豊洲市場移転をめぐる都議会調査特別委員会(百条委員会)での証人喚問で、複数の都議から「偽証の可能性がある」と指摘された浜渦武生(はまうず・たけお)元都副知事が4月10日午後2時から都庁で記者会見を開き、自身の証言が「偽証には当たらない」と反論した。
■「浜渦氏が偽証」と複数の都議 これまでの経緯は
浜渦氏は石原都政下で副知事を務め、豊洲市場の移転について、用地所有者だった東京ガスとの交渉役を担当。都は2001年7月、東京ガスと豊洲移転の基本合意を締結したが、直後に都の部長と東京ガスは水面下で「2者間合意」を交わしていた。
この合意は、東京ガス側の土壌汚染対策の範囲を限定する内容で、土壌汚染対策費がふくらんだ一因と指摘されている。
この「2者間合意」など、土壌汚染対策費などに絡む交渉で浜渦氏が指示をしたかどうかが、百条委員会で争点の一つとなった。
3月19日に開かれた百条委員会の証人喚問では、基本合意(2001年7月)以降、「豊洲開発について一切相談にあずかっていない」と証言し、「2者間合意」についても「全く知らない」と否定。
ところが、4日の証人喚問で元知事本局長の前川燿男(まえかわ・あきお)練馬区長が「実体上の決定権者は浜渦氏。終始一貫して責任を持っていた」と証言。2003年に当時の都幹部が、浜渦氏に指示を求めるために出したとされる文書が示されるなど、浜渦氏との証言にズレが見られた。そのため同委員会では、「(浜渦氏の証言は)偽証の可能性が高い」との指摘が出た。
■浜渦氏「嘘をついていると言うなら根拠を」
前川氏との証言のズレについて、浜渦氏は10日の会見で「東京ガスとの交渉役を外れた後は関与していない。職務上の報告があれば受けたかもしれないが、指示はしていない」「東京ガスとの2者間合意は本当に知らない」と、偽証ではないと反論。百条委員会での主張を繰り返した。
浜渦氏は、「石原(慎太郎)知事に基本合意までできたと報告し、任を解かれた。交渉役を外れた後は関与していない。職務上の報告があれば受けたかもしれないが、ああしろこうしろと指示していない」「交渉の任は石原知事から外されていた。石原さんは怒りん坊で、その任以外のことは、私はやりません」と発言。基本合意後は東京ガスとの交渉に関わっていないとする、従来の主張を強調した。
その一方で、石原元都知事については「優しい人。ご病気をなさって、それ以前の記憶はまだら」「心配をしてくださっていて、感謝はしている」と、気遣う場面も。「先週の前半に(石原氏と)電話で話した」と明かした。
当時の都幹部が浜渦氏に指示を求めるために出したとされる文書については、「記憶にない。文書があったからやったのだろうというのは、ストーリーありきの話だ。本物かどうか、精査してもらいたい」と強い言葉で反論した。
報道陣からは「基本合意後の交渉に関わっていなかったと裏付ける物証はあるのか。指示しなかったことを証明する責任があるのでは」といった厳しい質問も飛んだが、浜渦氏は「今朝、ごはんを食べていないという証明をどうやってする?それと同じように聞こえる。嘘をついていると言うんだったら、根拠を持ってやったほうが良い。やるのは議会でしょ?私が『違う』というのは、もっと詰まった時の話。むしろ、あなたがそういうことをやってくれない?」と、かわした。
浜渦氏は「(再喚問があれば)お話しに行く」とも述べ、百条委員会から再喚問を求められた場合は応じる意向も示した。
百条委員会は6日に開いた非公式会合で、浜渦氏の証言に偽証がないかどうかを検証することを決定。偽証と認定するかどうか、26日にも方針を決める見通し。偽証を認定した場合、刑事告発する可能性がある。