地域医療構想と機能分化から、世界で勝負できる病院を

変化する医療ニーズと地域医療構想
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gyro via Getty Images

・ニーズに合わせて医療の方向性を変えていく

Communicable DiseasesからNon-Communicable Diseases(WHO)の歴史に言及する間でもなく、医療のニーズは時代と共に変わっていきます。日本でも超高齢化社会の到来とともに医療のニーズが急性期医療から慢性期医療へと広がりつつあります。「今回の診療報酬点数改定においてもニーズに合わせて医療の方向性を変えていくことが求められる内容になっている」と日本病院会副会長の島弘志先生はおっしゃいます。

・変化する医療ニーズと地域医療構想

変化する医療ニーズに対応するための地域医療構想会議が全国各地で行われています。地域のニーズはどのようなものなのか、それによって各々の病院がどのような機能を持ち、どの部分を担っていくのか...。それぞれの病院にはさまざまな歴史があり、なかなか一筋縄ではいかない中で機能分化や不足する部分を補う(たとえば、慢性期医療を充実させる...など)ための議論が全国各地で行われています。

地域医療構想の行く先がどのようになるのかについては、日本病院会会長の相澤孝夫先生は「高度な医療を提供する広域型の病院と地域医療と住民の健康を守る近隣型の病院という大きな分類に加えて疾患特異的ないわゆる専門病院、回復期リハビリテーション病院のような病期特異的な病院」という絵を描かれています。日本慢性期医療協会会長の武久洋三先生は「地域包括ケア」「回復期リハビリテーション」「高度慢性期」「障害者」の各病床を有する「地域多機能型病院」という表現をされています。病院の機能が大きく広域型と近隣型に分かれていくことが考えられています。

・二次医療圏を超えて世界で勝負できる病院を

地域医療構想はときに「人口減少と医療のダウンサイジング」という考え方だけがクローズアップされてしまうことがあります。もちろん、それも重要な側面です。しかし、近隣型の病院やかかりつけ医が地域の土台を作り、機能分化を進めることで急性期病院ではさまざまな業務の効率化と生産性向上が実現されます。その先にあるのは二次医療圏を超えて広域、さらには世界で勝負できる病院の出現です。

実際の例としては58床ながら甲状腺医療に特化し、2016年には甲状腺に関連する英語論文を年間57本出した兵庫県神戸市の隈病院です。甲状腺に関する論文数ではメイヨー・クリニックを抜いて世界第3位、院長の宮内昭先生は国際内分泌外科学会理事長に就任されます。

隈病院はいわゆる広域型の急性期というよりは疾患特異型の専門病院ですが、世界で勝負している病院の好例でしょう。また、急性期や専門病院だけに限った話ではありません。生産性向上により地域多機能型病院もシステムの輸出など、さまざまな形で世界と勝負できる可能性を秘めています。

※参考記事

メディカルノートでは日本病院会副会長/中央社会保険医療協議会委員の島弘志先生(聖マリア病院院長)にインタビューさせていただいた「2018年診療報酬改定から地域医療構想を考える〜良質な医療構築に向けて」を4月16日に公開(https://medicalnote.jp/contents/180413-002-TX)しました。こちらもぜひ御覧ください。

【執筆/インタビュー】

井上祥(メディカルノート共同創業者・取締役/医師・医学博士)

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Medical Note

2009年横浜市立大学医学部卒。横浜労災病院初期研修を経て2011年より横浜市立大学大学院医学教育学・消化器内科学、2015年3月に医学博士。一般生活者の医療リテラシー向上と「医師と患者をつなぐ」を理念に株式会社メディカルノートを創業。Medical Noteは2018年7月時点で月間1000万人を超えるユーザー、47000のFacebookフォロワーを持つ日本有数のオンライン医療情報プラットフォームに成長し、Yahoo!と業務提携。2008年北京頭脳オリンピック"WMSG"チェス日本代表。日本医療機能評価機構EBM普及推進事業運営委員。NPO法人医療の質に関する研究会理事。東京都医学総合研究所客員研究員。横浜市立大学医学部非常勤講師。