なぜ“うんちオムツ”を保育園から持ち帰らなければいけないのか

厚労省は何を考えているのか
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(写真はイメージ)
Getty Images/iStockphoto

保育園の使用済みオムツは、保護者が持ち帰るのか。それとも保育園で処分するのか。

あるツイートをきっかけに、ネット上で議論が巻き起こっている。

ツイートをしたのは、フランス在住のライターで、『フランスはどう少子化を克服したか』の著者の髙崎順子さんだ。8月29〜30日の24時間、Twitter上でアンケートをとり、ダイレクトメッセージで意見を募った。

この結果を見ると、公立や私立、認可や認証、認可外といった園の区分に関係なく、保育園での使用済みオムツ持ち帰りが実施されていることがわかる。

自治体や園によって対応は様々だ。NHKニュースによると、練馬区は認可保育園は「オムツ持ち帰り」としており、渋谷区はそれぞれの保育園で使用したオムツを処分している。保護者が月に数百円を自己負担して園内で処分するケースもあるようだ。

保育園のオムツについて、その実態や目的をまとめた。オムツの処分費用は、本来どこが負担するものなのか。厚生労働省の回答と合わせて紹介する。

子どもの着替えだけでなく、おしっこやうんちを吸収して重くなったオムツを、毎日仕事帰りに持ち帰るのは、保護者にとっては大きな負担だ。夏は、においもキツく、帰りにスーパーに寄ることもできない。

保育士にとっても、毎日うんちのついたオムツを小袋に入れて密閉して、子どもごとに仕分けして保管するのは、大きな負担となっている。

髙崎さんの調査でも、「うんちの付いたまま新聞紙やチラシで包装した上で小袋にて個別包装後、大袋に保存・返却」「うんちをこそぎ落とした状態で丸め、小袋にて個別包装後、大袋に保存」など、複雑な保管の実態が寄せられた

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Tomaz Levstek

そもそも、オムツ持ち帰りは何のためなのか。

髙崎さんによると、もともと保育園では布オムツが使用されていたため、布オムツは衣服と同じように、児童が家庭から持参する「私物」だったことが、オムツ持ち帰りの運用の背景にあるという。

自治体によっては、オムツを持ち帰る理由を「排尿の回数や便の状態から、子どもの健康状態や体調を知ってもらうため」としている。認可外の私立園では、「使用済みオムツは産業廃棄物に当たり、処分費用がかかる」「廃棄まで数日間、園内で保管することを考えると、衛生面で問題がある」といった背景もあるようだ。

一方で、感染対策の点からも、国立国際医療研究センターの看護師である堀成美さんは「オムツを複数の人の手に渡らせるのは本来避けなければならず、感染対策の点からも持ち帰らせることは望ましいものではない」とNHKニュースで指摘している。

現在、使用済みオムツは、家庭では一般のごみとして処分できるが、保育園では企業が排出する紙くずなどと同じ「事業系一般廃棄物」となり、処分費用が発生するとされている。

ここで一度考えたいのが、「保育園でのオムツの処分費用は、保育園の運営に必要な費用に含まれるのか」ということだ。そもそも国が定める「公定価格」(保育所運営に必要な費用)に含まれているのであれば、オムツは園内で処分されるべきだろう。

公定価格は、国からの補助金と利用者負担によってまかなわれており、足りない場合は、保護者の同意により実費や上乗せで費用を徴収できる。

保育所内での大便や小便の処理(使用済みオムツを含む)は、厚労省の定める公定価格に含まれているのか。厚労省の子ども家庭局保育課担当官は、以下のように回答した。

ご質問の件についてですが、まず、公定価格でのおむつの処理費用の取扱いについて、公定価格上は、明確におむつの処理費用として含まれてはおらず、処理費用は実費徴収によるものと考えております。

ただし、一般のごみの処理費用は公定価格上の管理費に含まれております。 実情に応じて、一般のごみの処理費用とともに管理費で賄うことができる場合に、実費徴収を行わずに園側で支出することも差し支えありません。

つまり、「オムツの処分費用」は公定価格には含まれていないが、オムツを含む「一般ごみの処理費用」の管理費は公定価格に含まれている、ということだ。

これに対し、髙崎さんは、「一見論理的なようですが、衛生面の配慮は完全に抜け落ちている」として、ハフポスト日本版にコメントした。

「使用済みオムツは、ただの"ごみ"ではなく、"菌を含んだ排泄物"です。とくに、大便は感染病の拡大する危険をはらむ"感染源"です。経営・経理ではなく衛生の観点から考察した場合、身体的に脆弱な乳幼児の生活する保育所で、感染源である使用済みオムツの処理が、保育所運営に必要と考えられておらず、明確に公定価格に含まれていないことには、やはり衝撃を受けます」

「(布オムツが主流だった頃と)時代は変わっており、保育所の多くが使い捨ての紙オムツを用いているいま、この点に関する公定価格の規則・運用も、改定されてしかるべきです」

好んでオムツの持ち帰りを希望する保護者はいない。二児の母である髙崎さんは、フランスの保育園に手ぶらで登園している。日本の友人たちがオムツを持ち帰っていると知って「涙が出た」という。

多くの乳幼児が生活する保育園の衛生環境や、不足する保育士の負担軽減、共働きの子育て世代の実情をふまえて、オムツの園内処分の運用のルール化が期待される。