03系と13000系のトップナンバー車がそろい踏み。
東京メトロ日比谷線は、営団地下鉄時代の1961年3月28日に南千住―仲御徒町間が開業してから55年。
日比谷線用としては3代目車両にあたる13000系が2016年6月に登場し、8月末日に千住検車区で報道公開が行なわれた。この車両のテーマは、「"世代"と"文化"の交流」である。
■18メートル車から20メートル車へ
13000系は歴代の日比谷線車両と大きく異なる点が2つある。
1つ目は1両2メートル長い20メートル車にしたこと。日比谷線は18メートル車規格で建設されたが、トンネルの大きさは若干の余裕があり、東京メトロは20メートル車の運転が可能と判断した。20メートル車を投入するにあたり、標識やケーブルの移設などが行なわれた。
編成全体の長さは03系が長い。
現行の03系は18メートル車8両編成で運行されており、20メートル車に換算すると7.2両分(144メートル)なので、13000系は7両編成(140メートル)になった。03系に比べると編成全体の長さは4メートル短く、定員は約30人減った。
ラッシュ時の乗降時間短縮の切札として投入された03系5ドア車(東京メトロ提供)。
2つ目は4ドア車であること。現在、相互直通運転先の東武鉄道(以下、東武)も含め、3ドア車と5ドア車が混在しており、20メートル4ドア車に統一することで、将来のホームドア設置における課題を解消するためだ。
東武も新型車両70000系を投入し、現行の車両(20000系、20050系、20070系)を順次置き換える。いずれも車両機器や客室の主要設備は仕様の共通化を図り、同一の車両メーカーに発注することで、乗客、乗務員、裏方とも、わかりやすく使いやすい車両としている。なお、今回の日比谷線用車両は、両社とも近畿車輌に一括発注した。
■歴代車両を受け継ぐ丸みのあるデザイン
日比谷線初代車両の3000系、2代目車両の03系とも、先頭車前面のフロントガラスをパノラミックウィンドウにして、乗務員の視野を広げているほか、前面デザインに丸みを持たせることで、豪華さや親しみやすさを醸し出している。13000系もその流れを受け継ぎ、03系を近未来的な形状にアレンジした顔立ちとなった。
フルカラーLEDは発色数が限られているため、日比谷線の駅ナンバリングは白表示となっている(東京メトロ提供)。
車体側面の行先表示器。
行先表示器はフルカラーLEDで、13000系は「行先」だけではなく、「駅ナンバリング」も表示。近年の"日本ブーム"で訪日外国人が増加していることや、2020年の東京オリンピック開催に向け、外国人の乗客にもわかりやすくした。駅ナンバリングもただ表示するだけではなく、例えば南栗橋行きの「TN-03」は、東武日光線系統ラインカラーのオレンジを表示する。
前面のライトは、歴代車両と同じ前面フロントガラスの下に配し、系譜を引き継ぐ。13000系はライトとライトのあいだにオーナメントを配しており、デザイン上のアクセントとなっている。
13000系ヘッドライトのハイビーム。
ヘッドライト(前部標識灯)は03系のシールドビームからLEDに変わり、乗務員の視認性向上や省エネ(省エネルギー)性の向上を図っている。ロービームは左右各4つ、ハイビームはすべてのライトが灯る。テールライト(後部標識灯)も、03系と同じLEDだ。
■5色の識別帯
以前の記事で述べたとおり、東京メトロの車両はアルミ車体に映えるよう、識別帯はラインカラーとアクセントカラーを組み合わせている。現行の03系はラインカラーのシルバー、アクセントカラーのダークブラウンとアイボリーを用いた。
車体側面の識別帯とピクトグラム。
一方、13000系は、濃いグレーと薄いグレー(いずれもシルバーに見せる色)をラインカラー、ダークグレー、ライトグレー、ダークブルーをアクセントカラーに用いた。特に先頭車の前面はラインカラーを強調、車端部は曲線などが採り入られており、03系に比べ洗練された配色となった。
車椅子とベビーカーのピクトグラムは、車体上部のダークブルー帯に貼付し、ホームドア設置後も見やすく、わかりやすくすると共に、車体デザインとの一体化を図った。
■03系よりさらに省エネ化
VVVFインバータは2・4・6号車に搭載(東京メトロ提供)。
消費電力の削減に貢献するPMSM(東京メトロ提供)。
列車の駆動力を作る制御装置はVVVFインバータ制御で、"省エネ電車の代名詞"として現在も進化を続けている。主電動機(駆動システム)は千代田線用の16000系や銀座線用の1000系などで実績のあるPMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor:永久磁石同期電動機)を採用し、03系VVVFインバータ制御車と比較して、約25%の消費電力量削減を見込んでいる。
SIVは3・5号車に搭載(東京メトロ提供)。
車内の照明や旅客情報案内装置、空調装置へ交流電力を供給する補助電源装置は、16000系4次車や南北線9000系リニューアル車で実績のあるSIV(静止形インバータ)の「並列同期/休止運転方式」で、使用電力が少ないときに2台中1台のSIVを休止させ、消費電力を削減する。
東京メトロの狭軌路線では初採用となった片軸操舵台車。
台車は1000系以来となる片軸操舵台車で、片側の軸に操舵機能を持たせており、カーブを通過する際、車輪も曲がることでレールとの摩擦音を低減する。もう片側の軸に主電動機を搭載し、7両全車が電動車(モーターつきの車両)となったが、台車の電動軸が外側、付随軸(操舵機能つき)が内側にあるので、東京メトロは「実力3.5M3.5T」(電動車〔M車〕と付随車〔T車〕が各3.5両分)と表現している。
パンタグラフは2・6号車に各1台、4号車に2台搭載(東京メトロ提供)。
パンタグラフはシングルアーム式で、パンタグラフ上昇検知装置のほか、降雪時における作業安全性の向上を図るため、強制上昇機能を搭載した。
【インテリア編に続く】