足跡はタンザニアのオル・ドイニョ・レンガイ火山の麓の干潟で発見された。
タンザニアのナトロン湖南岸沿いのエンガレ・セロで発掘調査している研究チームが、古代人の足跡を分析している。その足跡は約5000〜1万9000年前のもので、複数の人間がにエンガレ・セロの泥地帯を歩いていったと思われる。
ナショナルジオグラフィックによると、400以上の足跡が発掘調査現場で発見された。この場所はオオル・ドイニョ・レンガイ火山(地元のマサイ語で「神の山」)の近くにある。
この足跡は、古代人が残した最古の足跡というわけではない。現代人類最古の足跡は「イヴの足跡」と呼ばれる、1995年に南アフリカで発見された約11万7000年前の足跡だ。
しかし、アフリカでこれほど多くの古代人の足跡が発見された場所は他にはない。それがエンガレ・セロの大きな特徴であり、特に古代の足跡、またその足跡の残る道筋から、太古の我々の祖先について多くを知ることができる。
「足跡の大きさから足の構造や体の大きさや歩き方について知ることができます。一方、踏み固められた道筋や現場全体の分析からは社会的な行動様式についての情報を得ることができます」と、アパラチアン州立大学の地質学者シンシア・リウトカス・ピアス博士がハフポストUS版の中で語った。ピアス博士は、ナショナルジオグラフィックの支援でで足跡を研究しているチームのリーダーを務める。
エンガレ・セロの足跡は何を語りかけているのか? 足跡は十数人の人々のもので、ほとんどが女性と子供とみられる。時速8キロ以上のスピードで走っている人もいたようだ。中の1人は、足の親指を骨折していたと思われる。
痛っ。
「発掘現場はとても複雑です」と、ニューヨーク市立大学の古人類学者で研究チームのメンバー、ウィリアム・ハーコート=スミス博士はナショナルジオグラフィックで語った。「非常に多くの足跡が集まっている一帯があり、我々はそこを『ダンスホール』と名付けました。1カ所にあれほど多くの足跡が集中しているのを見たことがありません。まったく異例のことです」
9月28日に発表された学術誌「Palaeogeography, Paleoclimatology, Paleoecology(古人類学・古気候学・古生態学)」の論文によると、その足跡は、近くにある火山からの火山灰が堆積している泥地の中に残されていた(下の動画を観てもらうと、どのようなことが起きたのかがわかる)。
ナショナルジオ・グラフィックによると、その足跡は2006年以前から地元住民の間で知られていたが、2008年になって初めてピアス博士の目にとまったという。
ワシントン・ポストによると、研究チームは当初その足跡が何十万年もの古代のものと考えた。しかし、その年代を特定するのは困難を極めた。その後、発掘現場の土の中の鉱石から年代を放射測定し、5000〜1万9000年前という数値を割り出した。
「現在も足跡を分析中です」と、ピアス博士はハフポストUS版に語った。さらに、発掘現場を確実に保護すると同時に立ち入りができるよう、研究グループはタンザニア政府に働きかけているという。
足跡から今後どのような発見があるかはわからないが、ピアス博士は初めて足跡を見たときの興奮をいまだに思い出すと言う。
「涙が出るほどの感動を覚えました。これらが私たちの祖先の足跡だなんて。私は発見直後に発掘現場でそれをこの目で見ることができたのです」と、ピアス博士は語った。「とても興奮しましたね」
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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