現役最年長の棋士、加藤一二三(ひふみ)九段(77)が6月20日、「第30期竜王戦」ランキング戦6組で高野智史四段との対局に臨んだ。この対局に勝てば、自身の持つ史上最高齢勝利記録を更新(77歳5カ月)するが、敗れれば即引退となる。
加藤九段は1月19日、棋士の序列を決める「名人戦」の順位戦C級2組からの降級が確定。定年規定により今期限りでの引退が決まっているが、予定される公式戦の全対局が終わるまでは現役扱いとなる。加藤九段に残された公式戦は、現在対局中の「竜王戦」ランキング戦6組の対局のみ。一つ格上の「5組」に昇格する棋士を決めるトーナメントのため、20日の対局に敗れた時点で63年間におよぶ現役生活に幕を降ろす。
加藤九段は午前9時45分ごろ、紺色のスーツにブルーのネクタイ姿で東京・千駄ケ谷の将棋会館に到着した。
朝日新聞デジタルによると、加藤九段は対局室に入り、「口を真一文字に結び、険しい表情で上座に座った」と伝えている。対局は午前10時にスタート。持ち時間は各5時間で、夜には終局する見込み。
加藤九段といえば対局時の食事は「昼も夜も、うな重」という伝説で知られるが、引退がかかった大一番には何を注文したのだろうか。ハフポスト日本版は日本将棋連盟に問い合わせた。
同連盟の広報担当者によると、加藤九段が注文したのは、将棋会館近くにある鰻店「ふじもと」の「うな重・竹」だという。
「こちらは棋士の皆さんがよく利用されます。加藤九段が注文した『うな重・竹』は3100円になります。そのほか『うな重・松』は4100円、『うな重・梅』は2600円になっています。棋士の先生方の昼食・夕食は、対局中に係りが注文を取りに行き、食事代をお預かりします」
引退を間近に控えても、勝負師としての闘志に衰えは見えない。うな重にこだわる理由について、加藤九段はこう語っている。
若い頃はラーメンが多かったです。鍋焼きうどんも好きなのですが、熱いので、冷めるまで待っていると15分ぐらいかかる。まさか水をかけるわけにはいきませんからね。うなぎは温かいし、腹持ちもするのでこれに落ち着きました。
対局中に迷いたくないので、決めておいた方がいいんです。でも、時には考えることが面白くて、食べるのを忘れることもあります。後でおなかがすいてきて、「食べておけば良かった」と思うのですが。
(朝日新聞 2016年11月21日夕刊・東京本社版より)
「将棋界のレジェンド」は、大好物のうな重で勝利を引き寄せることができるか。その一手に注目が集まる。
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