生まれつき白メッシュの私が受けた、黒髪信仰の圧力

生まれたままの髪色でいることが、そんなに悪いことですか?
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ヒオカさんの幼少期の写真
ヒオカ

私は生まれつき、白メッシュが入っている。頭髪の一部の色素がないのだ。アルビノでもなければ、体の他の部位に色素が抜けるなどの症状もない。いわゆる若白髪のように、まばらに白髪が混じるわけでもない。

本当に生まれたその日から、白いメッシュが入っているのだ。親によると、医者には一生そこだけ白髪が生え続けると言われそうだ。

小学生の時、上級生にからかわれることもあった。白髪の病気だ!などと大声で言われたり、替え歌を作られ露骨に嫌がらせを受けることもあった。

親は私のことを気の毒に思い、中学からは白髪染めをさせるようになった。

私は当然のように、この生まれつきの白いメッシュは、病気だと思われ、哀れまれる対象であって、隠すべきものと思っていた。そして周りから浮くことを恐れて躊躇なく染め続けた。

母が地肌への影響を考えてか、ヘアマニュキュアを使用させたため、2週間ほどで色が抜け、さらに奇抜な見た目になった。その過程の色は、よければ茶色、そして悪ければ何故かピンクやオレンジになる。その後灰色の汚い見た目になって白に戻る。

なんせもともと色素が無いのだから、すぐに色が落ちてムラができ、汚い状態になってしまう。

生まれつきの白メッシュを隠し続ける私に転機が訪れたのは、高校に入学して間もない頃だった。

たった2週間しか持たないヘアマニュキュアとの格闘に疲れ始めていたころ、まだ白メッシュのまま過ごしていた小学生時代に、他校の生徒から言われた言葉を思い出した。

「あの子のメッシュかっこいいよね」

自分の学校内では病気と言われ哀れまれていたのに、水泳大会で私を見かけた他校の生徒はこう言い放ったのだった。

それを思い出した私は、ん、もしかしてこれって、かっこいいのか?

というか、何故生まれたままを隠す必要があるのか?

という素朴な疑問が湧き上がるようになる。

仲の良かった友人に、生まれつき頭髪が栗色の子や、赤毛の子がいた。先生から呼び出されたり、黒染めしないと受験に響くなどと脅されたりしていたが、地毛のまま過ごしていた。

最近のブラック校則をめぐる議論では、なぜ地毛を茶色く染めることがダメで、地毛を黒く染めることはいいのか、という至極真っ当な指摘がなされている。謎すぎる黒髪への絶対信仰。

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私は必死に髪を染めることを辞め、白メッシュのまま過ごすようになった。

髪は黒くなければならない、そんな呪縛から解き放たれてみれば、意外と楽な生活が待っていた。

初対面の人に変わった子と思われることはよくあったし、染めてると誤解されることもあった。

しかしありのままでいることはとても居心地が良い。そしてカッコいい!と言ってくれる周囲の声も増え始めたのだった。

そして訪れた第二次黒髪信仰との戦い

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黒く染め続けなければならないという強迫観念から解き放たれて、ありのままの髪色で過ごせる平穏な日々もつかの間、大学に進学するとまた周囲の偏見と戦うことになる。

アルバイトを始めた頃だった。接客業をしていると、必ずと言っていいほど、女性のマネージャーに呼び出される。

そして、地毛だと説明しても、険しい顔で、分け目を変えて隠してこい、次回からは黒染めを、と強めにいなされる。

また別のアルバイトでも、おなじことが起こった。

不特定多数のお客様を相手にする接客業で、お客様一人一人にこれは地毛だと説明するわけにもいかない。怖がられたり、信用できないと思われたりするリスクを初めからなくす方が良い、というのがその女性マネージャーの主張だった。

真っ当なようにも聞こえた。そしてここで逆らってもいいことはない。直感的にそう感じて従った。

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しかしそれから数年が経ち、ブラック校則について取り上げられ、議論されるたびに、小学生から経験した地毛への偏見や、黒染めしろという圧力への違和感が膨れ上がる。

目を細め、小さな声で注意される、あの息苦しさ。悪いことをしていないのに、まるでルール違反をしているかのような扱い。あなたはあなたのままいてはいけない、そう言われているようだった。母親世代の方からの、分けたら見えにくくなるわよ、といった善意からのアドバイスも、私を傷つけた。

ブラック校則を巡る議論の中で、地毛証明書の正当性、生まれつきを否定されることへの違和感が指摘されるようになったことは大きな前進だ。

よく考えてみれば、本当に正しいのか、何のためにあるのかわからないルールなんていくらでもある。

ルールを作ることが目的ではない。ましてや個人の尊厳がないがしろにされるルールなどあっていいはずがない。

形式化したルールが、一つでも無くなりますように。

いまの私が当時に戻ったら、

地毛でいることが、そんなに悪いことですか?
と、シンプルに返せる気がしている。

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ヒオカさん

(2019/08/16 noteの記事を転載しました)

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コンプレックス

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乗り越えようとする人。
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