PRESENTED BY ヤンセンファーマ株式会社

病気も“個性”のひとつ。IBDという難病を抱えながらも「夢は諦めない」

5月19日は、世界IBDデー。「病気を抱えながら、働く」を考える。
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Vasyl Dolmatov via Getty Images

明日、病気と診断されたら―――。

どのような治療を受けるのか、お金はいくらかかるのか。

仕事は? 家族は? 生活は......?

"人生100年"時代。病とともに生きることは、誰にでも身近な話だ。

「病気=離職」、ではない

病気を抱える人たちの多様な生き方について考えるイベント「病気を抱えながら働くことを考えるD&I(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン)」が、5月12日土曜、東京の大手町で開催された。

病を抱えている人たちが「自分らしく」働くために、企業や医療現場はどういったサポートができるか、どのような課題を解決すべきなのか。多様性が叫ばれる現代だからこそ、病気や患者の視点を理解することが求められている。

「ひと昔前は、病気と診断されたら『すぐに離職せねば』となるのが一般的でした。しかし最近は『病気とは、長く付き合っていくもの』という考え方に変わってきています」

そう語るのは、治療と仕事の両立支援をサポートする医療ソーシャルワーカーの桑島規夫さんだ。

医療ソーシャルワーカーとは、企業と病院が相互に連携して患者(労働者)を支援していく際のコーディネーターとしての機能も有し、医療機関に属している。

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聖マリアンナ医科大学病院 メディカルサポートセンター ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)係長 桑島規夫(くわしま・のりお)さん

治療は? お金は? 仕事は?

病気の発覚後、考えるべきことはたくさんある。桑島さんによれば、多くの患者が最初に考えるのは「どのような治療を受けることになるのか」ということ。そして次に「医療費はどれくらいかかるのか、保障制度はどうなっているのか」、それから「仕事は辞めるべきか、どうすべきか」。この3つめの点において苦労する人たちは多い。しかし中には、会社の理解と協力を得て、治療と仕事を両立している人もいる。

「ある患者さんが病気を会社に報告したら、人事の担当者も社員の病気をよく理解したいと考えたようで、患者さんと一緒に外来受診に来られました。担当医から目の前で話を聞くことで、今後の就業プランもスムーズに立てられたようです。

仕事と医療の両立支援とは、このように、企業側と医療機関側がうまく連携して情報共有をしていくことが重要です」

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治療と仕事の両立支援のイメージ

「配慮」と「特別扱い」は、違う

企業と医療機関の連携において、もっとも大切な前提は「配慮と特別扱いは違う」という認識を統一させることだ。

病気を抱える社員を前にし、どう接するのが正解かわからず、過度な気遣いなどで特別扱いをしてしまうかもしれない。それでは選別的になってしまい、逆差別にもつながる。

病気を抱える社員に対しても、介護が必要な方や妊娠している方などにするような「一般的な配慮」にとどめることが大切だ。このようなマインドセットを周囲の人たちが持つことから、誰もが安心して働ける職場づくりが始まる。

LGBTや育児復帰の社員とも、スムーズなコミュニケーションを

今回、イベントを主催したのは世界最大級のヘルスケアカンパニー、ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門であるヤンセンファーマ株式会社(以下、ヤンセン)だ。ヤンセンでは、管理職を対象に、多様性を受け入れ、浸透させる職場環境づくりのためのトレーニングを全世界で行っている。

LGBT、育休復帰、病気治療中の部下らをモデルケースとして、彼らが職場で不安に思っている点を探り、管理職としてどのようにコミュニケーションを図るかを考える、といった内容だ。

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ヤンセンファーマ株式会社 免疫・感染症事業本部 大阪第1営業所 所長 塩出洋和(しおで・ひろかず)さん

D&Iトレーニングを受けたヤンセンの塩出さんは「このトレーニングを受けたことで、育児休業から復職する部下の受け入れがスムーズにできました」と語る。営業の場合、復職の前後で事業環境が変わっていると適応できるか不安になる。それらの懸念を取り除くべく、復職直後は環境に慣れることを第一優先とし、部署内で気軽に質問を出せるようなムードづくりを心がけたという。

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D&Iトレーニングのゴール

「不安をゼロにすることは難しいかもしれませんが、少しでも減らせるように、常日頃から会話をしたり、面談をしたり、密なコミュニケーションを心がけています」

メンバーの背景をしっかりと理解できていれば、仕事の割り振りから休みのケアまで、より良い形で対応できるからだ。

「弊社を含め、このD&Iトレーニングのような試みによって多様性が世の中に浸透していけば、会社のみならず、社会全体として働きやすい環境を作っていけるのではないかと思います」

難病を抱えながら「自分らしく」働く

IBD(炎症性腸疾患)という病気をご存知だろうか。潰瘍性大腸炎とクローン病のことを指す。大腸や小腸に炎症または潰瘍を引き起こす原因不明の慢性疾患で、厚生労働省により難病に指定されている。

IBDには若い患者が多く「外来でも、就職に関する相談を頻繁に受ける」と言うのは、北里大学 北里研究所病院の小林先生だ。

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北里大学 北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター 副センター長 小林 拓(こばやし・たく)先生

IBDという病気は、患者ひとり一人によって症状が違う。最近では治療法が進歩しており、日常生活に何ら差し障りないという人もたくさんいる。

だからこそ、就職活動の際に病気であることを明言したほうがいいのか、という悩みは多い。

「できれば就活の際に病気のことも話をして、受け入れてくれる企業に就職できるのが理想です。しかし同時に、職場や職種によって温度差があることも否定はできません。ですので、就職活動を通して患者さん側が『病気を理解してくれる企業を選別することができる』と考えることも肝心です」

日本のIBD患者数は現在、約30万人。単純計算で約400人にひとりは罹患している。

小林先生によれば「勇気を出して上司に病気のことを相談したら、職場に何人か同じ病気を持つ人がいることがわかり、自分の病状もスムーズに理解してもらえた人もいる」という。

大企業であればなおさら、IBDを抱えている人が当たり前に就労している可能性が高い。

「難病であると隠さず、オープンにしていけば、思っている以上に職場は受け入れてくれるのでは」

病気を会社に伝える「5つのメリット」

12年前に潰瘍性大腸炎を発症したfummy(フミー)さんも、就活の際に一番悩んだのは、企業に病気のことを伝えるか否かということだった。

結果としてfummyさんは会社に病気を伝えたのだが、その体験から「病気を伝える5つのメリット」を提示してくれた。

メリットのひとつに【通院のための休みがもらいやすい】という点がある。現在fummyさんは2ヶ月に1度の通院をしており、「通院を休むことの方がストレスになる場合もある」という。

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fummyさんが述べた『病気を会社に伝えるメリット5つ』※あくまで個人の意見です。お酒が病状に悪影響を及ぼす医療的根拠はありません

17歳の時にクローン病を発症した『みえIBD患者会』副会長しんちゃんは、就職後、自分自身のことを知ってもらうという意味で、病気に関する質疑対応マニュアルを配布したという。

「今後の治療方針や病状の見込みなどをA4用紙2枚ほどにまとめ、社内で配りました。入院したらどれくらいで復帰できるかは、みんな知っておきたいところ。僕の場合、入院するのは腸管からの出血が多いときで、そうなると1ヶ月は復帰できません。そうした前提知識を盛り込みました」

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『みえIBD患者会』副会長しんちゃん

一方で、病気を伝えたからとはいえ「休むのはしょうがない」とは思えないことも。自分がやるべきだったはずの仕事をカバーしてもらえば、感謝だけでなく、申し訳ない気持ちになったり、引け目を感じてしまったり...。一生懸命に病気と生きていこうと思っているからこそ、そうした悩みを抱える人が多いのも事実だ。

IBDという難病を抱えながらも「夢は諦めない」

病気を抱えていると、どうしても体調を優先に考えてしまい、自分のやりたい仕事ができなくなるのではないか。そう考える患者さんも少なくはない。

fummyさんは「病気を抱えていても、きちんと会社を選び、体に負担のかからない働き方をすれば、やりたい仕事はできる」と、後押しをした。

IBDを抱えていても、その人が持っている魅力や才能は変わらない。体調と相談しながらも、チャレンジしたいことがあれば優先すべきだし、その挑戦が受け入れられる社会を周囲も作っていかなくてはならない。

小林先生もまた、患者さんには常々「IBDになったからといって、"できない"と決まってしまうことは、何もない」と伝えているという。

病気と共生していく上では、目標を実現させることが大事なエネルギーになる。昔と比べて薬や治療法も増え、患者さんを取り巻く環境も劇的に変化している。全体的に明るい兆しも見えてきている。病気になったからといって、自ら可能性や選択肢を狭める必要はないのだ。

病気を抱える人こそ、これからのダイバーシティを推進していく

最近の医療現場では、異なる職種の人たちがそれぞれの専門性を発揮して患者を支える「チーム医療」という考え方が主流になってきている。

日常生活において、親や友人、上司など、悩みによって相談する相手が違うように、病気を抱える人もまた、自分の気になる要素によって話を聞きたい相手も変わってくる。かつては担当医のみが矢面に立って患者と接していたが、今は、患者を中心としたサポート体制が組まれ、医療機関側で情報が共有される。病気と長い付き合いをしていく時代、チーム医療の取り組みは今後より広まっていくだろう。

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チーム医療のイメージ

IBDの治療法は、これからも進化していくだろう。チーム医療に代表されるように、医療現場の考え方も変化してきている。

すでに病気と何年も歩んできて、辛い思いをしてきた人もたくさんいるだろう。しかし最後に小林先生は「ここから必ず素晴らしい人生が用意されていると、思っていただいていい。患者さんがより良い人生を達成するために、私たちはここにいます」と述べた。

人種や外見の違いをはじめ、世界中に様々な人たちがいるように、病気であることも個性であり、多様性を体現する要素のひとつなのだ。

また、疾患を抱えながらも、やりたいことに取り組む人たちは、その体験や考え方から多面的な視点を持っている。

生活と仕事の両立が必要とされ、多様性が推奨されている現代日本において、病気を抱える患者さんこそ"ダイバーシティ&インクルージョン"を推進する力を持っているのではないだろうか。