東京都渋谷区の新区長は、全国初の「同性パートナーシップ条例」をどう進めるのか? 就任から1カ月となった5月27日、長谷部健区長は記者会見を行い、自身が発案者でもある「同性パートナーシップ条例」について説明。同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める証明書については、10月の発行を目指したいと意気込みを語った。
■「1年後、2年後に再検討しながら条例を仕上げたい」
この条例は桑原敏武前区長が推進、3月に渋谷区議会で可決され、4月1日から施行されている。その後、4月26日の区長選挙で、桑原前区長から後継者として指名を受けたのが、当時区議で、この条例の発案者でもあった長谷部区長。区長選では、条例に賛同するLGBT当事者やアライ(支援者)、若い世代の支持も受けながら当選、就任後の条例推進に注目が集まっている。
長谷部区長は、これまで最も問い合わせが多かったのが同性パートナーシップ条例だったことについて触れ、「僕は、パートナーシップ証明書についての発案者でもあるので、当然、積極的に推進していきます」と明言。「なんとか10月中には証明を発行したい」とした。
■同性パートナーシップ条例の課題は?
条例については、課題も少なくない。条例が可決された際、議会の付帯決議で、少なくとも2回、議会に報告するよう求められていた。長谷部区長は「付帯決議を踏まえた上で、区議会に相談しながら進めたい。それから、相談窓口を設ける予定だが、同性カップルだけにならないよう、一人で悩んでいる人や子供にも対応したい」とクリアすべき問題があることを指摘。「証明の発行は10月を目指すが、多少伸びるかもしれません。ただ、期待して待っている人たちがいるので、遅くとも12月までには実現したい」と話した。
また、条例に反した場合の罰則規定については、「積極的にするつもりはない。ヘイトスピーチや『ゲイはお断り』とうたっているところなど、LGBTの人が差別的と感じる表現についてはまず指導をして、どうしてもだめな場合は仕方ないというニュアンスで考えています」とした。今後については、「日本で初めての条例なので、なるべく完璧を目指してスタートしたいが、1年後、2年後に再チェックして、マイナーチェンジする必要があるかどうか検討しながら、仕上げていきたい」と語った。
■宮下公園の再開発は? ホームレス支援プロジェクト立ち上げへ
会見では、3月議会で継続審議になっていた渋谷駅前の宮下公園の整備事業についても説明があった。事業では、公民連携で宮下公園と駐車場の整備を行うもので、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの前年に開催されるラグビーW杯までの完成を目指しているという。新施設は、公園部分、駐車場部分、商業施設や宿泊施設の民間部分で構成される。
長谷部区長は、「地域住民への説明が不十分だったことで継続審議となったと理解している。今後は9月の定例議会までにしっかり地域の人たちと話し合っていきたい」と語った。
また、記者から宮下公園の路上生活者対策について質問を受け、「一部のネットで言われているような、ホームレスの追い出し派ではないし、そいういう発言をしたこともないです。ただ、対策については、福祉部を中心にして、関係する市民団体がありますので、そういうところと相談しながら、社会復帰できるような支援プロジェクトを立ち上げる準備をしています。来年の4月か5月には実を結べるよう、とにかく解決する方法を探っていきたい」と答えた。
記者会見で配布された宮下公園整備事業の資料
■「区政にはマーケティングが必要」
また、現在、進められている渋谷駅の再開発など町づくりについても言及。「パリ、ニューヨーク、ロンドン、渋谷区と、国際都市として発展させていくためには、渋谷駅の開発は大事。東急さんが中心で進めていますが、駅周辺にも人が暮らせるような町づくりを推進していきたい」とした。その上で、これまでアプローチできなかった渋谷に集中するIT系企業と連携を取り、「働きやすい町づくりや地域貢献の方法など、一緒になって考えていきたいと思っています」と語った。
「同性パートナーシップ条例」や2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど、渋谷区には全国から注目を集めている話題が多いが、他の自治体同様、地域の課題も少なくない。長谷部区長は今期の区政について、「桑原区長の手厚い福祉や教育を継承したい」と発言。同時に9月の議会以降で、自身のアイデアも出していきたいとした。そのためには、「マーケティングが必要だと思います。区に届く意見は、反対意見が多いが、そうじゃない意見の人も多い。投票率の低さにも表れていますが、そういう無関心な人たちが何を考えているのか、知りたいと思います」と話した。
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