児童相談所の数がドイツの約4分の1しか無いんだから、中核市にも児相設置を義務化しよう

心愛ちゃん事件で、児童相談所の機能不全が再確認されました。しかしこれは「児相職員が頑張っていない」ということではなく、構造的な問題があるのです。
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海外における児童虐待の資料
駒崎さんブログより

虐待防止活動をしているNPO法人フローレンスの駒崎です。

野田市の心愛ちゃん事件で、児童相談所の機能不全が多くの国民に再確認されました。

しかしこれは「児相職員が頑張っていない」ということではなく、構造的な問題があるのです。

 

児童相談所の数自体が少ない

 

これは僕が政府の会議でもらった資料ですが、日本は他の先進国のどこの国よりも、人口あたり児童相談所設置数が少ないことが分かります。

 

日本=60万人に1ヶ所
アメリカ=51万人に1ヶ所(日本の約1.2倍児相数が多い)
イギリス=37万人に1ヶ所(日本の約1.6倍児相数が多い)
ドイツ=16万人に1ヶ所(日本の3.75倍!児相数が多い)

ということで、

児相の職員が忙しいのは、児相の中の職員の数自体が少ないのもありますが、児相の数自体が少ないことで受け持ちエリアが多く、ケースが溢れている、という構図なのが分かります。

 

中核市や23区に設置義務が無い

 

そんな「児相不足」の状況にもかかわらず、児童福祉法には、人口20万人以上の「そこそこ大きい都市」である中核市への児相設置義務は書いていません。

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中核市における児相設置数
駒崎さんブログより

だから、54個ある中核市の中で児相を設置しているのが、横須賀市と金沢市の2つだけ。そしてこれから設置するのが明石市と奈良市の2つ。

54市の中で、4つだけ。

 

心愛ちゃんのケースで見てみると

 

心愛ちゃんのケースの場合、深刻な虐待にも関わらず、恫喝する虐待親のもとに帰してしまった柏児相は、現在は千葉県が管轄しています。

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心愛ちゃんのケースを担当した柏児相について
駒崎さんのブログより

柏児童相談所1個で、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市をカバーしているのです。

ちなみに、それぞれの人口は、

松戸市:48.3万人
野田市:15.3万人
柏市:41.4万人
流山市:17.4万人
我孫子市:13.2万人

で、合計135.6万人です。

先程、「日本では平均60万人に1ヶ所」ということでしたが、あくまで総人口(1億2000万人)を総児相数(212)で割った数値なので、地域によっては135.6万人を1ヶ所でみている、ということですね。

ロサンゼルスの2.7倍、少ないわけです。

柏児相が、あり得ない規模の人口をカバーしていることが、お分かりになったかと思います。

 

もし中核市が児相を持つルールだったら

 

もし、中核市に児相の設置義務があったら。

少なくとも柏市は独自に児相を作らなくてはならないため、千葉県の柏児相がみる人口は、135万人から94万人になります。

ケースは一気に30%削減です。

中核市「並」の自治体にまで必置義務が広げられたら、松戸市も独自に児相を持つことになるので、柏児相のカバー人口は46万人にまで下げられます。66%のケースを削減できます。

つまり、ケースが3分の1になるので、3倍丁寧にみられることになるのです。

 

中核市への設置義務化を求める議連

 

このような状況を踏まえ、心ある議員の方々は、中核市への児相設置を求める行動に正に出ています。

 

千葉・野田の女児死亡:虐待防止 児福法抜本改正、超党派が要求へ
2019/02/13 毎日新聞 

千葉県野田市で小学4年の栗原心愛(みあ)さん(10)が死亡し、両親が傷害容疑で逮捕された事件で、児童虐待防止対策を検討している自民党と超党派の議員連盟が12日、国会内で合同会議を開き、児童福祉法の抜本改正を求める決議を大筋でまとめた。政府が今国会に提出予定の同法改正案に、児童福祉司の国家資格化の検討▽児童相談所(児相)に常勤の弁護士と医師の配置義務付け▽中核市と東京23区に児相を必ず設置する――などを明記するよう求める。

 

この国会議員たちの言う通り、中核市への設置義務化をさせるためには、その分の予算が必要です。当然国は、児相の数を増やすことを、明確に予算化していくべきでしょう。

 

反対する中核市市長たち

 

しかし、こうした中核市への児相設置の声の高まりに対し、当の中核市市長たちの一部が強く反対している、という内部情報を、私はキャッチしました。

理由は、児相を設置するとなると、人材を育てなくてはならないし、採用が難しい。また、お金も非常にかかる。更に何かあった際に、これまでであれば県の責任にできたわけだけれども、市児相になると市が責任の主体になってしまう等など。

本当にこれが反対の理由だとしたら、情けなさすぎて「市長やめろ」と言いたくなります。

(※公平性を期すために、中核市長会の正式な言い分はこちら

「子どもの命を守る」ということにリソースをかけられないのであれば、政治をやっている意味が無い、と僕は思います。

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児童相談所設置に向けた検討状況資料
駒崎さんのブログより

ちなみに、中核市の中で「どうしようかな、やろうかな、とは思っている」というレベルのところも入れて、ここに記載があります。

もしあなたが中核市に住んでいて、ここに名前が無かったら、あなたの住んでいる市は、児相をつくる気がさらさらなく、子どもの命を軽視していると言っても良い政治が行われている可能性が高いです。

ちなみに東京都23区では、22区が児相設置をするか、そのつもりで動こうとしています。え、残り1つはどこだって?

それは是非、あててみてください。

いずれにせよ、皆さん市民がきちんと声をあげ、児相をつくらせましょう。
4月には統一地方選が控えています。

 子どもの命を守る気のない市長や議員には、目にもの見せてください。

 

まとめ

・日本は、児童相談所の数自体が諸外国と比べ自体が少ない

・それもあって、児相の受け持ちケース数が多くパンクしていて、子どもの命を救えていない

・児相の数をもっと増やそう。そして政府はちゃんと金を出そう

・特に人口20万人以上の中核市には児童相談所設置を義務に!

・反対している中核市市長には、市民から抗議を入れよう。選挙に行って、意志を示そう

 

以上、児童虐待防止の現場からでした。

(2019年2月14日駒崎弘樹ブログより転載)