スタジオジブリの宮崎駿監督が、引退を撤回したと、鈴木敏夫プロデューサーが公式に明らかにした。
アメリカ・ロサンゼルスで2月24日にあった第89回アカデミー賞のプレイベントで、鈴木氏が「長編映画を制作中」「今も一生懸命、東京で作っています」と語った。
鈴木氏はトークショーで、長編アニメーション映画部門にノミネートされた『レッドタートル ある島の物語』について語った。マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督がストーリーも作画も自分で主導した制作過程を説明する中で、以下のようなやりとりがあった。
司会者:宮崎さんもストーリーを全部書きますね。
鈴木P:宮崎駿っていう人はね、ちょっと宮崎駿の話をしちゃいますね。彼はシナリオを書かない。いきなりストーリーボード(絵コンテ)から描きはじめる。それでいきなり2時間ぐらいのものを描くんですよ。何でシナリオを書かないかというと、絵として自分の描きやすいものを優先するからなんですよ。僕はそう思ってますね。
司会者:彼が次に何をしようとしているのか、みんな不思議がっています。
鈴木P:(苦笑)宮崎が引退宣言をして、3年半ですかね。僕は記者を前に記者発表をやったんですけど、2時間の引退記者会見。僕は宮崎の横にいて、すごいうれしかったんですよね。「これからは僕も自分の人生を生きよう」と。(観客席から拍手)
やりたいって言い出すのに、「もう一度復帰したい」って言い出すのに1年を要さなかったですね。実はですね、この「レッドタートル」と関係あるんですよ。「レッドタートル」を僕がやっていることを知っていますから。ラッシュ(チェック用データ)を見たり。彼が気にして気にして。もう一つ言うと、ジブリで自分以外の人が作品をつくる、やっぱり嫌だったんでしょうね。
余計なことばっかり言ってますけど、最後、簡単に言います。忘れもしません、去年の7月1日。彼が僕の所に企画書を持ってきました。長編映画です。(拍手)
「20分のストーリーボードを描くから、これが面白いかどうか判断してくれ」と言いました。去年の暮れ、僕はそれを読みました。僕、ものすごく悩みました。内容は、すごく面白かったんです。面白かったけれど、ここで僕が面白いと言えば、僕の老後がなくなってしまうんですよ。心を鬼にして僕は言いました。「面白い」と。本人に向かって言いました。今も一生懸命、東京で作っています。(拍手)
宮崎監督は2013年9月に引退を宣言していた。
しかし、2016年11月13日に放送されたNHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」では、宮崎監督が新しいアニメ作品の構想を鈴木氏に提案し、事実上の現場復帰に向けて動き始めたことが報じられていた。鈴木氏の発言は、これを公式に認めた形だ。
関連記事