会社に勤めながら、世界中を旅する。「リーマントラベラー」東松寛文さんが勧める「休み方改革」とは

平日は仕事をしながら、週末などの休みだけで「世界一周」をしてしまった「リーマントラベラー」こと東松寛文さん(31歳)。「働き方改革」という言葉が叫ばれる中、彼が提唱するのは「休み方改革」だ。今年6月には「人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革」(徳間書店)も出版した。従来の会社員の枠に収まらない「リーマントラベラー」とは、何なのか。

平日は仕事をしながら、週末などの休みだけで「世界一周」をしてしまった「リーマントラベラー」こと東松寛文さん(31歳)。

「働き方改革」という言葉が叫ばれる中、彼が提唱するのは「休み方改革」だ。

今年6月には「人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革」(徳間書店)も出版した。

従来の会社員の枠に収まらない「リーマントラベラー」とは、何なのか。

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Hirofumi Tomatsu
旅行で訪れたネパールの寺院で、地元の人たちと写真を撮る東松寛文さん(右から2人目)

会社勤めでも59カ国に旅行

「旅人というと、時間などの条件に縛られず自由にあちこち旅をしているイメージですよね。でも、ほとんどの人は仕事や家庭があって、そんなに自由に旅に行けないと思っているはずです」

「でも、趣味として、旅が大好きという人はたくさんいる。仕事をしながら旅ももっと楽しみたい。それを上手に両立するのが『リーマントラベラー』です」

東松さんが週末を利用した「リーマントラベル」にはまったのは、社会人3年目のGW。現在も勤める大手広告代理店で、仕事に忙殺される日々を過ごしていたときのことだった。

そんな日常からふと距離を置きたいと、気まぐれで購入したのが米国で開催されるプロバスケットボールNBAのチケットだった。

「どうせ仕事が忙しくて行けないだろうと思いつつ、チケットを手に入れたら行けるんじゃないか。そんな気分でした。実際チケットを手にしたら、“よし、行くぞ”という気持ちになって、連休に3泊5日でロサンゼルスに飛び立ったんです」

初めての一人旅。英語も全然話せないという東松さんだったが、ロサンゼルスのスタジアムを訪れたときに、人生観が大きく変わったという。

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東松さんがロサンゼルスで訪れたスタジアム

「平日の昼間なのに、大の大人たちが見に来て、ビールを飲みながらワイワイやっている。日本では信じられない光景ですよね。ああ、この人たちは、人生を楽しんでいるなあ、って。それまでの自分の生き方とは全然違う人生が、世界にはたくさんあると思い知りました」

平日はすべて会社に捧げ、休日は疲れ切った体を癒やすだけ。そんな自分とは全然違う生き方が、世界にはあふれている。

「そんな生き方をもっと知りたい、見てみたい」

そんな思いがふつふつと湧き上がり、ロサンゼルスの次は3連休で韓国旅行へ。週末や連休になると旅に出かけるようになり、2016年には3カ月間で5大陸、18カ国を制覇。これまで7年間(8月15日現在)で59カ国125都市を訪れた。

それもすべて会社勤めをしながら、だ。

「あくまでも仕事が本業で、旅は趣味。旅に出るのは、週末や連休、夏休みや正月休みが基本です」

そんなユニークな旅のスタイルが注目され、東松さんは旅のプロとして、メディアでも多く取り上げられるようになる。

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2016年には3か月間で5大陸18か国を制覇した。写真はコンゴでの1枚

最も印象的だったキューバ

旅で人生が変わった──。

そう語る東松さんにとって、最も印象深い旅は、2015年に訪れたキューバだ。日本から遠く離れた社会主義の国。

そこで出会ったのは、日本でも忘れられてしまったような、無名の人々の心に宿る「おもてなし」だった。

「女性の荷物を持って上げたら、お返しに自宅でごはんをごちそうしてくれて、ダンスまで楽しんだり。雨上がりで泥だらけになった僕の靴を見て、全然知らないおばさんが靴を洗ってくれたりもしました。チップを渡そうとしても、みんな、“そんなものはいらない”と受け取らない。日本より貧しい国ですが、心の豊かさはキューバの人たちのほうが勝っていますね」

これこそが、東松さんが旅に求めるものだ。

「世界遺産を見て歩く旅ももちろんいいですが、僕は、旅を通して自分が知らない生き方に触れて、そこから自分をもう一度知ることができる。そんな体験ができる旅がしたいんです」

「次の角を曲がったら」というドキドキ

会社勤めをしていることが、旅に行けない理由にはならない。そんな足かせを外したら、どんどん「自分軸」で人生を生きることができるようになった、という東松さん。

「旅先では、全部、自分で決めないといけないので、自分がどうしたいのかがよくわかる。そういう経験を重ねていくと、自分らしく生きられるようになるんです」

旅の非日常は、忘れていた五感を思い起こさせてもくれる。

楽しい、うれしい、悲しいなど喜怒哀楽も、はっきり感じられるという。それは、周りの景色も見ずにいつも時間を気にして通勤する毎日では得られないものだ。

「旅をしていると、次の曲がり角を曲がったら何があるんだろうと、ドキドキ、ワクワクする感覚を味わえます。そういう体験をたくさんした帰りの飛行機は、旅を振り返りながら自分を見つめ直す貴重な時間ですね」

旅好きの仲間、集まれ

東松さんは朝日新聞社のA-portオンラインサロンで、「リーマントラベラーサロン」を主宰している。旅好きな人が集まる会員制のコミュニティだ。

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サロンのイベント参加者と記念撮影

月会費の4000円は、飲み会1回分に相当するものとして設定した。義理で参加する飲み会を1回やめて、旅を、そして人生をもっと楽しくしてもらえたら、という。

東松さんが発信する旅の魅力に惹かれて、40人以上の会員が集まっている。20〜40代が中心だが、50代のメンバーも。職業も様々だ。

毎月1回、飲み会やBBQ(バーベキュー)開催したり、地方でもミートアップを開催したりするなど、リアルなつながりも重視。

また、オンラインサロン限定で「リーマントラベラーと一緒に行く海外ツアー」も企画している。直近では、9月末に韓国・済州島に行く予定だ。

 他にも、みんなで一枚ずつ旅の写真を持ち寄って、「“とっておきの一枚”写真展」というイベントをしたり、旅好きなメンバーのいつか行きたい場所を集めて「バケットリスト」を編集したり、リレー形式のコラムをnoteで連載したりと、旅にまつわるイベントや企画が目白押しである。

「みんな、旅で人生を楽しみたいという価値観が同じ。“旅”という共通の趣味を通して、まるで大学時代の仲間のような関係性が築けています」

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2019年3月に実施した週末台湾ツアー

新しい旅のスタイルが、新しい人生の扉に

リーマントラベラー初心者には、土日の2日間なら台湾、韓国。3連休ならベトナム、タイ、シンガポール、オーストラリアあたりがオススメという。

「初めての週末海外一人旅なら、台湾がおすすめですね。短期間で一人でも十分楽しめます。治安もいいから、女性の独り歩きも安心です。そして、LCCを利用すれば、東京からは往復20,000円前後で購入することも可能ですから、国内旅行よりも旅費が安かったりもします。ですから、まずはお試しで、台湾で週末海外一人旅デビューをしてみては?」

平日は仕事のリーマントラベラー。それは、これまでとは違う、新しい人生への扉になるかもしれない。

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「リーマントラベラーサロン」は、会員を随時募集している。詳細はこちら

(取材・執筆=工藤千秋)