アリアナ・ハフィントンより
ハフポストは設立当初から、使えるツールすべてを駆使して、そのとき最も重要で、面白い話題を伝えてきました。最新技術やプラットフォームを試し、世界中に増え続ける読者に適した手段を探してきました。新しい読者を探すことも、同様に重視してきました。
そして今日、大変喜ばしいことに、ハフポストがバーチャルリアリティ(VR)技術を持つストーリーテリング企業「RYOT(ライオット)」を買収し、ハフポストRYOTを創設したことを報告します。私たちはハフポストの動画配信をさらに発展させ、バーチャルリアリティから長編映画、360度動画まで、まったく新しい体験を世界中の読者に提供できるようになります。
ヘッドセットを使ってVRを体験したことのある人や、自分の携帯で360度動画を見たことがある人ならご存知かもしれませんが、VR技術には大きな可能性が秘められています。RYOTは、こうした体験を実現できる、あらゆる技術的ノウハウを持っています。CEO兼共同創設者のブリン・ムーサー氏のグローバルビジョンと創造性にあふれるチームメンバーが、RYOTに息を吹き込みました。ハイチ最大のスラムや、ケニアのゾウを救う闘いの内側、バフィン島に住むイヌイットによるヘビメタバンドの裏側、会社を辞めて自転車で世界一周する男性...こういったすべてのものを、15カ国語版の世界中のユーザーに向けて、配信することを嬉しく思います。
私たちが提携する本当の理由は、RYOTがただの面白い最新のハイテク玩具メーカーではないからです。RYOTはもっと大きな目的のために、最新技術を使うことを約束しています。「私たちは視聴者に行動を起こさせる、活力のあるストーリーを伝えます」。RYOTは、このように表現しています。メディアの宿命かもしれませんが、RYOTのミッション「伝え、楽しませ、活力を与えることで、次世代のストーリーテリング改革を引き起こす」はハフポストのミッション「情報を提供する、ひらめきを与える、楽しませる、エンパワーする」とも重なっているのです。
RYOTのすべての作品に、このミッションが具現化されていることを確認することができます。RYOTが作り出す体験を言葉で完全に表現するのは難しいことですが、もう少しだけ例をご紹介しましょう。
RYOTが制作した短編ドキュメンタリー「Body Team 12」(エボラ出血熱が最も危機的な状況にあった時に、死体を回収するという忌まわしい仕事を任された人たちについて描いたもの)はアメリカのケーブルチャンネル大手「HBO」に買収された後、オスカー賞にノミネートされ、トライベッカ映画祭ではベスト短編ドキュメンタリー賞を受賞しました。RYOTから生まれた作品は、11個の賞を受賞し、40の国際映画祭に出展されてきました。
もちろん、実際の影響を、単なる賞や称賛で測ることなどはできません。VRによって真の改革がもたらされるのは、技術と目的を組み合わせた時なのです。共感を得たいなら、これより優れた手段はないかもしれません。現在直面している複数の危機を本当に解決したいと思うのであれば、共感こそ私たちにとって必要なものです。それこそ、私たちハフポストのメンバーが2015年、ギリシャの難民危機について描いた「The Crossing」でRYOTと協力した際に発見したことでした。技術とストーリーテリングを組み合わせることで、世界中の多くの人々にとって抽象概念化してしまった人類の危機を、生々しく伝えることができたのです。そして、これは私たちが共同で行った、作業の始まりに過ぎなかったのです。
ハフポストファミリーにRYOTを迎えられて、本当に嬉しく思います。今後、共にニュースや出来事を伝え、世界規模で文化論争を巻き起こす。そして、事実を伝えるだけでなく、人々の生活に変化を与えるような仕事をしていけることが、本当に楽しみです。
ブリン・ムーサーより
(RYOT共同創設者の)デヴィッド・ダグと私は、発展途上国で生まれ育ちました。2000年代初旬、私たちは西アフリカにいました。デヴィッドはセネガルの上水プロジェクトに従事し、私はガンビアの小さな村で平和部隊のボランティアをしていました。私の仕事は、茂みの再森林化や、周囲の村に点在する小さな学校で図書館を建てる手伝いをすることでした。技術は世界を変えると知ったのはその時です。固定電話回線などなかった村々が、突然、携帯電話で繋がりました。世界的議論に意見できるようになったのです。技術が何もかも変えることは明らかです。
ハイチ地震の後にも、それを確認できました。デヴィッドと私は、ソーシャルメディアで人々が繋がっている様子を目撃したのです。これまでには、なかったことです。携帯のネットワークで人々が繋がり、文化、社会、地理的分断を乗り越えてお互いに会話できるようになっていました。
興味深いのは、人々がどのようにインターネットからメリットを得られるのかではなく、インターネットが新しい意見、人、アイデアからメリットを得ていることです。しかし、お互いに直接会話できるにも関わらず、やはりニュースは一方通行の情報でしかありませんでした。それを変えるために、私たちは2012年、RYOTを立ち上げました。
RYOTはすべてのニュース記事を行動に結びつけるという単純なミッションから始まりました。ニュースによって悲観的になるのではなく、力を与えたかったのです。世の中で起こっていることによって意気消沈するのではなく、活気を与えたかったのです。RYOTは常に、ストーリーをより身近に感じさせることができる新しい技術を探してきましたが、そこでVRを見つけました。GoProカメラを数台購入し、世界中で撮影を始めました。ネパール地震からシリア・アレッポの通り、レスボス島のビーチ、そしてアメリカ全土で発生している混沌とした政治集会まで、初めて世界の最重要課題の規模や範囲を、完全に体験できるようになったのです。
今、私たちは次の冒険を始めようとしています。ハフポストとの協力です。ハフポストとは同じDNAを共有しています。また、ハフポストは、「人は自身の声でストーリーを伝える権利があるはずだ」という理念の上に創設されています。ハフポストと協力することで、すべてのグローバルニュースデスクにVRを加え、世界最大の360度動画とVRニュースのネットワークを作り上げています。今後も受賞に繋がるドキュメンタリーを制作し、ニュースや動画ジャーナリズムにおいて、VRと現実の垣根を破っていくつもりです。市民、活動家、ジャーナリストにiPhoneやGoProを持たせ、新手の語り手を招き入れて、このような人々の声を世界に発信できるかもしれない。この新しい提携に喜び、そして刺激を受け、私たちは将来へと向かうのです。 ぜひ一緒に、ストーリーの一部になりましょう。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。