加藤一二三九段「勝つために努力して、今日まで来た」 引退決定について語る

表舞台から消えてしまうのではと案じる声には「全くの杞憂です」とコメント。
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時事通信社

史上最年長棋士で、現役引退が決まっている加藤一二三九段が1月20日、ファンに向けてのメッセージをTwitterに投稿した。引退報道を受けて、表舞台から消えてしまうのではと案じる声には「全くの杞憂です」とコメントした。

「人生は生涯現役」という加藤九段。今後については、「神様から贈られた才能を存分に発揮し得る環境を与えられている以上、それを最大限に活かすべく生きてゆくことは、ひととして当然の務めでは」とつづった。加藤九段は敬虔なカトリック教徒としても知られ、バチカンからは勲章を贈呈されている。

加藤九段は1月19日、第75期「名人戦」で順位戦C級2組からの降級が確定。定年規定により現役引退が決まっている。

ただ、今後も棋王戦予選、王将戦予選、NHK杯予選、竜王戦昇級者決定戦などの対局が残っている。日本将棋連盟の広報担当者によると、「引退が決まった棋士でも、他の棋戦(の予選・本選)で勝ち残れば現役扱い」。予定される全ての対局が終わった時点で引退となる。

加藤九段は20日、引退決定後初の対局となった「棋聖戦」二次予選トーナメントに勝利。77歳0カ月の最高齢勝利記録を達成した。次は佐藤天彦名人と対戦する。加藤九段自身も「ひふみんは永遠不滅」「これからの人生も全身全霊で闘い抜きます」と、闘志をたぎらせた。

■加藤九段「勝つために努力し、今日まで来た。この気持ちはこれからも変わらない」

加藤九段は20日、テレビ朝日系「報道ステーション」のインタビューに応じ、心境を語った。

引退が決まったことついて、加藤九段は「刀折れ、矢尽きての引退ではなくて、刀も矢も持ったままで、まだ十分これからの対局にも情熱を込めて熱闘する意欲は十分持っている」「『元棋士』ではなく『棋士』なんですね」と述べた。

また、「将棋は芸術」が持論の加藤九段。将棋の魅力については「モーツァルトとかベートーベン、大天才の作品は今も世界中に喜びを与えている」と説明。

自身がこれまで残した棋譜についても、「私の指した名局というものは棋士として、はっきり言って、大変な高いレベルの将棋を指してきた。生きる楽しみ、喜びを与えていると思っています」と語った。

ただ、公式戦の対局ができなくなることについては、「はっきり言って、それは寂しいですよ。今まで情熱を込めて戦ってきましたからね」と心情を吐露する場面もあった。

一方で、77歳を迎えた今もなお、将棋に対する熱量は高い。勝負に対する姿勢について、加藤九段はこう語った。

私はすごく立派な将棋を指し、私も感動する立派な将棋を指してきた。「今日は別に負けてもいいよと」思ったことは一回もないんです。すべて勝つために努力して、今日まで来た。この気持ちには、これからも変わりはないんです

夢は「123歳を迎えるまでは将棋文化の普及発展に最大限の尽力そして貢献をすること」という加藤九段、コンピューターとの対決にも意欲を見せる。

人間として精魂込めて、芸術の領域まで高めた将棋を指してきた人間としては、心血注いだ棋士の能力がコンピュータに劣ると思われるのが、極めて心外なんですよ。私がコンピュータと戦えば、私が先行逃げ切りで勝てるという自負がある

「神武以来の天才」「1分将棋の神様」と謳われる加藤九段。棋士生活63年を迎えた今もなお、勝負師としての闘志に衰えは見えない。

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