ハワイは、強い貿易風や火山の地熱、豊富な太陽光と水力など、ありあまるほどの多くの自然エネルギー源に恵まれている。それにもかかわらず、ハワイ州環境保全局の環境評議会によると、ハワイ州の1人あたり化石燃料消費量は、アメリカで最も多いという。
そうした現状を変えるため、現在ハワイ州議会では「2050年までに消費電力を100%再生可能エネルギーでまかなう」という野心的な目標を盛り込んだ法案が審議されている。この法案が可決されれば、ハワイはアメリカで初めて、すべての電力需要を再生可能エネルギーでまかなう州になるかもしれない。
オアフ島では、12%の家庭の屋根にソーラーパネルが設置されている(アメリカ全体の平均は0.5%)。
ハワイ州エネルギー局でエネルギー管理を担当するマーク・グリック氏によれば、経済的な観点から見ても、この法案は理にかなっているという。ハワイに数多く存在する再生可能エネルギーは、「現在のところ石油に比べて」低コストだとグリック氏は指摘する。
また、再生可能エネルギー100%という目標は、「とても高いゴールだが、同時に実現可能でもある」とグリック氏は述べる。
ハワイ州は2009年に、再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)を引き上げ、再生可能エネルギーの割合を「2015年までに15%にする」という目標を掲げたが、現在、ハワイの再生可能エネルギー利用の割合はすでに約23%。「しかも、2015年はまだ終わっていません」とグリック氏は述べる。
このペースを考えれば、100%という目標も現実的なものといえそうだ。法案では、販売電力量に占める再生可能エネルギーの割合を、2020年までに25%、2030年までに40%、2035年までに70%、2050年までに100%にすることを目標としている。ただし「再生可能エネルギーの導入が、ハワイの経済に悪影響を及ぼす場合は別」という条件付きだとグリック氏は説明する。
ホノルルを拠点とする、環境系スタートアップの支援組織「エネルギー・エクセラレータ」の創設者であり、省エネ促進と再生可能エネルギー普及をめざす「ハワイ・クリーン・エネルギー計画」の議長も務めるドーン・リパート氏は、達成が難しい高い目標を掲げることは「関係者が一致団結して行動するための強力な手段」になると述べる。
「2030年の目標を決めたときには、これを2030年までに達成するのは不可能だと多くの人が考えていました。でも今では、その目標に向かって進んでいこうという、大きな勢いがあります。我々は思っていたよりもずっと目標に近づいているのです」とリパート氏は語る。
ハワイ島サウスポイント近くにある、パキニヌイ・ウィンドファーム。
現在ハワイ州の5つの島では、少なくとも50の再生可能エネルギー計画が進んでいる。キラウエア火山東側のリフトゾーンにある、ハワイ唯一の地熱発電所もそのひとつだ。
この地熱発電所があるおかげで、ハワイ島ではエネルギーの50%近くを再生可能エネルギーでまかなうことができている。この地熱発電所でつくられる電力は、ハワイでは石油系燃料よりも安く、そのほかの再生可能エネルギー電力と比べてもおおむね安価だ。
プナ地熱発電所で制御盤を操作する技師。この制御盤で、発電所の電力源となる蒸気圧を調節する。
一方で、誰もが再生可能エネルギーの目標に賛成しているわけではない。たとえば、ワイキキなどのリゾートエリアにある大規模ホテルは、電気料金の節約のために、天然ガスを燃料とする発電機を使っている。
ハワイのニュースサイト「ホノルル・シビル・ビート」によれば、ハワイ4島で「シェラトン」や「ウェスティン」など11リゾートを展開する「スターウッドホテル&リゾートハワイ」の支配人は法案に反対する意見書のなかで、自家発電は化石燃料から効率的に電力を得られる方法であり、「全体のエネルギーコストを大幅に削減」することで顧客の利益にもなると主張した。
ワイキキのビーチ沿いに立ち並ぶホテル
アメリカでは、ハワイ州のほかにも、再生可能エネルギー100%の目標を設定している自治体がある。サンフランシスコは2020年までに電力のすべてを再生可能エネルギーにするという目標を掲げており。サンディエゴも、2035年を目標に、同様の取り組みを進めている。
「地球の市民として、すべての人にこの取り組みに参加してほしいと願っています」とリパート氏は述べる。「化石燃料とクリーンエネルギーは、世界規模で取り組まなければいけない問題です。みんなが再生可能エネルギーを選ぶことで、地球は私たち全員にとって良い場所になるはずです」
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:梅田智世/ガリレオ]
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