「笑ってはいけない」浜田の黒塗りメイクが物議 黒人作家が語った不安

オリンピックで「やらかすんじゃないかって真剣に不安だ」
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日本在住の黒人作家、バイエ・マクニールさんは「ガキの使い!大晦日年越しSP絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!」(日本テレビ・2017年12月31日)の画面を撮影し、「#日本でブラックフエイス止めて」とTwitterに投稿した。
Baye McNeil

年末恒例のお笑い番組「笑ってはいけない」シリーズ。大晦日「紅白歌合戦」の裏番組でありながら、今年も視聴率17.3%を誇った。もはや「国民的な」お笑い番組だ。

2017年のテーマは「アメリカンポリス」。ダウンタウンの浜田雅功が、肌を黒くメイクして登場した。テロップではエディ・マーフィ主演の映画「ビバリーヒルズ・コップ」の説明が流れた。

番組がTwitterでこう投稿すると、「面白い」「めっちゃ笑える」という反応が相次いだ。

一方で、複雑な思いを抱えながら、このシーンを見ていた人たちがいる。

バイエ・マクニールさんは、こんな風に、強い言葉で「ブラックフェイス」(黒塗りメイク)に反対した。

マクニールさんは、アメリカ・ニューヨークのブルックリンに生まれ育ったアフリカ系アメリカ人だ。2004年に来日して以来13年間、横浜に暮らし、作家・コラムニスト・教師として活動している。

日本をよく知り、「日本大好き」と公言する彼が、なぜこうした声を上げたのか。フェイスブックで連絡をとり、詳しく聞いた。

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ベイ・マクニールさん
Baye McNeil

マクニールさんに、まず、あのシーンを見てどのような気持ちになったのかを説明してもらった。

《どんな気持ちかって? とても複雑な気分ですよ。日本社会は、世界がブラックフェイスについてどんな議論をしているか、きちんと見てこなかったように思えます》

アメリカでは1800年代以降に、顔を黒く塗った白人が、黒人役を演じる「ミンストレル・ショー」が人気を博した。しかし、「人種差別的だ」とされて廃れ、いまではすっかり「差別だ」という評価が定着している。マクニールさんが指摘するのは、そのことだ。

《私の気持ちは半々です。

半分の私は、日本のテレビコメディーや音楽でブラックフェイスを見るたび、見下されたような、馬鹿にされたような、そして表面だけを見られて、人間性を否定されているような気分になります。

私の肌の色が、私自身の人間性が、芝居の小道具、あるいは脚本にされたかのように感じるのです。

しかし、もう半分の私は、『彼らは子供で、わかっていないだけ。だから我慢しなきゃ』とも思うのです》

マクニールさんは、こんなふうに思ってしまうこと自体が「つらい」のだと話す。

《敬意を持って、一緒に生きていこうと決めた日本の人たちに対して、このような感情を抱いてしまうのは、つらいことです。》

日本でもダメ?

ネット上では、日本のお笑いと、アメリカの人種差別とでは、文脈が違うのではないかと感じる人もいるようだ。日本でも「ブラックフェイス」はダメなのだろうか?

《ブラックフェイスが、なぜ悪いかって?

それは、これが、多くの日本人が海外の歴史を知らないだけでなく、自分自身の歴史も知らないことを示しているからです。

多くの日本人は、日本人が顔を黒く塗ったとしても、日本にはアメリカの人種差別の文脈や歴史がないので、問題ない、害がないのだと言うでしょう。

しかし、実はアメリカの歴史とは別に、日本でもブラックフェイスの歴史はありました》

《それ以来、現在に至るまで、エノケン(榎本健一・日本の喜劇王)ら、多くの日本人コメディアンやミュージシャンがブラックフェイスをしてきました。シャネルズ(※1980年代に活躍)やゴスペラッツ(※2005年〜06年、2015年夏に再始動)のずっとずっと前からのことです。だから、知らなかったという言い訳、日本にはブラックフェイスの歴史がないという言い訳は通用しない。ダメなのです》

最悪のシナリオ

ところが最近まで、日本では「差別の文脈」が特に意識されてこなかった。その問題点を、マクニールさんはこう指摘する。

《さらに心配なのが、日本には(改善のための)時間があまり残されていない点です。日本を愛し、日本のために最善を尽くそうと思っているすべての人たちにとって、最悪のシナリオは2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、ブラックフェイスは差別じゃないという態度を貫いてしまうことです。

もし、オリンピック・パラリンピックの開会式で、誰かがこのようなブラックフェイスをしてしまったら...。全世界が、日本は人種差別主義、あるいは無知な国だと見なすでしょう。これは取り返しがつきません。

日本は、オバマ元大統領やミシェル夫人から、人種差別主義的な国だと非難されるかもしれません》

過去にも署名活動

ふだんであれば、日本のバラエティ番組は日本国内の文脈だけで消費され、そこに世界の注目が集まることはまずない。しかし、オリンピックのように海外の注目が集まっているときには、話が大きく変わる。来日する人が増える分、日本のテレビ番組をホテルなどで見て、海外に向けてTweetする人もいるはずだ。マクニールさんは続ける。

《このような時、日本の立場を弁護し、こういった見方を打ち消すのは、日本のことをよく知る外国人の役割になるでしょう。でも、こんなことがいつも行われているなら、心から日本のために弁護するようなことができるでしょうか?》

「最悪のシナリオ」が起きる可能性は、どれぐらいあるのだろうか。マクニールさんは過去1週間で3回、テレビ番組で「ブラックフェイス」を目にしたという。

《私は2015年にも、ブラックフェイスを放映しないでください、という運動をしました。このときは5000人近くの署名が集まり、フジテレビはそのシーンの放映を取りやめました。しかし、フジテレビはその理由も説明せず、署名活動を認めることもありませんでした。

実は、このとき集まった署名の大半は日本に住む外国人のものではなく、日本人の署名でした。しかし、日本のメディアは、この署名運動についてあまり報じなかった。そのため、メディアはブラックフェイスを快く思っていないのは外国人だけでない、日本人の中にもそういう考えの人がいるのだということを学べませんでした。これは非常に残念なことでした。貴重なチャンスを逃してしまったのです》

テレビは、どうすればいい?

テレビ側としても、黒人差別をするつもりは全くないはずだ。どうやったら「誤ったメッセージ」を発信せずにすむのだろうか? マクニールさんはこのように話していた。

《この問題を解決する方法は、非常にシンプルです。こういう(黒人が登場する)シーンには、日本語が話せる黒人...できれば日本語が話せる黒人の俳優を起用すればいいだけです》

もしくは...。マクニールさんは皮肉を交えて、こう付け加えた。

《もしくは、番組制作者が「日本人のブラックフェイスは面白いので、黒人を怒らせたとしてもしかたない、それがまさに視聴者が見たいものだ」と考えていることを認めて、その「結果」にも対処することでしょうね》

マクニールさんは横浜に13年も住み、「ラーメンと、温泉と、時間通りに運行する電車が大好き」と話す。その彼ですら、こうした受け止めをした。Twitterでは他にも、日本に住む外国人たちが反対の声を上げていた。もし仮に、こうした番組が何の注釈もないまま海外に中継されたとき、いったいどうなるのか。「ブラックフェイス」表現について、国内でも議論を深める必要がありそうだ。

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