不知火の大横綱、第69代横綱白鵬(両国国技館)
■千秋楽翌日の記者会見は重要なのか?
2014年大相撲夏場所は、第69代横綱白鵬が29回目の優勝を決め、ついに大台(史上2人しか記録していない優勝30回)に王手をかけた。私は両国国技館で開催された横綱審議委員会稽古総見に行き、白鵬と十両逸ノ城(いちのじょう)の抜きんでた強さを見て、この場所の優勝を確信した。
さて、白鵬は千秋楽翌日の優勝記者会見を固辞し、マスコミは様々な憶測をたてた。私の記憶が確かならば、この会見は若貴ブームの頃から行なわれており、公益財団法人日本相撲協会の公式行事ではない。
私はこの一報を知ったとき、まったく気にならなかった。千秋楽の表彰式で行なわれる優勝力士インタビュー、『サンデースポーツ』の優勝力士生出演で充分なのだ。
マスコミは優勝力士に対し、"ダメ押し"の如く記者会見を求める姿勢が理解できない。千秋楽の翌日は、どの力士にも"2週間休みなし"という激闘を称え、取材を自粛するべきだ。
■25年前の出来事を思い出す
のちに白鵬は自身のブログで、記者会見固辞の理由を告白した。私はその記事を見た瞬間、第58代横綱千代の富士を思い出した。1989年2月に生まれた三女が生後3か月で夭折(ようせつ)したからだ。当時、千代の富士は左肩脱きゅうのため夏場所を休場し、上記の不幸も重なり、再起を危ぶむ声もあった。
悲しみの中、名古屋場所を出場し、持ち前の強い精神力で勝ち続けた。千秋楽は同部屋(九重部屋)の弟弟子、第61代横綱北勝海との優勝決定戦を制し、28回目の優勝を決めた。