幸福の科学大学は「認めない」 文科省の審議会が"霊言"を問題視

文科省の大学設置・学校法人審議会は10月29日、「幸福の科学大学」の開設を認めない答申を下村博文文科相に提出した。「大学教育を提供できるものとは認められない」というのが、その理由だった。
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時事通信社

文科省の大学設置・学校法人審議会は10月29日、「幸福の科学大学」の開設を認めない答申を下村博文文科相に提出した。「大学教育を提供できるものとは認められない」というのが、その理由だった。

幸福の科学大学は、宗教法人「幸福の科学」の大川隆法総裁が創立した学校法人「幸福の科学学園」が申請。2015年4月に千葉県長生村で開校し、人間幸福学部など3学部を置く予定だった。今回の答申を受けて文科省は、10月中に大学の設置を認めない決定を出す。

■必修科目に使われる「霊言」が焦点に

今回の答申では、必修科目「創立者の精神を学ぶ」などが、大川総裁の著作物がベースとなっていることが指摘された。そこでは「あの世」に存在する故人の霊の言葉を大川総裁が伝える「霊言」が科学的根拠となっているとしている。

これらの著作物では、大川隆法氏の基本的な思想を証明するためにいわゆる「霊言(霊言集)」を科学的根拠として取り扱う旨の記述がなされている。

例えば、「幸福の科学大学創立者の精神を学ぶI(概論)-宗教的精神に基づく学問とは何か-」には、「(前略)死体になった場合には、食物を与えても、水を与えても動きません。点滴を打っても動きません。これを、『脳の機能が停止した』とだけ考えるのが、現代医学の流れではあるわけですが、そうではないことを証明するために、私は、ここ五年ほどで、二百七十冊以上もの『霊言集』を刊行しています。」、

「『人間として脳がなかったら、何も考えられない』と、医学的には思われているのです。しかし、実際は、『焼かれて何もなくなっても、死んだあとの人には個性というものが残っていて、考える力がある』ということを証明するのが、一連の『霊言集』の機能であるわけです。」、

「これは、ある意味での『科学的証明』をしていると思っています。」と書かれている。

(文科省の大学設置・学校法人審議会「幸福の科学大学を『不可』とする理由」)

こうした記述に関して、今回の答申では「科学的合理性が立証できていない『霊言(霊言集)』を本大学における教育の根底に据えるということは、学校教育法第83条第1項の「学術の中心」としての大学の目的を達成できるものとは認められない」と結論づけた

一方、大川総裁の霊言について幸福の科学では、「大川隆法総裁には、呼び出せない霊は存在しません。イエス・キリスト、孔子、天照大神などの高級霊をはじめ、坂本龍馬や吉田松陰などの歴史上の偉人、生きている人の守護霊、さらには悪魔と呼ばれる存在まで呼び出すことができます」と主張している

■関連出版社「異端審問にかけられた」

今回の決定について、幸福の科学学園は「詳細を確認した上で、今後の対応を検討いたします」と公式サイトに掲載した

一方で、宗教法人の関連会社「幸福の科学出版」が発行する月刊誌「ザ・リバティ」のオンライン版は、今回の答申について強く批判。以下のように書いている。

同大学の設置認可を「不可」とした審議会の判断は、まさに「宗教」の側が異端審問にかけられた結果である。その上でなお、今回の審議会の指摘で、同大学の授業全体が霊言をベースに行われるかのような印象を与えていることも問題だ。

「幸福の科学大学」開設不可 大学設置審が文科相に答申 | ザ・リバティweb 2014/10/29)

■審査中に下村文科相の守護霊インタビューを出版

また審議会は、大学認可の審査中に大川総裁が「文部科学大臣・下村博文守護霊インタビュー」などの著作を出版したことも問題にした。こうした著作が委員に送付されるなど「認可の強要を意図すると思われるような不適切な行為が行われた」と報告している。

「幸福の科学大学(仮称)」については、審査途中において、創立者の大川隆法氏を著者とする大学新設に関連する書籍が数多く出版され、申請者も属する幸福の科学グループから本審議会の委員に送付されたり、今回の大学設置認可に関係すると思われる人物の守護霊本が複数出版されたりするなど、通常の審査プロセスを無視して、認可の強要を意図すると思われるような不適切な行為が行われたことは、極めて遺憾である。

(文科省の大学設置・学校法人審議会 「幸福の科学大学(仮称)の審査過程における申請者の不適切な行為について(報告)」)

この報告を受けて、文科省では最長5年間、「幸福の科学学園」による大学設置を認めない方針だという。

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