イギリス・ファーンバラに住むゲイナ・ピーリングさんは、5歳の息子ジャックと4歳の娘エイミーとともに、ポーツマスからファーンバラへ向かう電車に乗っていた。
ジャックは自閉症とADHDを持っていて、この日電車に乗っている途中で「メルトダウン」を起こした。
メルトダウンとは、泣いたり、叫んだり、暴れたりするパニック発作だ。困り果てたゲイナさん。そこに「ヒーロー」が現れた。
ゲイナさんはFacebookにこう綴る。
「ダンという男性がやってきて、子供たちと話し始め、そして息子を落ち着かせてくれました」
「おかげで本当に素敵な電車の旅になりました。ダンに本当に感謝します。彼は気付いていないかもしれないけれど、私は本当に助けられました」
ゲイナさんによれば、この日は途中で乗り換えをしなければいけなかったので、いつもより時間がかかって大変だった。ゲイナさんはハフポストUK版に、その時のことをこう振り返る。
「ジャックは電車が好きなのですが、待つのが苦手で、周りで何が起きているのがわからない状況を嫌います」
「駅はとても混んでいて、電車に乗る時にはジャックはとても機嫌が悪くなっていました。怒って口汚い言葉を叫んだり、椅子を蹴ったりして手に負えない状態でした」
周りの多くの人たちが、舌打ちをするなど迷惑な様子だったので、ゲイナさんは、ジャックは自閉症とADHDを持っていると説明してお詫びをしなければいけなかったという。
ADHDの薬を飲ませようとしたが、ジャックは飲みたくないと叫び声をあげた。
「すると、ダンが大きな声でこう言ったんです『僕にこの薬の飲み方を教えてくれない?』。するとジャックはいいよといって薬をのみました。その後ダンは娘に話しかけて、塗り絵を始めました。しばらくするとジャックもダンの隣に座りました」
電車が目的地につくまでの55分間、ジャックはずっとダンと一緒に座っていた。
「電車を降りた後、ジャックがダンにさようならをしたいというので、私たちは振り返って手を振りました。その後私はSpotted London(人探しを助けるFacebookサイト)を使ってダンを探し出し、感謝のメッセージを送りました」
「特別な支援を必要とする子供たちのことを知らない人は、彼らの行動を理解するのが難しい。周りからは、『親が悪い』とか『しつけがなっていない子供だ』と見られます」
ゲイナさんの通りすがりのヒーローは、21歳のダニエル・ボールさんだった。ダニエルさんはイブニング・スタンダード紙に、母親が特別な支援を必要とする子供たちに関わる仕事をしているので、ジャックの行動が理解できたと話している。
「電車の中で、コインゲームの仕方や、電車の絵の描きかたを教えました。でもまあ、子供と遊ぶのはもともと好きですから」
「(ゲイナさんは)僕がすごいことをしてくれたみたいに褒めてくれましたが、僕はただ手助けをしただけです。ヒーローでも何でもないです」
ダニエルさんの母バーバラさんは、特別な支援を必要とする子供の教育コンサルタントをしている。ダンさんの行為がメディアで大きな注目を集めた後、「Come To My Rescue(CTMR・助けが必要なら私のところにきて)」というキャンペーンを始めた。
バーバラさんのFacebookによると、CTMRは特別な支援を必要とする子供たちと親を助ける人たちをサポートするキャンペーンだ。
キャンペーンの一環として、CTMRと書かれたバッジを作ることを計画している。バッジは、特別な支援を必要とする子供たちとその親をサポートするというサイン。このバッジを目印に、親たちは公共交通機関などで、助けを求めやすくなる。
発達障害を抱えた子供を持つ親にとって、電車やバスの中で子供がパニックになった時に助けてくれる人がいるのはとても心強いこと。
ひとりの男性の親切な行為から、親たちを助ける優しい輪ができつつある。
ハフポストUK版の記事を翻訳しました。