「ホームレスの人に住む場所を提供せよ」裁判所がロサンゼルス市と郡に命じる

適切な対策を取らなかったことで、多くの市民が家を失い路上で死んでいる――判決は強い言葉でロサンゼルス市と郡を批判しています
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家を失った人々たちのテントが並ぶ、スキッドロウ地区(2021年4月20日撮影)
Robert Gauthier via Getty Images

アメリカ連邦地方裁判所は4月20日、カリフォルニア州ロサンゼルス郡とロサンゼルス市に対し、スキッドロウ地区で暮らすホームレスの人たちに10月18日までに居住場所を提供するよう命じる判決を言い渡した。

スキッドロウはロサンゼルスのダウンタウンにある地区で、アメリカで最も貧しい人々の数が多い場所の一つだ。

110ページにわたる判決で、デヴィッド・カーター判事は「市民の健康や安全は悪化し続けており、 今すぐに命を救う行動が必要なのは明らかだ。LAのホームレス危機を、ロサンゼルス市とロサンゼルス郡は効果的に解決してこなかった。また解決しよういう姿勢も見せてこなかった」と述べた。

具体的な期限を定めた判決

この裁判は、ホームレス問題を解決するための市民団体「LAヒューマン・ライツ同盟」が2020年に提訴した。

同団体は「家を失った人たちが増え続ける危機的状況を、ロサンゼルス郡と市は放置している。そのために1日に3人が亡くなっている」として、市と郡を訴えていた。

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スキッドロウ地区(2021年4月20日撮影)
Robert Gauthier via Getty Images

カーター判事は判決で、適切な対策を取ってこなかったロサンゼルス郡と市を批判。

その上で、スキッドロウ地区で暮らすシングルの女性と子どもに90日以内、家族に120日以内、そして全員に180日以内にシェルターもしくは家を提供することを市と郡に命じた。

判事はさらに、18万5000戸の低所得者用の住宅を含む45万5000戸の住宅を建設できる場所を、10月までに探すことも求めた。

放置されてきたホームレス問題

ロサンゼルスでは、ホームレスの人の増加が大きな問題になってきた。

ロサンゼルスホームレス支援機関によると、2020年1月の時点で、スキッドロウ地区で4662人以上が家のない状態で暮らしていた。そのうち約2500人が大規模シェルターに身を寄せており、2093人が路上生活をしていた。

さらに2020年にロサンゼルス市と郡で暮らしているホームレスの人たちの数は10万7700人で、前年より12.7%増加した。

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ホームレスの人たちのテントの横をカートを押して歩く(2021年2月1日撮影)
FREDERIC J. BROWN via Getty Images

カーター判事は判決で、次のようにつづっている。

「ロサンゼルス市と郡がホームレスの市民に適切な対策を取らなかったことで、彼らは公園やビーチや学校や歩道や幹線道路網以外に、行くところがなくなった。そしてロサンゼルスでは、公園やビーチや学校や歩道、幹線道路網が失われた」

「年を追うごとに多くのロサンゼルス市民が家を失い、多くの市民が路上で死亡している」

ロサンゼルスでは2016年に、家を失った人々のための住宅を作る12億ドルのホームレス住宅債権が住民投票で可決された。

それにも関わらずホームレス問題を解決できていないことを、カーター判事は次のように批判した。

「納税者たちが投票で可決したホームレスの人々のための資金で、腐敗した人々が私腹を肥やした。そしてその間、市はそれを解決しようとしなかった」

「お金はどこに行ったのだ。一体何を成し遂げたのだ」

また、何十年にもわたる人種差別や分離主義の問題も解決してこなかったと判事は指摘している。

「ロサンゼルスのホームレスの多くが黒人だ。2016〜2017年の間、ロサンゼルスのホームレスの黒人の数は22%増えた。しかし同じ期間にホームレスになった白人は7%減った。またロサンゼルスの人種差別は単に黒人と白人の問題ではない。ホームレス人口の35%がラテンアメリカ系住民だ」

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スキッドロウ地区のサインの横を自転車に乗って通り過ぎる人(2021年2月1日撮影)
FREDERIC J. BROWN via Getty Images

シェルターではなく家を

判決の前日には、ロサンゼルスのエリック・ガルセッティ市長が約10億ドルのホームレス対策予算を次の会計年度の予算に含めると発表していた。

カーター判事は、その10億ドルを第三者預託口座で管理することも求めた。

ガルセッティ市長は判決について「前例がないものだ」と述べ、180日で家を提供するのは難しいという懸念を示した。

「これは明らかに、前例のない速さです。ロサンゼルスだけではなくアメリカ全体でのホームレス問題の解決として、このような判決を見たことがありません。(カーター判事と)同じように勇敢さと野心的を持ちたいですが、単にシェルターを提供するのではなく、家を提供するということなのですから」と、ガルセッティ市長は弁明した

またロサンゼルス郡の代理人を務めるスキップ・ミラー弁護士は、判決は原告の要求をはるかに上回るものであり、郡は控訴も検討すると述べた

一方、人権擁護団体などはこの判決を歓迎している。しかし判決が「シェルターもしくは家」と定めているところに懸念を示しており、一時的なシェルターではなく、永住できる住居を提供するよう求めている。

人権や貧困の問題に取り組む「ロサンゼルス・コミュニティ・アクションネットワーク」は声明で「シェルターがホームレス危機を救う解決ではないと私たちはよく知っています。シェルターでは、この問題のそもそもの原因である制度化された人種差別は解決できません。市のリーダーたちはカーター判事の言葉を、人種差別システムを解体するよう求めるものだと受け止めて欲しい。そして緊急シェルターを増やすのではなく、本物の家を提供して欲しい」と述べている。

ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆しました。