歴史上優れた功績を残しながら、男性の影で評価されてこなかった女性にハイライトを当ててーー。
広告を出したのは、蛍光ペンなどを販売するドイツの文具メーカー・スタビロ。広告は、全部で3パターン。モノクロ写真の中心に写るのは、いずれも男性たちの姿だ。しかし、写真の中心から少し目を外すと、黄色の蛍光ペンでマークが…。そこには「女性の姿」があったーー。
写真の上には小さな文字で、“Highlight the remarkable(偉大な女性にハイライトを当てて)”から始まるキャプションが添えられている。そのあとに、女性の名前と彼女の功績についての説明が続く。
3人の女性はそれぞれ素晴らしい功績を残したが、「女性であるがゆえに」当時は正当な評価をされなかった。
体が不自由になった大統領の代わりに極秘で国を支えた妻
偉大な女性に光を当ててーー。エディス・ウィルソン
ファーストレディー。彼女は、夫(第28代アメリカ合衆国大統領 ウィドロウ・ウィルソン)が脳卒中で左半身不随になったあと、極秘で彼の職務を行なった。(キャプションの日本語訳)
正当に評価されなかったが、原子力研究に多大なる功績を残した物理学者
偉大な女性に光を当ててーー。リーゼ・マイトナー
核分裂反応の発見者。彼女の共同研究者の男性はノーベル賞を受賞した。(キャプションの日本語訳)
「黒人で女性」という差別の下で…映画『ドリーム』でも描かれた数学者
偉大な女性に光を当ててーー。キャサリン・ジョンソン
NASAの数学者。彼女は、軌道計算を担当しアポロ11号の地球への安全な帰還に貢献した。(キャプションの日本語訳)
広告が「歴史の物語」をも捉え直すきっかけに
広告のアイディアはどのようにして生まれたのか。広告を作成した広告代理店 DDB デュッセルドルフ支店(ドイツ)に取材した。
蛍光ペンは、重要なことを目立たせるために使われています。文章のなかの、キーワードや重要な一文などを。
広告を作るにあたって、私たちはペンをこうした実用的なものとしてではなく、人々の感情に訴えるものとして表現したいと思いました。ペンそのものについての広告ではなく、社会への問題意識を表現する広告として。
歴史上、女性たちは舞台裏に追いやられ、彼女たちの業績や成功はほとんど語られてきませんでした。だからこそ私たちは、女性と彼女たちの功績に値する「ステージ」を与えたかったのです。
写真の中では、最前部や中心にいるのは男性たちです。しかし、蛍光ペンによって、これまでは目立たなかった女性たちに今「焦点」を当てることができました。
「広告を通して伝えたいメッセージ」については、次のように答えた。
広告を通して、みなさんがいままで「誰にスポットライトを当ててきて、誰を見逃してきたのか」を考えて欲しいです。
現在、広告は#highlighttheremarkableというハッシュタグで Twitter上で大きな話題になっている。「素晴らしいコンセプト」「印象に残る、強いメッセージ」「考えた人、天才。鳥肌が立った」など、広告への賞賛の声が相次いでいる。
DDBは、こうしたTwitter上の反応に対して喜びのコメントをした。
私たちの広告をきっかけに、ソーシャルメディア上で、(広告では取り上げていない他の)偉大な功績を残した女性たちを取り上げ、彼女らを賞賛する動きも生まれています。広告が、「歴史の物語」を変えるきっかけになっていることをとても嬉しく思います。