「ヘイトスピーチに公園を利用させない対策を」新宿区・渋谷区に対して学生団体が要望

区の対応は?
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11月19日に行われたデモ行進の様子
ARIC

東京都新宿区、渋谷区の公園や街頭などでヘイトスピーチが行われたとして、学生団体「反レイシズム情報センター(ARIC)」は11月29日、両区に対して今後は利用させないよう、ガイドラインの制定などを要請した。

新宿区の担当課はハフポスト日本版の取材に対して「必要があれば今後検討を進めたい」。渋谷区は「疑わしい場合にはこれまで通り個別判断していく」と話した。

ARICが問題にしているのは、11月19日に行われたデモ行進。

主催者側がYouTubeなどにアップロードした動画には、新宿区内の公園を出発してJR新宿駅前などを行進、渋谷区内の公園で解散した様子が収められている。

デモや前後の集会で、「日本のルールに従えない外国人は出て行け」「朝鮮人を日本海に叩き込め」などと参加者が発言。沿道に集まってデモに抗議する「カウンター」の集団に対して参加者が「北朝鮮の工作員!」とシュプレヒコールをあげたり「朝鮮人は朝鮮半島に帰れ」と叫ぶ様子などが映っている。

また、「北朝鮮学校は殺人学校だ」「日本をなめんなよ朝鮮人」「辛淑玉(在日朝鮮人3世で人材育成コンサルタントの女性)の弟は失血死寸前」と書かれたプラカードが掲げられている様子も確認できる。

新宿・渋谷区の対応は

新宿区はこの日のデモについて、主催者の公園利用を許可していた。

区の担当者によると公園を利用する団体には15項目の条件を課し、違反があれば取り消す可能性もある。項目の中には「デモ参加者や近隣住民の生命・身体・財産が侵害される危険な状況を誘発しないこと」との内容があるが、直接的にヘイトスピーチや差別に言及した項目はないという。

今回は申請段階でこの項目に当てはまるとは判断されなかったという。今回の要望を受けて、必要と判断されれば、今後、許可の方針について検討するとしている。

一方、渋谷区の担当者は、今回のデモに対する利用許可の有無については答えられないとしつつ、ヘイトスピーチについては、その都度判断する方式で、対策をしていきたいとしている。

川崎市は全国で初めて、ガイドラインを作成

ヘイトスピーチをめぐっては、2016年にヘイトスピーチ解消法が定められた。しかし、表現の自由との兼ね合いから、現場で実効性のある対策をどう作るかについては、まだ模索が始まったばかりだ。

法務省は啓発文書で「特定の国の出身の人々について一律に『日本から叩き出せ』 や『殺せ』というものが,ヘイトスピーチに当たると言われています」と例示している。この例示に照らせば、今回のデモでの発言はヘイトスピーチに当たる可能性が高いと考えられる。

川崎市は2016年6月に行われたデモでの公園使用について、市長らの判断で5月末に不許可を決めた

さらに2017年11月には全国で初めてとなるガイドラインを定め、申請者の活動歴やネットでの情報発信などから総合的に判断し、ヘイトスピーチの恐れがある場合には公的施設の使用を認めないことを取り決めた。

「記録など、自治体はできる対策を」

ARICの代表、梁英聖さんは「自治体や国がヘイトスピーチに加担してはいけない。ヘイトスピーチが行われる恐れがあるかどうか事前の判断が難しいという事情はわかるが、デモ後に実際の発言を記録してデータベース化し、今後の許可の参考にするなど、有効な対策を考えて欲しい」と話している。

ARICでは、ヘイトスピーチ行為を記録してデータベース化し、自治体などが許可にあたって参照できるようにするなどの作業を進めている。ボランティアなども募集している。

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