「ヒトラーは化学兵器を使わなかった」スパイサー報道官の発言から蘇る、アメリカとユダヤ人難民の過去

奇妙な論理であり、不適切な比較だった。
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ホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官は4月11日、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領はドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーよりも卑劣で、「ヒトラーは化学兵器を使用するほど卑劣ではなかった」と主張した

これは奇妙な論理であり、不適切な比較だった。ヒトラーのナチス・ドイツは、明らかにガス室で化学兵器を使用していたし、現在アメリカがシリア難民の入国を拒否しているのと極めて似たやり方で、一部のユダヤ難民が第二次世界大戦中アメリカから入国を拒否され、ガス室で命を落とした。

スパイサー長官は11日、ホワイトハウスでの定例記者会見で、シリアで再び化学兵器による攻撃が起きたことについて、「ヒトラーのような極悪人でも化学兵器を使用するほど卑劣ではなかった」と発言した。4日の化学兵器の攻撃では、少なくとも72人が殺され、400人が負傷した。

ヒトラーはガス室で数百万人ものユダヤ人やその他の人々を一掃しようとした。当時のフランクリン・ルーズベルト政権は国の安全保障を脅かす存在とみなし、ユダヤ人の入国を拒否した。

1939年5月13日、ほぼユダヤ人で占められたおよそ1000人の難民は、セントルイス号というドイツからの船に乗ってマイアミから入国しようしたが、アメリカは拒否した。当時の難民のうち200人以上が、のちにホロコーストで命を落とした。また、2万人のユダヤ人児童難民を受け入れる法案がアメリカ議会の承認されなかった。ホロコーストが終わってようやく、アメリカは道義的責任としてユダヤ人難民に対する援助を検討するようになった。

ユダヤ人難民やシリア人難民を受け入れない決断はいずれも、「アメリカ・ファースト」の考え方が基になっている。第二次世界大戦への参戦に反対するスローガンとして考え出されたもので、当時影響力を持っていた反ユダヤ主義者が発案した。トランプ大統領の選挙運動では「アメリカ・ファースト」のスローガンが復活し、世界中で何よりもアメリカの利益を優先させようとする目標を掲げるために使われた。

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セントルイス号に乗ったユダヤ人難民が、キューバにいる友人や親戚と交信しようとする姿。キューバ側の人々は、小さなボートに乗って停留中のセントルイス号の難民に近づくことを許可された。難民の下船は許可されていなかった。UNIVERSAL IMAGES GROUP VIA GETTY IMAGES

トランプ氏は、シリア人難民に対し厳しい発言を繰り返している。しかしトランプ氏は、「苦境に立たされた彼らこそが、シリアの空軍基地に攻撃を仕掛けるよう考えを改めさせてくれた」と発言している。

トランプ氏は大統領選でイスラム教徒の入国禁止を公約に掲げ、トランプ政権はアメリカに安全な避難先を求めるシリア難民を2度にわたって阻止しようとしている。どちらの入国禁止の大統領令も連邦裁判所から一時差し止めの処分を受けており、少なくとも今のところは、難民は入国できる状態になっている。

しかし、未だに危険な状況にさらされている多くの難民は、アメリカへの入国審査が降りるまでに数カ月、数年も待たされるかもしれない。

歴史的に見ると、アメリカの難民再定住数は世界1位だ。しかし、合法的な難民の再定住数は第二次世界大戦以降の数よりも多いが、世界的な難民の総数のごく一部に過ぎない。国連によると、現在では約6500万人の人々が国外退去させられており、外国に住む難民は2100万人に上るという。

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