ほっともっと元店長に残業代支払い命令 「名ばかり管理職」は「やりがい搾取」と原告側が批判

弁当店「ほっともっと」の店長は、経営者なのか――。

弁当店「ほっともっと」の店長は、経営者なのか――。

30代女性の元店長が、最大で月106時間を超える時間外労働を強いられたのに、いわゆる「名ばかり管理職」で残業代を支給されなかったとして、「ほっともっと」を展開する「プレナス」(本社:福岡市)を相手取って未払い残業代の支払いなどを求めていた裁判で、静岡地裁は2月17日、計約160万円の支払いを命じた。

飲食店チェーンの店長が、実際には裁量権が限られているのに、本社から「管理監督者」とされて残業代を支払われず、低賃金労働を強いられるケースは、2008年1月に日本マクドナルドの元店長が起こした裁判が注目されたが、対応が改善されていない企業の存在が浮き彫りになった。

判決文などによると、女性は2012年7月に正社員として入社し、4カ月の研修後に静岡県内の店舗に店長として配属された。アルバイトのシフトの穴埋めや突発的なクレーム対応などで、労働時間は最も多い月で280時間に上り、体調を崩して翌年9月に休職した。

しかし、同社は店長を、経営者的な立場にあるため労働基準法が適用されない「管理監督者」として扱っていた。女性側は2014年5月、静岡地裁に労働審判を申し立て、同地裁は店長が「管理監督者に当たらない」と認めて残業代など約120万円の支払い義務を認めたが、プレナスが異議を申し立てたため裁判で争われることになった。

■店舗の経営者か、やりがい搾取か

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日本マクドナルドのケースでは、店長の裁量権が限定されていたことを認め、元店長に残業代の支払いを命じた。今回も争われたのは、末端の店舗の店長が、経営者的立場の「管理監督者性」があるかだった。

裁判で被告のプレナス側は、店長が店舗の経営者であり、残業代を支払う必要はないと主張した。

しかし判決は、店長にパートの採用やシフト、勤務表を作成する権限はあったが、パートの解雇や店舗の予算、独自メニューなどの決定権は本社が握っていた。また、店舗運営は複数のマニュアルによって細かく定められていた。また、パートの急な欠勤などで公休に出勤することもあったとして、自由裁量で労働時間を決められる立場になかったと認めた。

女性の収入は、年収に換算すると約320万円となり、業界平均(約466万円)を大きく下回っていたことから「管理監督者に応じた高い待遇を受けていたとは認めることはできない」とも指摘した。

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判決後に東京の厚生労働省クラブで記者会見した原告側の鳥飼康二弁護士(写真左)は「実質的に勝訴」と評価した。裁判でプレナス側の正社員の約8割が「管理監督者」として扱われていることが分かったとして、「本来『管理監督者』が想定しているのは役員の一歩手前の人。店長は自尊心をくすぐられて頑張りすぎる。一方で賃金は低く抑えられる。特に飲食店における『やりがい搾取』の風潮は改める必要がある」と訴えた。

女性は弁護士を通じて「3年近くたたかってきて、裁判所に認めていただきました。この判決を機会に、被告には、ほっともっと店長の労働条件を改善していただきたいです」とコメントを出した。

プレナスの広報担当者はハフィントンポストの取材に「判決文が届いておらず、現段階でコメントは差し控えたい」と話した。