第20回手塚治虫文化賞が4月26日に発表され、年間のベスト作品に贈られるマンガ大賞は、一ノ関圭さんの『鼻紙写楽』(小学館)と、あずまきよひこさんの『よつばと!』(KADOKAWA)が選ばれた。毎日新聞などが報じた。
一ノ関圭『鼻紙写楽』(小学館)より
手塚治虫文化賞は、日本のマンガ文化の発展・向上に大きな役割を果たした手塚治虫氏の業績を記念し、手塚氏の志を継いでマンガ文化の健全な発展に寄与することを目的として1997年に設立。年間を通じて最も優れた作品に贈られる「マンガ大賞」のほか、斬新な表現、画期的なテーマなど清新な才能の作者に贈られる「新生賞」など、4つの賞で構成される。
マンガ大賞に選ばれた『鼻紙写楽』作者の一ノ関さんは、1950年生まれで東京芸術大学油絵科卒。1975年に投稿した「らんぷの下」が、ビッグコミック賞を受賞した。
小学館の作家紹介には「多くの漫画家から、また漫画好きの読者から絶賛されるも、あまりに寡作なために幻の漫画家といわれる」とと解説されている。『鼻紙写楽』を含めて一ノ関さんの単行本は『ランプの下』(1980年)と『茶箱広重』(1983年)など数少ない。2015年に発売された『鼻紙写楽』は『茶箱広重』以来32年ぶりの新刊となった。
『鼻紙写楽』は、一ノ関さんのデビュー40年となる単行本。江戸時代後期、老中の田沼意次が幕政を主導していた時代の、歌舞伎と浮世絵をテーマにした作品。上方の実在の絵師「如圭」を後の写楽と位置づけ、歌舞伎界の人間模様や町人の生活、殺人事件など多彩なエピソードを、躍動感のある絵で描いた。
作品は、2003年~2009年にビッグコミック増刊で不定期連載されたが、掲載誌が休刊。中断を余儀なくされた。朝日新聞デジタルは「卓抜した画力、綿密な考証、キレのいいせりふ、香気豊かな江戸情緒を愛するファンも、この寡作ぶりには泣かされる」と評価している。
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