクリームをタダでくれと言ったら、恥ずかしく思います」と投稿した。
ニッチさんはVICEに、なぜそんなに数字にこだわるのか理解できないと語る。
「自慢したいわけではないですが、うちの店にはいつも長い列ができています。人気がある証拠です」
「しかし、たくさんの若いミレニアル世代がやってきて、『5000フォロワーしかいないなんて、驚いた』と言います。一体何が問題だというのでしょう。道には行列ができています。もし明日Instagramがなくなっても、うちはまだ存在します。なぜそんなに、フォロワー数を気にしなければいけないんでしょうか」
ニッチさんが我慢の限界に達したのは「CVTソフトサーブをSNSで『露出』するので、300人のパーティーでタダでアイスクリームを配ってくれないか」とお願いされたことだった。
「タダで働けなんて馬鹿げている」と立腹したニッチさん。「インフルエンサーは倍額」というサインを作ってトラックに掲げた。
インフルエンサーと企業が契約を交わすのは、珍しいことではない。企業がインフルエンサーにお金を払ったり、製品を提供したりする代わりに、SNSのページで紹介してもらう。
しかし、近年、この現象は、限度に達していると分析する専門家もいる。多くのインフルエンサーと名乗る人たちが、ホテルやレストランに押し寄せて特別扱いをするように求めた結果、インフルエンサーに頼らない方針に切り替えた企業やレストランも出てきた、とインフルエンサー・マーケティング・エージェンシーのエヴァン・アサノ氏はロサンゼルスタイムズに語る。
フォロワーを増やすというインフルエンサーの申し出を断ったニッチさん。しかし、彼の決断はSNSで話題になり、さらに様々なメディアで取り上げられて、その結果Instagramのフォロワー数が大きく伸びた。
「だいぶ皮肉な結果ですね」とニッチさんは話す。