フォロワーの存在が「社会を変える」。

社会を良くする様々な活動に賛同することの意義について記したいと思います。

 私たちNPO法人グリーンバードは、このたび原宿のど真ん中に、寄付をはじめるコミュニティスペース「subaCO」をオープンさせました。地域で活動する人やNPOなどが集える場とするとともに、来場者が携帯電話の充電をするだけで気軽に寄付できる仕組みを整えています。そこで今回は、社会を良くする様々な活動に賛同することの意義について記したいと思います。

日本市場は、世界に比べてかなり小さい!

 日本のNPOが抱える問題としてよく言われるのが、資金調達のしづらさです。主な収入源は寄付ですが、日本の寄付市場はアメリカなどと比べて、まだまだ小さいという現状があります。日本ファンドレイジング協会によると、2016年におけるアメリカの個人寄付総額は30兆6,664億円、イギリスは1兆5,035億円でした。それに比べて日本は7,756億円(法人の寄付は7,909億円)。6,736億円の韓国に比べるとわずかに高いものの、名目GDP比では、韓国が0.50%に比べて日本は0.14%となり、相対的には低くなっています。

 そもそもの原資が少ないため、当然、日本のNPOは一般に資金的に潤沢ではなく、それに伴って、NPOで働く人の平均年収も低くなっています。独立行政法人労働政策研究・研修機構が2014年に行った調査によると、正規職員の平均年収は260万円程度となっており、400万円超の一般企業と比べると、かなり少ないことがわかります。NPOの年収だけでは家庭を養うことが難しく、従ってNPOの正規職員は若年であることが多いのです(平均年齢が低いことが、平均年収の少なさに影響しているという見方もあります)。アメリカの就職人気ランキングの上位にNPOが来るのに比べて、日本ではそうでないのは、こうしたところにも一因がありそうです。

 近年では、「クラウドファンディング」などの個人から資金を集める仕組みが普及したり、休眠預金の活用や「社会的インパクト投資」など、新たな資金調達の流れがNPOに生まれたりしています。とはいえ、「課題先進国」とも言われる日本において、社会課題を解決する役割を担うNPOにより資金を集めるためには、こうした現状をより多くの人に知ってもらい、社会をよくする活動にきちんとした資金が行き渡り、職員にきちんとした給与が支払われる必要があります。

「挙手、握手、拍手。」

 東京大学・慶應義塾大学の教授でグリーンバードの監事もやっていただいている鈴木寛さんに以前教わった言葉があります。それは、「挙手、握手、拍手」というものです。起業したり、企画をはじめたりと、とにかく一番に手を挙げる人が「挙手」。それに賛同し、そこにいち早く関わる人が「握手」、そして、その趣旨に賛同し、エールを送るのが「拍手」です。最近ではfacebookの「いいね!」文化のおかげで、何か素敵な活動をはじめたら「拍手」がもらえる機会が多くなりました。

 社会課題は、それを解決したからといって儲かるものではありません。ごみ拾いをしても、拾ったごみは売れないし、若者の投票率を挙げる活動をしたからといって、すぐにその対価が得られるわけではありません。それでも、社会をよくするために行動を起こした人は、儲けたいわけではなく、自分が気づいた課題を解決したい一心ではじめています。そのような「挙手」した人を支えるのが、「握手」や「拍手」、すなわちフォロワーの力です。「社会のために」とはじめても、一人でできることは限られています。そのような時、一緒にプロジェクトに関わることを買って出たり、活動を褒めてあげたりすると、はじめた人が前へ行く推進力、また活動を大きくする力になります。

 NPOで言えば、「握手」や「拍手」は、本当によい活動をしているところを残し、そうでないところがもしあれば、淘汰する力ももっています。評価する側が事業をきちんとみて、寄付をすることは、その事業が必要であるという意思を示すことであり、もし思うように寄付が集まっていないNPOがあれば、伝え方の問題はありつつも、ひょっとしたら、その事業は社会に必要とされていないということかもしれません。

日本に寄付文化をつくる!

 とにかく今は、社会活動を評価する側が少なすぎるのが現状です。プレイヤーにいつも同じ人しかいなければ、偏った活動しか評価されないし、本当は社会に必要な活動を行っているNPOに、十分な資金が回っていないかもしれません。参加する人を増やして、多様性を確保して、そして社会に良いことが持続する仕組みづくりが必要です。

 私がいつも意識していることがあります。それは、「2:6:2」の法則です。社会ではだいたい、2割の「意識高い系」と2割の「無気力系」、それに、6割の、誘われたら参加する「潜在的ポジティブ層」でできています。社会意識に関する調査では、「あなたは社会活動に参加したいですか?」という問いに、「すでに参加したことがある」と答える人が2割、「そんなの偽善だ、関係ない」と答える人が2割、「機会があったら参加したい」と答える人は6割となります。グリーンバードでは、この6割の人にいかに参加してもらうかを考えています。機会があれば参加したい6割と、すでに参加している人の2割を足すと8割になり、8割が動けば、社会は大きく変わると思っています。

 グリーンバードは、国内外の86のチームで、ごみ拾いや街の盛り上げに携わる中で、常に参加のハードルを下げることを意識してきました。「握手」と「拍手」を増やす試みとして次に取り組みたいのが、6割の「機会があったらやってみたい」という潜在的な寄付行為への参加者を増やすことです。創業地・原宿にできた新しい拠点「subaCO」で、挑戦したいと思います。

 「subaCO」は、グリーンバードにいつも関わってもらっているコピーライター、デザイナー、エンジニア、そして各地のリーダーに協力してもらい、みんなの力でつくりました。まだ小さく、作成途中の箱ですが、さらに多くの方の力を借りて、一緒に大きくしていければと思っています。まずはぜひ一度、遊びにきてください!

  • subaCOの概要は以下のプレスリリースをご覧ください!
  • subaCOホームページはこちらです。
  • 10/2(火)に横尾が登壇するイベントを開催します。