「あなたが食べているチョコの裏には児童労働がありますよ」
そう言われてピンとくる人は、一体どれくらいいるのだろう。
バレンタインデーにあわせて「チョコレートとSDGs」をテーマにお届けした2月の「ハフライブ」で、そんな問いかけをした。
チョコレートの原料となっているカカオの生産現場では、長年、子どもたちが過酷な労働をさせられていることが国際問題になっている。
こうしたことを知ると、「もうチョコレートは一切買わないほうがいいのではないか…」とも思ってしまう。
一体どう考えたらいいのか?
子どもが働かされて、チョコができている。
日本は世界有数のチョコレート消費国で、カカオの仕入れ先の8割はガーナ。そこでは77万人の子どもが学校に行かずにカカオ栽培をさせられている。子どもたちが重たいカカオの実を頭の上に載せて運んでいる。
生まれた場所が違えば、のびのびと学校に通い、友だちと遊んだり勉強したりしていたかもしれない子どもたちの、学びの機会が奪われている。現地の子どもも大人も、困窮する生活の中で、やむを得ずそう選択している面もある。
社会構造の大きな歪みがそこにある。
チョコプラ長田さんが語ったジレンマ
2月15日に配信した「ハフライブ」ではこうした現実を、人気お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の長田庄平さん、ガーナの児童労働問題に取り組むNGO「ACE」代表の岩附由香さん、チョコレートジャーナリストの市川歩美さんとともに話し合った。
・チョコレートの裏にはカカオの児童労働の問題がある
・児童労働はない方がいいに決まっているが、そうした犠牲が一切ないチョコは現状、割高になってしまう
・そもそもチョコレートの適正価格はいくらなのか?
こうしたポイントについて話し合う中で、何度も「難しいなぁ」と頭を抱えながら、長田さんは次のように話した。
「(SDGsへの)意識は変わってきているんじゃないでしょうか。自分が食べているものの裏に児童労働があると、やっぱりモヤモヤするものがあります」
「でもそういうのは、自分の生活に余裕があるから選択ができるのであって…。自分が全然売れていない芸人だったら(値段が高くても)そういう選択できるのか、といったらそうでもないだろうなという本音もある。そういう意味でやはり全体を底上げしなきゃいけないですよね」
児童労働があると知ればチョコレートの見方がまったく変わってくる。けれども高くても買う、という選択は「余裕があるからできる」ことかもしれない。
長田さんの言葉は、多くの社会課題や、資本主義そのものが抱える矛盾を私たちに突きつける。SDGsについて話をする時、まずは真摯に、この矛盾から会話をはじめることが大事だと改めて思った。
日本の「厳格さ」の方向性、少しでも変えていけないか
チョコレートから見えてくるジレンマをどう解決していくのか。
今回、カカオなどの輸入に詳しい取材先からこんな言葉を聞いた。
「日本企業は品質にとても厳しいことで知られている。一方、人権問題には疎くて…」
世界で一番カカオを生産しているのはコートジボワールだが、日本ではガーナ産のものが多用されている。ガーナは政府主導で価格や品質の管理を行っているため、日本企業が安心して豆を仕入れることができるのだという。
こうした厳しさは、高いクオリティにつながっており、日本のチョコは世界的に評価が高く、海外でも多く消費されている。
きめ細やかなデザイン、一つ一つを丁寧に包装するパッケージ。「日本ならでは」だと言われることもある。
この厳しさや熱量を何とか、人権およびサステナビリティの方にも向けていけないか。その分岐点に、今まさに立っていると感じる。
実際に、今回取材したチョコレートメーカーの中には、児童労働のないカカオを使うと宣言している企業や、現地の人々の教育支援・技術支援などに取り組む企業もあった。
もちろん「ウォッシュ(うわべだけの、ごまかしの)」と呼ばれるような、やってるフリはダメだし、「もっとスピードをあげて取り組むべき」「資本主義の構造そのものを見直すべき」という意見もある。
しかし、企業の人権に対する取り組みは着実に変化してきていることがわかった。
番組に出演した「ACE」の岩附さんは「ボイコットよりバイコット(Buy=買う)を」と提案する。
色んな問題を知った上で、「だから買うのをやめる」のではなく、「きちんと取り組んでいる企業の商品を選んで、買う」。買って「応援」することが、消費者が起点となった、日本企業の“新しい厳しさ”につながるのではないだろうか。
私ができること。それは…
果たして私たちは、チョコを買うのをやめるべきなのだろうかーー。
児童労働に関わっている企業の商品を選べば、買うことで加担してしまうことになる。それはやめなければならない。
それと同時に、企業の人権意識や取り組みも変化してきていることがわかった。
全てのチョコレートを買わない、と一律に決めるのではなく、自分で情報を調べて、児童労働の解決に取り組んでいる企業の商品を買ってみる、SNSなどで買ったことを伝えてみる。こうした「応援」こそが必要ではないか。
もちろんそれは一手間かかるし、「意識が高い」ことかもしれない。
それでも「買い物」というのはそもそも、こうしてワンクリックではないひと手間をかけてやることだったのかもしれない、と思う。
「ハフライブ」スタッフ:
岩井建樹、中村かさね、吉田遥、松原一裕、湯浅裕子、中田麻弥、山本美雪、南麻理江