香港デモ、中国から称賛と反感 「第2の天安門」と警戒も【傘の革命】

香港で数万人が参加する民主化要求デモ。中国本土から香港を訪れている人たちは、称賛と反感が入り混じった思いで状況を見つめている。
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Reuters

[香港 1日 ロイター] - 香港で数万人が参加する民主化要求デモは、1997年の英国からの返還以来で最大規模となる中、中国本土から香港を訪れている人たちは、称賛と反感が入り混じった思いで状況を見つめている。

北京から観光目的でやってきたという29歳の女性は「人生で初めて政治を身近に感じた」とし、「これは香港にとって歴史的瞬間だ」と語った。中国は1日からの国慶節(建国記念日)の連休に入り、香港にも本土から多くの旅行者が訪れている。

この女性は、デモの様子を映した写真を友人たちとシェアし、インターネットにも投稿する予定だという。「最初はかなり怖かったが、今はデモを強く支持している。いつの日か、中国(本土)でもこうしたことが起きると信じている」と語った。

ただ、それはまさに中国政府が避けたいことでもある。共産党指導部は、民主化要求の声が本土にも広がることを警戒しており、香港のデモに関するニュースやソーシャルメディアでのコメントを厳しく検閲している。

今回のデモは1997年の香港返還以来で最大規模となっただけでなく、中国政府にとっては、1989年の天安門事件以来で最大の政治的難局となっている。

四川省の成都から来たという20代半ばの女性は、天安門事件は幼かったため記憶にないと話す。また中国では「愛国主義教育」により、若者の多くが天安門事件などの反政府デモについて限られた知識しか持っていない。

女性は「こういった運動を目にするのは初めて。現場は非常に整然と統制が守られている。思っていたような混乱状態とは違う」と印象を口にした。

<「第2の天安門」を警戒>

今回のデモは中国政府に対し、2017年の香港次期長官選挙で完全な民主的選挙を実施するよう求めており、梁振英・現行政長官の辞任も要求している。

中国政府は香港には「一国二制度」の原則を適用し、本土では見ることのできない自治と自由を与えているが、今回のデモは違法行為だと非難。本土から訪れている人たちの中にも、法律を破るのは正しいやり方ではないという意見はある。

香港科技大学の博士課程で学ぶ男性は「彼らの要求は支持するが、目標を達成するための過度に強引な行動は支持しない。法を犯すのは良くないことだからだ」と述べた。

また、中国政府から受けた恩を忘れた香港の住民に幻滅したとの声も聞かれる。

広東省の深センから買い物目的で1日に香港入りしたという女性は、デモ隊が民主的選挙を求めるのは「本土に対して礼を欠く行為」だと非難。「中国政府は香港に大きな発展をもたらしたにもかかわらず、彼らはそれを認めていない」と憤りを見せた。

中国国民の多くは、天安門事件での政府の厳しい弾圧姿勢に衝撃を受け、何十年に及ぶ共産党政権下での不安にも疲れ、革命的大衆運動という考えにはためらいを感じている。

本土育ちで現在は香港で慈善団体を運営している女性は、今回のデモが暴徒化した場合、中国政府が強硬な手段に訴える可能性があると警戒する。

「共産党にはそれを実行する力がある。これまでも見てきたし、また繰り返されるだろう。もっと根の深い問題があり、それを正すには何世代もかかる。1つのデモでは解決しない」と語った。

(Donny Kwok記者、Yimou Lee記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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