熱中症予防「高温ならば行事の中止や延期、開催時期の見直しを」と救急医

汗で失ったナトリウムを補給するために、電解質入りのスポーツドリンクを推奨
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イメージ写真
Getty Images/iStockphoto

7月17日、愛知県豊田市の小学校で、1年生の男の子が熱中症で死亡した。また、18日には、岐阜県多治見市で気温40度が観測された。酷暑になればなるほど、重度の熱中症になる人も増える。熱中症の被害を減らすにはどうしたらいいか。救急医の志賀隆・国際医療福祉大学准教授がハフポスト日本版のインタビューに答えた。

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志賀隆さん

外の気温が高い場合や運動にて熱が産生された場合、普通は体から汗が出ることで体温が下げるのですが、暑さなどでそのバランスが崩れ、どんどん体の温度が上がってしまい、熱中症になります。

同時に体から水分が抜けると脱水がおきます。重症化すると、肝臓や腎臓、筋肉の機能が下がり、さらに血が固まらなくなる血液凝固障害が起きます。症状も熱中症の重症度によって、めまいやだるさ、頭痛、吐き気・嘔吐、立ちくらみ、あくび、こむら返り、といった症状がありますが、重度になると臓器障害や血液異常、意識を失い、死に至ることもあります。

熱中症が増えるのは、いまのような梅雨明けの時期です。ただ、湿度が高い梅雨の時期や、早ければ春でも起きます。

救急の外来にも、梅雨に入る前、ウォーキング中に症状が出た人や、前日お酒飲んで睡眠不足のまま晴れた日に駅まで歩いている間に気持ちが悪くなった人が受診で来ました。

外で運動や作業をしているときに起きる(労作性)熱中症のほか、お年寄りなど、30度前後の状態で冷房のない部屋にいる人がかかる(非労作性:古典的)熱中症もあります。

またアレルギー症状に服用する「抗ヒスタミン剤」やADHDの治療などで服用する「アンフェタミン」など、特定の薬を飲んでいる人は、熱中症になりやすいと言われています。

また、肥満もリスクといわれています。

飲み物は、手に入るなら電解質が入った飲料を飲んでください。いわゆる「スポーツドリンク」です。ナトリウムは、血液の中の水分をとどめておく働きをするので、脱水からも回復しやすくなります。あと、塩飴をなめておく手立てもあります。

水や茶などでは、体から汗として出ていったナトリウムを補給できません。低ナトリウム血症になり、臓器や神経、筋肉の働きが悪くなります。

現実的に、何人もの子どもを見ている学校の先生が熱中症の症状に気づき、対応することは難しい面もあると思います。また、着帽や水分補給など個人が予防を心がけることはもちろん大事ですが、それでも熱中症になることがあります。であれば、一定の温度に達したら、学校行事の中止や延期とするなどの「基準」を設けることが必要です。

日本生気象学会日本体育協会はそれぞれ、熱中症予防のための「指針」を作っていて、そのなかで、暑さがからだに与えるストレスを示す指標(WBGT)が28度以上なら「すべての生活活動で(熱中症が)おこる」として、「外出時は炎天下を避け,室内では室温の上昇に注意する」と呼びかけています。

そうした基準を、学校生活に取り込んではどうでしょうか。行事が温度で左右されることを懸念し、今回のような死亡事例につながるのであれば、梅雨後や夏休み明けの残暑の時期などは、外や暑い空間での行事を設定せず、涼しい時期に移すなど、学校や行政の取り組みを見直していくことが、多くの子供たちの熱中症予防につながると思います。

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日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2015」