アメリカ政府は8月13日、混乱が続くイラクにアメリカ軍の地上部隊を送り込む可能性があることを示した。ベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)が記者会見で述べた。ニューヨーク・タイムズなどが報じた。
現在イラク北部のシンジャル地区の山間部では、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国(IS)」に囲まれたクルド系のヤジディ教徒が、山頂に取り残されている状態だ。イスラム国は3日にシンジャルを制圧すると、キリスト教徒やヤジディ教徒らに対してイスラム教への改宗を強制。従わなければ殺したり、奴隷として連れ去ったりしたため、ヤジディ教徒らは家を捨てて山に逃げ込んだ。
ところが山には食糧も水もなく、日中は50度近い気温になる厳しい環境だ。アメリカは8日から同地区において、イスラム国のトラックや迫撃砲陣地などを空爆したり、ヤジディ教徒に対しても支援物資を投下したりするなどを行ってきた。
これらの活動で11日時点では、山中に避難したとみられる5〜6万人のヤジディ教徒のうち約2万人を救出できた。しかし依然として、多数が山中に残されたままだ。
イスラム国のメンバーは、改宗に応じなかった人を斬首する様子や、殺害した人々の遺体写真をTwitterなどに投稿。子供が銃を構えて笑う写真や、切り落とした頭部を掲げる子供の写真なども投稿しており、これらの残忍な行為が世界中から批判を浴び、クルド人を支援する動きが広がっている。
取り残された人を救出するため、フランスは13日、クルド人治安部隊に対して武器提供を開始すると発表。供給する武器の内容は明らかにしていないが、声明では「イラク国民は大きな災厄に見舞われており、国際社会は支援を強化する必要がある」と強調しているという。
ドイツはイラクに対して武器提供はしないとしていたが、シュタインマイヤー外相は12日、「保護を必要としている人々に人道的支援をするのは当然。それ以上のことをすることができるか、すべきかを考えなければならない」と発言。方針を転換し、軍事的支援をする可能性を示唆した。
オーストラリアのアボット首相も13日、人道支援物資の投下に参加することを表明するとともに、軍事的な関与の可能性についても「排除していない」と述べたほか、イギリスのキャメロン首相も夏休みを切り上げ、イラクへの軍事支援について協議するとしている。
サウジアラビアも国連に対して、テロ撲滅のために約100億円の拠出を決めている。
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