人類はかつて、冬眠していたかもしれない。30万年以上前の骨を調べた研究者が発表

冬眠することで極寒の冬を乗り越えた……って本当!?
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私たちの先祖はかつて、冬眠して厳しい寒さを乗り越えていたのかもしれない。

30万年以上前の人類の化石を調べた研究者が、そんな驚きの説を発表して話題になっている。  

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発掘作業をするためにアタプエルカ遺跡の洞窟「シマ・デ・ロス・ウエソス」に向かう作業者たち(2010年7月21日)
AFP via Getty Images

研究者たちが調べたのは、スペイン北部にあるアタプエルカ遺跡の洞窟「シマ・デ・ロス・ウエソス」に残された、初期人類の骨だ。

シマ・デ・ロス・ウエソスは、20世紀後半に初期人類の化石が発掘された、考古学史上、最も重要な遺跡の一つ。

ここに残されている人類の化石は、30万年〜60年万年前のもので、ネアンデルタール人もしくは彼らの先祖のものだろうと考えられている

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シマ・デ・ロス・ウエソスに入る準備をする研究者たち。左側がジュアン=ルイス・アルスアガ氏(2015年7月16日)
Pablo Blazquez Dominguez via Getty Images

研究に携わったアタプエルカ財団研究者のジュアン=ルイス・アルスアガ氏と、ギリシャ・デモクリトス大学のアントニス・バーツォカス氏は、顕微鏡やCTスキャンを使って骨を調べた。

その結果、初期人類の骨には、冬眠する動物の骨と同じ傷やダメージが見られたという。

このことから「初期人類が冬眠することで極寒の冬を乗り越えた可能性がある」とする研究結果を、学術誌「L’Anthropologie」に発表した。

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冬眠することを指摘された霊長類の一つ、ショウガラゴ
EcoPic via Getty Images

またガーディアンによると、初期人類の骨の成長が毎年数カ月中断していたことも、研究で明らかになった。

これについて「古代の人類は、食べ物がほとんどない寒い冬に何カ月も睡眠することで新陳代謝を抑え、生き延びた。それが骨の成長に影響を与えたのではないか」と研究者たちは考えている。

研究者たちは、人類が冬眠のような状態で冬を乗り切るというのはサイエンスフィクションのような話だとしつつも、ショウガラゴやキツネザルのような霊長類も冬眠することを指摘。 

「冬眠は、何カ月も続く極寒の季節を洞窟の中で乗り切るためのたった一つの解決法だったのではないか」と推測している。

この研究結果を、「興味深い視点だ」と歓迎しつつ、さらなる研究が必要だと考える研究者もいる。

イギリス・ノーサンブリア大学法人類学者のパトリック・ランドルフ=クイニー氏は「とても興味深い考えで、様々な議論を呼ぶだろう」「しかし骨に残されていた情報を様々な角度から調べない限り、結論を出すことはできない。まだ道半ばだ」とガーディアンに語っている。