同性パートナーシップ条例で「全てが解決とは思ってない」 長谷部健・渋谷区長が若者の質問に答えた #YoungVoice

東京都・渋谷区の長谷部健(はせべ・けん)区長(44)に大学生たちが、若者の政治参加や、LGBTを含む性的マイノリティについてどう取り組んでいるかについて尋ねた。
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7月の参院選では、18歳以上が初めて投票できるようになる。新しい世代が参加することで「政治が変わる」ことに期待が高まっているが、そもそも若者たちの政治・選挙への関心はどこに向いているのだろうか。ハフポスト日本版は、18歳から23歳の若者と一緒に国会議員や自治体の首長らを訪ね、率直に様々な質問をぶつけた。

東京都渋谷区の長谷部健(はせべ・けん)区長(44)だ。博報堂の広告マン出身という異色の経歴。渋谷区議時代にはLGBTなどの性的マイノリティの問題に取り組み、2015年3月に全国で初めて成立した同性パートナーシップ条例の旗振り役となった。大学生の田嶋嶺子さん(20)と皆川勇太さん(19)が若者の政治参加のあり方や、渋谷区のLGBTへの取り組みなどを尋ねた。

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長谷部区長に質問する大学生ら。中央が田嶋嶺子さん(20)、右が皆川勇太さん(19)

■「今の若者の方が政治への関心が高い」

——選挙権が18歳に引き下がったことには賛成、反対どちらでしょう?

僕は大賛成ですね。どんどん投票に行った方がいい。18歳といったらもう大人。そこから経験を積んだり、知識が増えたりしてくるけど、大まかなところは変わらない。今は、投票率は若い人のほうが低いんです。年齢が上がるごとに投票率が上がっていくんだけど、将来のことを考えたら若い人たちがもっと発言できた方がいいと思っています。

——ちなみに長谷部さんが18歳の頃は、どんな生活をしていましたか?

当時、僕は浪人生でした。二浪してたんで、雰囲気は暗かったですね。今思うと青臭いんだけど、一生懸命、大人ぶって友人と話をしてたかな。湾岸戦争があったので、戦争についても語っていました。

もともと洋楽が好きだったけど、中学生の後半からは70年代のロックを特に聴いてましたね。ビートルズや、ローリング・ストーンズを聴いたり。自分の生まれたころの60年代から70年代のカルチャー非常に興味があって、服装もデッドストックのジーンズにTシャツ着たり、背伸びしていましたね。

——当時の若者と今の若者で、政治への関心が薄れていると感じることはありますか?

そういう実感はないですね。今日のインタビューのように、政治に関心を持ってる若い人もいるし、安保法に反対する学生団体の「SEALDs」などもある。僕が若いころは、今よりもさらに政治不信が激しくて『政治家はかっこ悪い』という空気がありました。だから、広告代理店を辞めてから、区議になるときも相当迷ったんです。だから今の方が、むしろ政治への関心が強い。それに、若者の方がネットへのリテラシーがあって、デマ情報に惑わされない。そういう経験を積んでいる人たちが大人になってきているから、そんなに心配していませんね。

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■LGBT政策で重要なのは「当事者を知ること」

——日本で初めて同性パートナーシップ条例を成立させましたが、現在までの手応えはどうですか?

やって当然よかったと思っているし、反発の声はすごい減りました。当初反対していた人の理由を見てみると「理解できない」、「気持ち悪い」などと言っている人が多かったんです。「戸籍法に合わない」「憲法と矛盾している」などの、いろいろな理屈があったけど、根本はそれなんです。だから僕は「当事者に会ってみてください、知らないのに反対してるでしょう」と訴えました。それでみんなが慣れてもらうと、知ってもらうというのが、すごく大切だと思っています。

——(田嶋)実際に身近にLGBTの友人がいるんですが、実際に会って話すことで分かる部分も多いように思います。

実は僕自身も無知でした。20歳の頃にアメリカ行った時に、男性に何回もナンパされて衝撃をうけたんです。同性愛者のエイズ感染が社会問題になっていた時期だったので正直なところ「怖い」という恐怖感が先に来ましたね。だけど、社会人になって仲間たちに会っていく中で、どんどん当たり前のこと、普通のことになっていきました。

最初のうちは頭では「差別はしちゃいけない」とか「偏見を持っちゃいけない」って分っていても抵抗感はありましたが、LGBTの人と、どんどん会って行く中で解消できました。自分の経験も踏まえて「まずは慣れることだよ」と、多くの人に伝えたいと思います。

——(皆川)大学でジェンダー論を学んでいるですが、LGBTの研究者の中には、渋谷区の同性パートナーシップ条例に対して批判的な人もいますが、どう思いますか?

そうした批判があるのは承知しています。僕としても、これで全てが解決とは全く思っていません。課題がやっと表に出たわけで、渋谷区のパートナーシップ証明書も、マイナーチェンジを繰り返していくと思います。必要であれば変えなきゃいけないし、同性婚を国が認めるかどうかでも変わってくる。

渋谷区の場合は特に法的拘束力を付けたかったので、普通の婚姻届とは違って、どうしても費用がかかる形になった。そこに批判があるのは分っているけど、喜んでる当事者がたくさんいるのも事実。そこは両方が向き合っていかなきゃいけない。スタートしたばかりなんで、批判も賛同もあるのは当然かなと思っています。

——(皆川)少しずつ前進する感じですか。

うん。一歩なのか十歩なのかわかんないけど、でも着実に一歩ずつ前進していく。なるべく大きく前進していきたいと思っています。

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渋谷区議会で同性カップルを「結婚相当」と認めるパートナーシップ条例が可決されたことを受けて、同区役所前で横断幕を手に笑顔の東小雪さん(右)ら(2015年3月31日)

長谷部健・渋谷区長(43)

1972年3月東京都渋谷区に生まれる。専修大学商学部卒業。2002年に広告代理店の博報堂を退社。2003年1月、ゴミ問題に関するNPO法人「green bird」を設立。。2003年7年に渋谷区議に当選し、3期連続当選。2015年4月に渋谷区長に当選した

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